2000年2月8日


カールスバーグ杯3位決定戦
日本代表×香港選抜
(香港スタジアム)

日本代表 香港選抜
0 前半 0 前半 0 0
後半 0 後半 0
 

 

PK戦
  4
日本 服部 稲本 中村 明神 名波 平瀬 6
×
香港 × × 5

先発メンバー
交代出場
46分:奥大介(澤登正朗)、平野孝(大岩剛)
59分:平瀬智行(三浦知良)
66分:明神智和(望月重良)
70分:中村俊輔(中山雅史)
 メキシコ戦に敗れて3位決定戦となる香港戦に回った日本は、スターティングメンバーに、'98年3月以来となるカズ(三浦知良、京都)、中山雅史(磐田)の2トップと、澤登正朗(清水)らのベテランを起用し前線でのボールキープ力を高め、さらに、名波浩(ベネチア)を中盤の定位置に戻すなど全体のバランスを維持することで、A代表での課題となったフラット3の機能性を改善しようとした。
 前半は日本、香港ともにシュートの決定力を欠き無得点のまま終了。後半、日本は怪我をした先発のDF大岩剛(名古屋)の位置に服部年宏(磐田)を下げ、服部の位置には交替で平野孝(名古屋)を投入。さらに、澤登に替えて奥大介(磐田)を入れるなどしたが、それでも突破はできず、カズに替えて平瀬智行(鹿島)を投入しシステム的にも数回チェンジするも、やはり得点は奪うことができずそのまま無得点で決着はPKに。

 服部からスタートしたPK戦は、中村俊輔(横浜)が外し一度は形勢が不利になったが、香港が決めれば試合終了となる5人目のキッカーのシュートを、この日、代表初のキャプテンを務めた楢崎正剛(名古屋)が右手で止め、これでまたも振り出しに。平瀬、奥と決めたところで香港が外し、PK6−5で日本は3位となった。
 トルシエ監督就任後としては、A代表は'98年10月のブラジル戦以来の勝利となり、また通算でも4分けを挟んで4敗をここでストップ。しかし、今回は相手が香港リーグ選抜のため国際Aマッチではなく、Cマッチの認定をされている。

トルシエ監督
(会見から抜粋)「得点ができないことについて、もしJリーグで日本人選手が25点を取っているというのなら、代表で得点できなくてもそれ(得点できない、と指摘されること)は分かるが、Jリーグでも日本選手は得点できていないのだ。JOMOカップでも平均年齢が39歳(※誇張)のワールド選抜が日本よりも得点を重ねている。これは代表だけではなく、以前からの日本の問題でもある。(もっとオートマチックな攻撃で得点は取れないかと聞かれて)年間25試合もやればオートマッチックにはできるかもしれない。今回は、中田、城がいないのだから、彼らが攻撃のバランスに及ぼす影響は非常に大きいわけで、小野や中村も、25試合くらいこなせば、そのレベルには追いつくだろう。
 日本のメディアに言いたい。私たち選手、協会が一丸となってまとまっているというのに、プレス(マスコミ)だけがネガティブである。もっとポジティブに捉えて欲しいし、2002年に向かって、メディアのあり方が落とし穴になる。今日の試合には6人も若い選手がいた。彼らを守る責任がメディアにもあるということを忘れないで欲しい」

最後の最後に仕事をした、と笑う楢崎「キャプテンを言い渡されたのは、競技場に来る前のミーティングで。高校ではやっていましたけどね。(PK戦では)望月GKコーチが(香港のPKについて)いろいろと情報をくれたが、(自分の勘ではなく)それを参考にしていたら、逆へ、逆へ、と行ってしまった。自分はあまり情報とか入れてやるタイプじゃないので、思い切って情報に頼らずに行ったら、止めることができた。最後の最後に仕事をしましたよ。(香港が外した)最後のキック? あれは触ってない。(報道陣に、ちょっとでも触ったことにしようよ、と冗談を言われても)いや、触ってません」

この日、先発起用された中澤「3バックは修正できたと思う。中盤のがんばりもあったと思うし、自分もずっと声を出し続けていて、声がこんなに枯れてしまいました。コミニケーションが非常によくなっていると思う。けれども今日は(相手を考えれば)練習試合ですよ。勝ってよかっただけですね。PKはオレにまわすな、と祈ってました」

'98年以来の代表先発復帰のカズ「楽しかった。0−0で終わった結果はとても残念だけど、PKでも何でも試合に勝つことが大事。2試合通じて若い選手たちと試合ができ、レフリーも普段とは全然違ったが、でもそれも面白い部分だった。監督の言うことをできた部分もあれば、できなかった部分もある。監督は60%の戦術で、あとは自分たちの持ち味を出すべきだ、と言っていて自分もそう思っているし。今日はそういう中でも、90分の中で全員が守備の意識を高く保って、FWはキープできたし、3バックの押し上げもできている。ただ、ペナルティエリア30メートルからが課題。なんとかチームとしてゴールを奪いたい。自分も、今日は手ごたえを得ることができた。うれしい」

絶好のシュートチャンス2本を外してしまった平瀬「前から積極的にしようと思っていたんですが、とにかくもっとコンディションを上げないといけないですね。明神からのボールは目の前に来ていることも見えませんでした。スペースを作ったり、クサビを打ったり、そういうプレーをしたつもりです。途中からの1トップは、やはり非常に難しいものでしたね」

