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■サッカーを観る技術 スーパープレー5秒間のドラマ
湯浅健二/著
2002年2月 新潮社 1,300円

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評者・増島みどり スポーツライター 2002.3.16 update
よく、「私はサッカーの専門的なことはわからないのですが……」というメールをもらう。専門的なことを知っているかいないか、この場合は戦術を指すのだと思うが、こうした第一関門に対する不思議な、心の中での境界線があるようだ。
私の友人たちは、こうした一種謙虚な姿勢とは正反対の主婦ばかりで、しかもスポーツライターを友人に持っているとなると怖いものはない。「AゲームからCゲームはないのに、なぜDゲームがあるの」「サッカーって前半と後半の時間が違うの?(Vゴールを指すらしい)」といった奇想天外な質問ばかりだ。あるとき、友人から「少年野球を子供がやっているけれど、夫と子供の話題に入れないし、すぐに、野球を知らないんだから、と言われる。何とかしたい」と深刻な相談を受けた。
私はスコアブックのつけ方を教えた。友人はおそらく、スクイズの必然性や敬遠の存在意義について、あるいは投手交代の価値観などはさっぱり理解していないと思うが、あっという間に「うちの子は面白いところに打球を飛ばす」などと言い出した。今では子供や夫にも一目置かれ、子供は仲間に「おまえのかあちゃんいいよな、ビデオよりスコア見せてくれるからさ」などと言われているらしい。
つまり、スポーツを観ることに関しては、総論、各論その両方があり、どちらだけでも十分に面白いということである。
そして書く立場からすると、この両方に十分な知識を持って、「AゲームとDゲーム」の区別がつかないような人にも、読むスポーツを十分に面白がってもらいたい、これが私の理想である。平易に物を書くことは特にスポーツでは至難の業である。
湯浅氏とはいつも「現場」で一緒になる。隣で観ることもある。もちろん総論、各論ともプロフェッショナルであるから、こうした本になる。総論に対して、各論からのアプローチである。試合に対して、選手個々の技術や特徴、戦術に対してひらめきや瞬間の判断といった対照的なシーンからサッカーを観るテクニックは、子供にも十分にわかると思う。
W杯を楽しむ、と帯にはあるが、実際は、Jリーグであり草サッカーで、こうした観る技術はスポーツへの愛情を深くするのではないかと思う。

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