11月10日

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サッカー

J1 2ndステージ第13節
東京ヴェルディ1969×ガンバ大阪
(東京スタジアム)
天候:晴れ、気温:14.5度、湿度:60%
観衆:10,606人、19時04分キックオフ

東京V G大阪
3 前半 0 前半 0 2
後半 3 後半 2
49分:マルキーニョス
71分:三浦淳宏
78分:マルキーニョス
ニーノ ブーレ:58分
吉原宏太:86分

試合データ
東京V   G大阪
15 シュート 10
18 GK 12
3 CK 3
9 直接FK 14
1 間接FK 8
0 PK 0
 J2降格の崖っぷちに立たされている東京Vは、試合前、横浜Fマリノスがすでに磐田に負けている(横浜の勝ち点は26)ため、勝てば勝ち点27で上がれるという状況で試合に臨んだ。この試合で、ホームスタジアムデビューとなったエジムンド(3試合目)、マルキーニョスの2トップが前線でボールをキープし、攻撃の突破口を開く。前半は無得点のまま、後半開始4分、マルキーニョスが右足でコントロールしたミドルシュートが、ポスト、バー、その両方に当たって入り先制をする。すぐに追いつかれたものの、この後、交代で入った三浦淳宏が、相手のクリアボールに合わせて右サイドから左足で強烈なシュートを放つ。これがDFに当たってコースが変わり、2点目となる。さらに7分後の33分には、左サイドを突破した桜井が小林へつないでゴール前に走り込んで来たマルキーニョスへ。これが決まって3-1と試合を決めた。
 前節の神戸戦でも、残り10分を切ってからの守備が維持できず、この試合でも残り4分でG大阪の吉原にゴールを奪われて1点差とされる。常にドタバタした格好で、詰めが甘い試合運びの反省は残るが、これで年間総合勝ち点を27とし、福岡、横浜FMを抜いて15位から13位とした。
 残り2試合の相手は、鹿島、FC東京で、依然厳しい状況にあるが、順位を上げ「降格ゾーン」を抜けたことでチームには活気がみなぎった。

2得点のマルキーニョス「非常にきれいなゴールだったと思う。しかし重要なのは、勝つことでこれ以外の使命はないと思っている。残り2試合、とにかく鹿島戦は重要で、引き分けではなくて勝たねばならない。サポーターと残留を祝い合いたい」

エジムンド「3試合目になる、チームには勝利で向かえてもらうことができ、団結が強くなったと思う。ホーム初の試合だったし、不安もあった。しかし、お客さんは自分を受け入れてくれたし、いいプレーで答えることができた。J1残留をともに喜びたい」

2点目のミドルシュートを決めた三浦「次の鹿島にはなんとしても勝ちたいと思う。試合前には、マリノスが負けたことを知って全員試合に臨んだ分、気合は入ったと思う。だって、そのために、みんなロッカーでiモード見まくっていたからね(笑)。よくなっているとすればシュートまで打って行っていること、シュートを打たなくては点は入らないから。それとDFが体を張っている。足の状態もあって、途中からの出場になるが、ベンチで見ていて気が付いたことは監督とも相談してみた。鹿島に勝ちたい」


「違う空気、違うプレー」

 人は先入観で判断してはならないという。イメージも、人を見るときにはあてにはならないだろう。
 しかし、この人の場合、イメージではなかった。事実があった。かつて、人身事故をおこしたこともある。サルにビールを飲ませる悪戯で動物愛護団体から猛烈な抗議を受けたこともあるし、ブラジルのカーニバルがあるから、とリーグ戦中にあっさりチームを離脱してそれっきりということもあった。
「トラブルメーカー」とは、彼のためにある言葉とさえ言われるほど、FWならば称賛となる「イカレた」ストライカーのはずのエジムンドが、3試合目、初のホーム戦を終えた。プレーでは間違いなく、存在感をもたらしている。
 G大阪のDFは、もちろんほかのチームも彼を放っておけるほど度胸はない。これまでセットプレーではFWにつくマークが薄かったが、今ではエジムンドに何枚かをかけなくてはいけない。これだけでも攻撃は変ってくるし、ミスは若干多いものの、それでも前線でのキープ力にはやはり群を抜いテクニックとセンスがある。凝り固まった筋肉をほぐすための効果が、エジムンドにはある。

 ヴェルディ番の記者に教えてもらったところでは、この3試合、試合前の捕食として恒例だったミートソースのスパゲッティ(炭水化物の補給が目的のはず)から「ミート」が抜けたのは、エジムンドが「プロならチキン、脂のない部分を食べるべきだ」とリクエストを出したからだというから、イメージだけを膨らませてきたこちらにとっては、大変なギャップがある。
 声は小さく囁くようで、答えもすべて優等生。この日の試合を見ていると、エジムンドは降格の緊張感や焦り、ドタバタしたゲーム展開とは違う空気の中でプレーをしているように感じた。
 前半、4本のシュートを打ったが、そのいずれの場合にも、エジムンドは大画面を見上げて、自分のプレーのスローをじっと見る。じっと見て、何かをつぶやいて、シュートの角度を確認するように足で空を切る。
 前半終了間際、山田のオレンジ色のキャプテンマークがピッチに落ちた。前半終了のホイッスルが鳴ったとき、もっとも遠いところにいたエジムンドが、それを一人だけ気にして拾いに行った。山田は一端引き上げたが、ないことに気が付いてピッチに戻り、エジムンドは芝を払ってそれを山田に手渡した。

「必死にやってるんだよ、これまでにないくらい」
 2点目を、痛みのある左足で決めた三浦も試合後、穏やかな様子で笑った。左足の痛みは飲み薬を継続して服用するほどで、右サイドにいながら左足で打ったのは、「左足で打たないと軸足では痛すぎるから」というから、笑っている場合ではないはずだ。
 それでも三浦には、がむしゃらさよりも落ち着いた空気が漂う。
 降格だとか、残留だとか、必死とか、がむしゃら、後がないとか、絶体絶命といったそういう悲壮感ではない、むしろ正反対の「何か」を彼らはこの崖ップチにあって体現している。必死です、と言っても必死でないプレーをする選手は多いし、気持ちでやる、と言いながら、まったく気持ちの入らないプレーをする選手もいる。
 彼ら2人が放っていた違う空気が何なのか、表現ができないことはもどかしいが、状況に対して決してネガティブな材料ではないことは間違いない。
 日本代表を4人(GK川口は移籍)擁する横浜Fマリノスはこの日15位に転落した。どんな空気が漂っているのだろう、とふと考えた。



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