6月2日(ニヨン・スイス)


 日本代表・岡田武史監督(41)は、2日午前24時に締め切られるW杯22人枠の発表を行い、25人から落とす3人のメンバーを、カズ、北澤、市川にすること明らかにした。
 これまで監督は、25人で戦うためチームに残って欲しいとして来たが、カズ、北澤については2日のうちに帰国させ、市川については肩書き上、チームオフィシャルとして帯同させる。9日までの変更は可能になるが、もしケガ人が出た場合でも、市川を補充することになった。

岡田監督の話 市川については飛躍的に伸びることを期待したが、残念ながら壁に当たった。北澤は、2列目からの飛び出しに働いてもらったが、3バックのシステムにした後、彼のポジションが見つからなかった。カズは城を柱に考えたが、アルゼンチン、クロアチア、ジャマイカと使うチャンスはない。市川はオフィシャルとして帯同させるが、カズ、北澤については、帰国させるようにした。

井原正巳の話 人数の制限があるのは仕方ない。それも分かってここに来ている。全員で戦うという気持ちは今も変わらない。3人の分も選ばれた選手は戦わねばならない。(北澤、カズが)帰国してチームでゲームに出場したいというのはプロとして当然のことです。

2人のティーンエージャーが見せた代表の意気と、
ベテラン2人のミラノ行き。

 ただ1人同行することになった市川大祐(清水)は練習後、「監督には部屋に呼ばれて一言惜しかったな、と言われました」と、報道陣を笑わせた。しかし、アンダー16でキャプテンを務めチームを率いてきただけに、
「チームのことを考えたら落ち込んではいられません。ショックよりも悔しいですが、(御殿場からの合宿は)なかなかできない貴重な体験だと思ってベストを尽くしたい」と、淡々と、しかし堂々と話していた。
 また18歳で滑り込んだ小野伸二(浦和)も、「(落選した人に)同情している場合ではないでしょう。その人たちの分もがんばるなんておこがましい。ああそれより自分のことです。1点取らなきゃ」と、こちらも22人に入ったことから、これまで以上にポジティブな姿勢を見せた。
 小野、市川はともにジュニアユースから日本代表を背負って来た逸材でもある。彼らの目は常に世界に向けられ、世界で戦ってきている。その意識レベルの高さが、この日、改めて明確になったように見える。
 プロフェッショナル、という言葉の意味と意義を、彼らティーンエージャーがすでに体現していることが、3人を落選させるという非情な作業の中で見つけた大きな収穫だったように思う。誰より岡田監督がそう思っているのではないか。

 中山がうつむきながら練習にやって来た以外、中田も城もいつも通りふるまい、井原も「もうその話しはやめませんか」と、ウエットな質問を繰り返す報道陣に釘を指す場面も。カズ、北澤がどんなショックを受け、搭乗地のミラノに車で向かったのか。もしかすると監督の前で泣いたのかもしれない、それも当然だろう。ここになって「ここでカズたちを外すのは信じがたい。なぜ22人でこなかったか」という声も出始めているが、25人を消去する方法は日本だけのものではなく、11か国も行っている。特別なものではないだろう。
 ともに生活を送って来た仲間が急に消える。まさに、加茂周監督が更迭された昨年10月同様の状況にはなった。しかし、選手はあの時とは比べ物にならないほど、冷静に、しかも、スポーツマンとして「同情はしない」という本物の思いやりを持ったように思う。そしてその1人1人の意識が代表をどこかたくましく見せた。カズのいない指定席、バスの最後尾に、中田と城が無邪気に座った。
 泣いても、わめいても、怒ってもそれは当然だった。それでもいいから、2人には何かを言って欲しかった。酷だろうか。
 2人の落選を聞いた川崎のニカノール監督は「OK、2人が帰国してくれれば私はうれしい」とまずはジョークを飛ばし、「カズ、北澤とも少しも恥じることなんてない。わたしはかれらの仕事に誇りを持っているし、帰国し次第、ナビスコカップに出すつもりだ」と早くも、スタメン起用を「通達」していた。同監督は、22人枠を仕方がないとし、代表監督の岡田監督の決断にも「岡田監督は岡田監督のやり方をすればいい」と言うにとどまった。これで、川崎の代表選手は1人もいなくなった。

 注目は背番号。カズの11を次に背負うのは誰か、という点である。登録は1から順番にしていかねばならず、現在18の城は「まだまだです。自分には」と遠慮?し、中山もすでに9番なことから、現在12番のロペス、14番の岡野らが新しく番号を背負う可能性が出て来た。
 きょう3日のユーゴスラビアとの練習試合は、ローザンヌで午後2時半(日本時間21時半)から行われ、2日の練習でひざに軽い痛みを覚えた井原は欠場する見込み。代わりに斎藤が先発出場する。この試合にはクロアチア、ジャマイカ、アルゼンチンそれぞれの関係者が「視察」に来ることになっており、井原のケガはむしろ良かったのかもしれない。

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