2000年6月6日

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ハッサン2世杯
日本×ジャマイカ

(モロッコ・カサブランカ、モハメド5世スタジアム)

日本 ジャマイカ
4 前半 0 前半 0 0
後半 4 後半 0
46分:城 彰二
58分:城 彰二
65分:柳沢 敦
78分:三浦知良
 


先発メンバー
交代出場
日本
46分:三浦淳宏(伊東輝悦)
46分:奥 大介(上野良治)
63分:柳沢 敦(西澤明訓)
71分:久保竜彦(城 彰二)
75分:三浦知良(名波 浩)
 フランス戦から中一日、しかも往復200キロもの移動をこなして臨んだジャマイカ戦は前半から動きが鈍く、ジャマイカ側の中盤での激しいプレッシャーに戸惑う形となった。中盤で初めて起用された上野良治(横浜)と名波浩(ヴェネツィア)のボランチがなかなか機能せず、さらにフランス戦では前線の動きを引っ張った西澤明訓(C大阪)も体調に冴えがなく、凡ミスを繰り返した。

 ハーフタイム、トルシエ監督がロッカーで激怒。中田英寿(ASローマ)、名波らが中心となって選手個々の役割分担を確認しあったという。

 後半、上野に替えて運動量の多い奥大介(磐田)、フランス戦では2点目のアシストをした三浦淳宏(横浜)を今度は伊東輝悦(清水)に代え右サイドで投入。奥が中盤でスペースをついたドリブル突破、相手のボールへの厳しいチェックなど、役割をきっちりとこなしたことで中田英への生きたボールが入るようになり、前線への連携にスピードが生まれる。

 後半開始1分後、奥が相手DFに倒されたところでフリーキックを得て、これを中田英が右サイドの三浦淳に流す。三浦淳が右足でフランス戦同様のクロスボールをファーサイドの城彰二(ヴァジャドリッド)へ。城は胸のワントラップでこれを落ち着いてさばいて右足でゴールを奪った。城の代表ゴールは98年3月、ダイナスティカップ(横浜)中国戦以来2年3か月ぶり。

 58分には中盤の左サイドで西澤が倒され、これを名波が左足からのフリーキックで城の頭に合わせてゴール。城の代表7点目のゴールで試合を決めた。

 その後63分、西澤に替えて柳沢敦(鹿島)を投入すると、その2分後、左から中田英が蹴ったコーナーキックがゴール前の混戦に弾かれ、ゴールキーパーがはたいたボールを三浦淳宏が思い切りのよいロングシュートを放った。これが柳沢のモモに当たってコースが変わり、GKの逆をつく恰好となって3点目となる。柳沢はこれが代表「初ゴール」となった。

 その後、久保竜彦(広島)、三浦知良(京都)を入れ3トップにすると、33分には左サイドの中村のボールを背中から受ける難しい恰好でさばいた中田英が、左サイドからDF2人を抜くピンポイントの折り返しを見せ、そこに三浦知が飛び込んで4−0とし、ジャマイカを突き放して完勝。ハッサン2世杯3位となった。

 日本は98年6月、W杯フランス大会のグループリーグ3試合目で1−2で敗れたジャマイカを下した。日本は川口、名波、中田、城の4人、ジャマイカもそのときのメンバー4人がピッチに立った。

 日本は7日、日本に向けて出発し(8日到着)、その後、仙台でのキリン杯(スロバキア戦)、横浜でのボリビア戦のキャンプに入る。

 なお、この試合に引き続いて行われた、決勝戦ではフランスがモロッコを5−1と圧倒し、優勝を決めた。(※フランスの先発メンバーはラマ、カンデラ、ルブーフ、デサイー、カランブー、 ヴィエラ、ミク、ジョルカエフ、デュガリー、アネルカ、アンリ。得点はアンリ、ジョルカエフ(PK)、デュガリー、アネルカ、ヴィルトール)

    ◆試合後のコメント

川口能活(横浜)「ジャマイカに勝てたということが大きかった。4タコというのは本当に気分がいい。リベンジ、スッキリしました。僕自身はビルドアップを心がけ、つなぐ意識を持ってプレーしていた。ウィットモアらがいなかった分、ジャマイカは2年前よりもちょっと力が落ちていたと思う。逆に自分たちの方は、ボールを支配するのが上手くなっていたと思う。内容、結果とも満足できる試合だった」

2得点をあげた「前半は相手が守ってきていたのでああいう形になったのは仕方がなかった。1点目は三浦(淳宏)が来てくれたので自分のポジションがあいた。2点目はフリーだったね。いい試合をして勝ちたかった。トルシエには、ニアで勝負しろ、と言われ続けていた。西澤が入ったことによってボールのキープ力がすごく高くなったので、自分はいつ飛び出しをすればいいかということに集中できるようになった。代表においての僕の仕事が変わりましたよ。いろいろ騒がれているトルシエ監督問題にも少し貢献できたかな」