2トップをコントロールした澤登「もっともっと前でプレーしようとしたが、守備と重なってしまうのが難しいところだった。全体に引き気味になってしまう。望月を有効に使ってやれなかった面があり、それが残念。クロスなどはもっと早めに上げてもいいでしょうね。チームは少しずつ良くなっていると思う」

メキシコ戦に続いて先発、守備の中心として声をあげていた松田「メキシコ戦は、とにかく体がきつかった。シーズン明けでいきなりの国際試合、しかも(相手が)メキシコで、きつくて後半は集中力を欠いていた。昨日のミーティングではトルシエ監督にぼろくそ言われました。もう自分だけ、ボロボロに言われて……。でもビデオを見れば、言われていることに納得したし、反省もした。みなさんに書かれていますけれど、なんといっても“DFの穴”を埋めなきゃね。あ、これは嫌味ですよ(笑い)。(※この大会前に、トルシエ監督が、森岡、宮本がDFにいない穴を埋めるのは難しい、などと発言していたため)」

途中交替で絶好のクロスをあげた中村「相手が大きいのでボール際は強いと思ってました。今日、自分ができたのは、1個のドリブルと1個のシュートと、1個のサイドチェンジだけでした」

大仁・技術委員長「勝ってよかった。DFは改善されたと思うけれど、得点が取れない。後半のほうがいいプレーになったのかは(相手のことがあるので)プレッシャーが違うということもあるし、そういう風に見えることもあるでしょう。攻撃の形もいくつかできているにはいるんですが……、とにかく点が取れない」

■短信
 前半終了間際に相手との接触でDFの大岩剛(名古屋)が、左ひざ上を打撲し後半交替。また西澤名訓(C大阪)も怪我をしたため、13日からのアジア選手権予選〔マカオ〕へのメンバー入れ替えの可能性がある。
 また、監督が交替したベネチアの名波浩は、9日午後にローマに出発し、合宿中のチームに合流する。


「バラツキが問題だ」

Masahide Tomikoshi/TOMIKOSHI PHOTOGRAPHY
 9日の朝にはイタリアに戻る名波は試合後、「あのバカが退場(平野、後半35分)なんてしなければ、もっとリズムよく行ったのに……」と苦笑いしながら、清水商業高校の後輩でもある平野の退場を悔やんだ。
 初戦では、目の下にできたクマがはっきりと分かるほど睡眠不足や疲労を重ねていたはずだ。慣れないポジションでのフル出場をし、この日は攻撃的なMFの位置で、最終ラインではヘディングでクリア、さらに激しいスライディングを受け、引き上げる際には左足に深い傷跡も見えた。

「1試合目は時差でボケボケ。2試合目は削られまくり……」

 名波は、そう言って笑いながらバスに乗り込んだ。
 ローマに0−5で敗れたスパレッティ監督が8日解任され、新監督が就任。今大会前からチーム事情を考えればあえて合流するだけの意味があったのか、中田以上に、ベネチアに残っている時間が重要になるのかもしれなかったはずが、あえてここに合流した理由を、名波は「オレは日本代表を強くしたいからここに来た」と言う。

「けれども、試合に出たいから、という人もいるし、日本代表に残りたい、という人もいる。そんな意識の差があるのが問題だ」

 名波が指摘した「意識のバラつき」と同様、カズは「フィジカルのバラつき」を指摘する。
「五輪代表とぼくらのような経験を積んだ選手、それと中堅や、名波のように向こうからわざわざ合流してくれた選手もいる。これだけ状況が違う選手が集まると問題になるのは、フィジカルコンディションの違いだ。そういう中でも合わそう、合わそうとする意識で余計にうまくいかなくなることもある」

 別の場所で試合後に聞いた2人のコメントが、代表の現時点の問題を非常に的確に指摘している。
 カズが言うように、昨年12月の天皇杯を最後に試合をしていない選手の中には、90分の体力が戻っていない選手もいる。肉体的な差を、精神的なものだけで埋めようとするには、今の時期はまだ無理があった。
 今の時期的な問題と、チーム全体のミックスと、これまで積み重ねてきた戦術の理解度、浸透度のバラツキと、3つの「層」をいわばどのように混合していくか、これはトルシエ監督が混合しているシェーカー最大の苦難になる。
 名波は「それでも全体的な意識レベルは、南米選手権の時と比べればよくなってはいる」という。
 名波はPK勝ちが決まると、自らのレガースを静かに抜き取り、楢崎の頭だけをポンとたたいて引き上げた。

 トルシエ監督は試合後、「この勝利は10年分の勝利に匹敵するものだ」と国際CマッチのPK戦勝ちをも手放しで喜び、メディアを批判した。もうひとつのバラつきがあるとすれば、ここにもあるのかもしれない。
 代表は10日マカオに入り、13日のアジア選手権予選初戦(対シンガポール)に備える。


    ◆日本代表の今後の予定
    2/13 アジアカップ選手権予選 対シンガポール戦(マカオスタジアム)
    2/16 アジアカップ選手権予選 対ブルネイ戦(マカオスタジアム)
    2/20 アジアカップ選手権予選 対マカオ戦(マカオスタジアム)
    3/14 国際Aマッチ    対中国戦(ホームゲーム)
    3/29 五輪代表 対ニュージーランド戦(ホームゲーム)
    4/26 対韓国戦(ソウル)


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