2000年6月4日

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ハッサン2世杯
日本×フランス

(モロッコ・カサブランカ、モハメド5世スタジアム)
天候:晴れ、気温:25度、湿度:68%

日本 フランス
2 前半 1 前半 0 2
後半 1 後半 2
34分:森島寛晃
70分:西澤明訓
61分:ジダン
75分:ジョルカエフ

PK戦
日本 中田英寿 三浦淳宏 稲本潤一 名波 浩 2
× ×
フランス 4
ジョルカエフ アネルカ アンリ ルブーフ

先発メンバー
交代出場
日本
67分:三浦淳宏(中村俊輔)
89分:柳沢 敦(西澤明訓)
フランス
46分:ヴィエラ(デシャン)
46分:ジョルカエフ(ピレス)
46分:デュガリー(ヴィルトール)
67分:ルブーフ(デサイー)
73分:アネルカ(トレゼゲ)
89分:アンリ(ジダン)
 日本は、98年W杯優勝メンバー10人を先発に揃えるベストメンバーを組んできたフランスに対し、前半から初の「コンビ出場」となった2トップ、西澤明訓(C大阪)、森島寛晃(C大阪)を積極的に使う戦術で攻撃のリズムをつかんだ。
 23分、西澤の右サイドからのボールに中田英寿(ASローマ)が中央に素早く走り込んでヘディング。ゴールはならなかったが、この初シュートから流れが一転する。34分には、稲本潤一(G大阪)からのスルーパスを中央で受けた森島が、GKバルテズに阻まれながらシュートし、GKが跳ね返したボールを頭で押し込んで先制ゴールを奪った。この直後にも西澤が強烈なボレーシュートを放つなど、日本の攻撃の時間帯が長く続いた。

 後半、来週からの欧州選手権を前に6人の交代枠を目一杯使うフランスが、動きの鈍かったデシャン(チェルシー)らを変え、故障上がりのジョルカエフ(カイザースラウテルン)ら3人を投入したことで、日本は翻弄される。61分にはプティ(アーセナル)からゴール右へ走り込んだジダン(ユベントス)に縦パスが通り、DFと重なって追いかけてしまったGK楢崎の頭上をトリッキーなシュートで抜かれ1−1。完全な個人技で同点とされた。
 しかし、1週間前、優勝を目前にしてフロンターレに敗れた悔しさをこの試合にぶつけたというC大阪の2人がここで奮起。70分にはトルシエ監督が後半の半ばに投入した三浦淳宏(横浜)の左サイドからのクロスボールに西澤が強烈なボレーシュートを決め2−1とし再びフランスをリードした。
 終盤、体力を消耗したのか動きの止まる選手が出始めたころ、フランスは交代で入ったばかりのアネルカが左サイドを突破してジョルカエフへ。75分に同点とされてしまった。

 試合は結局このまま引き分け、規定によってPK戦となり、中田、三浦淳、稲本、名波浩(ヴェネツィア)と蹴った日本は稲本がポスト、名波がバーにそれぞれボールをはじかれ失敗。4人が決めたフランスに最後の最後に突き放された。
 しかし、A代表が試合の流れの中で得点を奪ったのは、格下相手となるアジア選手権予選を除けばイラン戦(昨年9月、親善試合)以来で、ようやく攻守がかみ合う兆しが見えてきた。
 この2試合とキリン杯の4試合でトルシエ監督の去就が最終的に決定する。ベストメンバーを揃えた世界チャンピオンを、故障上がりのジョルカエフ、またアネルカを投入させるなどいわば「本気」にさせた試合は、「監督が」主張する五輪、アジア選手権までの指揮権を確定的にするものとなった。
 なお、この試合に引き続き行われた2試合目ではモロッコが1−0で勝ち、日本は6日17時30分(日本時間7日午前2時30分)から行われる3位決定戦ではW杯の再戦となるジャマイカと対戦することになった。

    ◆試合後のコメント

森島寛晃「自分なりに思うことはあった。ただ、後半の最後の方は足が全然動かなかった。疲れていました。でも、久々に思い切ったプレーはできたと思う。自分なりに満足はできました」


豪快にボレーシュートを決め、ガッツポーズの西澤。左はプティ。
西澤明訓
「(ポストプレーや自分の好きなプレーができたのではないか? との問いに対し)まあ、ボチボチでした」(※西澤の言葉で、最高によかったの意か(笑)。)

中田英寿「ちょっと休み過ぎちゃったね(笑)。体が動かなかった。試合では、もっともっと自信を持ってプレーすればいいと思う。ボールだって今日はちゃんともてたし、相手のディフェンスを見たらわかると思うけれど、体を引っ張って入れるだけで、(荒っぽい)ディフェンスをしていた。ああいうところで、逆サイドにボールをもっと大きく振ればフリーのチャンスをたくさん作れたと思う」

三浦知良(京都)「相手を本気にさせたことが大きな収穫だった」

中村俊輔(横浜)「体がデカい……。フィジカルが違う。前半、後半と、シュートのチャンスがあったのにそれが決められなかったことが反省点です。本当はもっと中でプレーをしたかったが、相手が4トップ気味だったので、あそこに張っているよりほかなかった。守りから攻めへの切り替えがなかなかできない点があったから、相手を追っかけていると言うよりは、自分たちの3バックを追っかけているという感じになってしまい、ディフェンスとの距離がどんどんどんどん開いてしまった。西澤さんがボールが届く範囲が広くてタメができたことがよかったと思うし、それによってチームの攻撃にリズムがうまれた。自分としてはもっと1対1をやっていきたかった。フランスのワンツー、あれは普通のワンツーだった。日本のワンツーはやるぞやるぞという感じのワンツーでしたね」