フル代表での初ゴールとなった柳沢「ええ、あれは当たりました。(オフサイドではなかったか、の問いに)そうですかねえ? 今日はゴールよりも、動き回ってチームにチャンスを作れたことがよかったと思う。何本かシュートを打ったけれど、中に人がいたのであれを決めるのは難しいでしょう」

西澤「自分では意識しないつもりだったけれど、やはり体が重たかった。それと、意外に暑かったんです。まぁ、反省するところが多いですね。コンディショニングの面ではよくなかったです」

カズ(代表56点目)「自分が入ったのは0−3だったし、森島が呼ばれていたので出られるかな? と思っていた。とにかく流れが良かったのでチャンスに絡もうと思っていた。リズムがあって自分が入っても違和感が全然なかった。キリンには(欧州組の)3人も来ないしチーム力を落とさないようにしないとね。まあFWの争いも熾烈だし、今日もゴンは出てないわけだしね。キリンでいい結果を出さないことにはね

前の試合では左、この日は右サイドからアシストした三浦淳宏「シュートはヤナギに当たりましたよ。前半見ていたら、ジャマイカは弱っちいし、モタモタしていた。出たら思い切ってやってやろうと思っていた。トルシエからもドリブルで崩せと言われていた。(この2試合を通じて2つの大きなアシストをしたが、の問いに)いや、まだまだです。自分としては左の方が全然やりやすいんだけれど、右もやった方がいいとトルシエには言われているので、いいプレーをしたいと考えています。ハーフタイムにトルシエはめちゃめちゃキレちゃいました。あんなに怒っているのは久しぶりに見た」

後半投入されてチームの動きを全体的に変えた「ハーフタイムには、名波さんとのバランスをよく見てプレーをしろ、と言われた。ボランチだったので、早め早めに相手のボールを潰して、前へダイレクトにいいパスを出すことに集中していた。まぁ、前半は向こうのプレッシャーがあったのであんなもんじゃないでしょうか。名波さんとの久々のボランチ、楽しんでやれました」

2年前のジャマイカ戦で日本のW杯初得点を挙げた中山雅史(磐田)「僕はずっとアップしてましたよ、お声がかかりませんでしたが(笑)。そうねぇ、あれからもう2年だねぇ。まぁでも、カズさんが入れてくれたのでとてもうれしかった。ジャマイカ、今日は弱っちかったですね。またがんばります」

名波「前半は中盤のプレッシャーが厳しかった。中1日のコンディショニングというのはとても難しい。そういうのもあって、前半はみんな苦戦した。後半が始まる前に、城は点を取るんだし、西澤は前でボールをはたいて展開するんだ、とそれぞれの役割をみんなで確認して後半に臨んだ。(代表にとっては久々の勝利、との声に)でも、いつかはこうなると自分ではずっと思っていた。トルシエの戦術うんぬんではなくて、選手1人1人が着実に向上していることは誰が見ても明らかだったし、いつかはこうやって勝てる日が来ると思っていた。トルシエも言っているけれども、どんな相手でもいい試合をしなければいけないということでしょう」

松田直樹(横浜)「若いやつらで、W杯でジャマイカに負けたなんて思っているのはいないんじゃないですか。みんなそんなの過去の話だと思って今日はやったはずです。ハーフタイム、トルシエ監督は怒ったというよりは、選手1人1人にアドバイスをした。キャプテンマークをつけたことは、まあ、思い出というくらいで、キャプテンらしい仕事はなにもしていない」

中村俊輔(横浜)「凡ミスが多かった。2試合に出たから、自分としては大きな収穫があったけど。パスを回せる人が多いし、スペースがあればいいサッカーができる。もうちょっと寒かったら、ジャマイカもいろいろやってきたと思うけどね。最初はエンジンがかからなかった。監督はハーフタイムに、ジャマイカがこんな状況で負けたら戦術うんぬんじゃなくて選手のせいだ、というようなことを話していた。まあ、自分は淡々と聞いていたけれども。フィジカルの面でもう少しやれる面があるかなあ、とは思う」

トルシエ監督「決勝戦を見たいので、会見は10分程度にしてください。ここに来たのは、信頼と自信を得ることが目的だった。日本の素晴らしいイメージを世界に示すことができたと思う。ヨーロッパは今、欧州選手権を控えて、この大会にも非常に注目していたので、いいアピールができたんじゃないか。オートマティズムが大変よく機能していたと思う。2002年のW杯までまだ道は長いが、今回の経験を土台にさらにレベルアップできるだろう。
 前半、上野をボランチに入れたのだが、本人の性格もあるけれども、思った以上に攻撃的な参加ができなかった。後半、奥と三浦淳を投入し、もっと高い位置でプレッシャーをかけていこうと思った。カズを投入したのは、最近練習で非常にいい結果を出しているし、素晴らしい性格の持ち主だ。プレゼントの意味で投入した。この大会を通じて、私の理想とする戦術、システムが機能していくことがわかった。2つ以上のポジションをこなすのが理想だったし、右も左も、フォワードも中盤も、そうやっていろいろなポジションをこなせなければ、近代サッカーではやっていけない」


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