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■オウン・ゴール
フィル・アンドリュース/著 玉木 亨/訳
2001年7月 角川文庫 686円

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評者・増島みどり スポーツライター 2002.1.1 update
サッカーにまつわる名言は主にイングランドに多く、語り継がれているものになると圧倒的な報道量もあって、イングランドに絞られるといってもいいくらいだ。
韓国でW杯の抽選が行われた際も、エリクソン監督は古式にのっとって(?)、F組に入ったことを何とかジョークで紛らわそうと気の毒なくらい努力していたし、知人のコラムニストからは「FはFIGHT(戦争)のF、HはHAPPY(幸せ)なHだね」などと声を掛けられた。
サッカーに関して笑いを求めようとする姿は、つまるところ、サッカーという概念がその反対の、シリアスさに位置するからなのだ。
アルディレス監督がJリーグで指揮を執っていた頃、「アルゼンチンから行って、もっとも気に入ったのは、彼らのサッカーへのユーモアのセンスだった。むしろ自虐的ともいえるのだが、あんなことはアルゼンチンではないからね」と話していた。彼のお気に入りは「イングランドではこう言います。“奥さんを変えても、恋人を何人変えてもいい。しかし男ならクラブは絶対に変えてはならない”」だったことを思い出す。

著者は、著名なサッカーコラムニストでもあり、サッカーのユーモアも、同時にどうしようもない絶望感も、おそらく知り尽くしていると思う。それを土台に生まれたこの本は、サッカーを題材にしながら、本当に笑える貴重なストーリーだと思う。大体、私たちは普段、サッカーを見ながら笑ったりなどまずできないのだから。
主人公のストロングは冴えない探偵で、サッカーがらみの陰謀に巻き込まれながら事件を解決する。すべてはサッカーファンが知っているクラブ名、状況の中で展開するわけだから、読み終えるのに「90分、いい試合を観る」ような軽快さと充実感がある。
「サッカーは生死に関わる問題ではない。それ以上だ」
リバプールの、かつての監督の言葉である。私が知るこの格言が出てくる個所がある。
この言葉をサッカーの試合で、ではなくて、小説で、しかもユーモアとジョークをもって解釈したのが本書ではないかと思う。

さて2002年がとうとうやって来た。
「オウンゴール」には、選手も、私たちもくれぐれも注意をしましょう。

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