伊東輝悦(清水)「森島さんが前に出てきて動いてくれたことで自分のところでプレーがしやすくなった。前半当初はボールのコントロールがなかなかできなくて苦労していた」

三浦淳宏「西澤がとても調子がよかったので、どんどんあわせていこうと思ってボールを入れていった。センタリング、あれはピッタリでしたね」

稲本潤一「世界チャンピオンとの引き分け。自信を持っていいんじゃないかな。なかなかオフサイドを取れなくて、点を取られてしまったけれども、崩されてしまったわけではない。自信を持ってやればいいと思う。PKですね……。あれはちょっと引っかけてしまった。練習します」

大岩 剛(名古屋)「相手のフォワードよりも中盤からの上がりが非常に厳しかった。最後の方で、相手が本気になってきたのがよくわかりました。全体的にはコンパクトにしようということをとにかく心がけていた。ラインについては、そうは意識していなかった」

楢崎正剛
(名古屋)「ボールを見てから動く癖があるので、コースには飛んでいるんだけれど、フランスのシュートはどれもえぐいコースに来ていた。まあ攻められるシーンもあったけれども、ディフェンスラインで止まっていて、自分の所に来る前にはきちんとおさえられていた。1点取って、チームに自信がでてきたのがよくわかったし、ボールがよく回り、バランスが取れていたと思う。逆に、試合の中で相手に焦りが感じられるのがよくわかった。ただ、反省点としてはフラット3の守備で、どうしても中盤の戻りが遅れてしまう。あの辺はもう少しうまく連携していかないといけないでしょうね。ゴールキーパーの立場として言えば、もっと抵抗したかった」

大仁邦彌・技術委員長「素晴らしい。いい試合だった」

トルシエ監督(抜粋)「私は私の仕事に集中した、それだけです。西澤、森島はセレッソでコンビネーションがいいからといって使ったわけではない。私のチームでも融合できると考えたからだ。とにかく今日は西澤が世界トップレベルのプレーをしたということです。日本とヨーロッパサッカーとには、大きな差などありはしない。コンプレックスを持つことはないのだということを、日本のみなさんにメッセージとして伝えたい。失点は2点とも、集中力の問題だった。
 日本のテレビ局が試合終了直後、私に『残念ながら負けましたが?』と聞いてきた。私は負けてはいない、引き分けなんだ。日本のテレビが結果の分析をいかにできていないかの証拠だ。私は自分の契約問題については、ポジティブに考えているつもりだ。そして、私のことについて、日本に向けてレポートを書かなくてはならない人間がいることは知っているが、その人(釜本強化推進本部長)がどこにいるのかを私は知らない(※釜本氏はこの試合には訪れていない)。釜本という人間が、どこにいるのか、私には関係ない。
(選手の交代が遅かったのではないかとの問いに)チームの調和が本当によかった。だから答えはノーだ。疲れているからといって、替えればいいというものではない。逆に早めに投入した三浦は素晴らしいプレーをして、シュートを決めるプレーに結びつけた。あれがポジティブな交代というものだ」
(※釜本強化推進本部長は5日午後10時(日本時間6日午前7時)にカサブランカ入りするため、すでに関西空港から出発している)

エマニュエル・プティ「組織のチームだった。どの選手が素晴らしいというよりも、組織力が大変素晴らしいチームだと思う」

マルセル・デサイー(チェルシー)「日本サッカーが非常によくなっていることは、私も知っていたので、この結果に驚きはない」

ディディエ・デシャン「評判通りの素晴らしい、ナイスなチームだった」

ロジェ・ルメール監督「この10年で日本は大きな進歩を遂げた。早さと動き、個人的にも組織的にも抜群だ。バルテズの活躍がなければ3点は取られていた。我々はクロアチア戦以後、毎日2回の練習をしているが、強固な組織は作りつつある」

トルシエJAPAN Aマッチでのこれまでの成績
日付 対戦相手 スコア 会場 大会名
1998.10.28 エジプト 1-0 長居 親善試合
1999.03.31 ブラジル 0-2 国立 親善試合
1999.06.03 ベルギー 0-0 国立 キリンカップ
1999.06.06 ペルー 0-0 横浜国際 キリンカップ
1999.06.29 ペルー 2-3 アスンシオン 南米選手権
1999.07.02 パラグアイ 0-4 アスンシオン 南米選手権
1999.07.05 ボリビア 1-1 カバジェロ 南米選手権
1999.09.08 イラン 1-1 横浜国際 親善試合
2000.02.05 メキシコ 0-1 香港 カールスバーグ杯
2000.02.08 香港選抜※ 0-0(PK 6-5) 香港 カールスバーグ杯
2000.02.13 シンガポール 3-0 マカオ アジア杯予選
2000.02.16 ブルネイ 9-0 マカオ アジア杯予選
2000.02.20 マカオ 3-0 マカオ アジア杯予選
2000.03.15 中国 0-0 神戸 親善試合
2000.04.26 韓国 0-1 ソウル 親善試合
※香港選抜戦はAマッチに準じる試合として掲載した。


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