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■6月の軌跡
増島みどり/著
2001年11月 文春文庫 514円

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■6月の軌跡
増島みどり/著
1998年12月 文藝春秋 1619円

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投稿者・近藤悠介 フリーター 東京都小金井市 2002.2.8 update
韓日2002まであと5か月。組み合わせ抽選も終わり、優勝予想も盛んに行われている。その議論の中で「伝統」や「実績」といった事が持ち出されるが、こと日本に関する話題となると多くの人はそれらを口にしない。
確かに「伝統」を論じるには、日本のサッカー文化は熟成していないかもしれない。しかし過去の積み重ねで現在がある。決して代表監督が替わる度に、国のサッカーレベルが急激に変化しているわけではない。 システムや監督采配以外のところで、日本の長所・短所を論じる事は出来るはずである。そして、「実績」はある。「フランス98でW杯初出場」という実績が。2回目の出場をするにあたり、前回の事を振り返るべきではないだろうか。
フランス98の時は大会中の盛り上がりに比して、終了後人々の関心は急速に冷えていった。「人々」と言うより「メディア」と言った方が正しいだろうか。解説者やライターがあれこれ述べたが、関係者の多くは黙して 語らなかった。そのうち話題は新代表監督や中田英寿選手のペルージャ移籍に移っていってしまった。日本にとってフランス98は一体何だったのか。
この『6月の軌跡』には、そのフランス98に参加した日本代表関係者39人の証言が収められている。W杯へのそれぞれの想い。これらを読むとなぜ彼らが語ろうとしなかったか、わかる気がする。考えを伝えようとしても、ファンと間に介在するメディアの視点・解釈によって意見の受け取り方はどうにでもなってしまう。その事を、彼らは恐れたのだ。しかし、この本の著者の増島さんは、ギリギリのところまで本音を聞き出す事に成功している。ライターの技量もさる事ながら、人間として信頼されているのだろう。「我々の国の代表が初めてW杯に出場して、何を見てどう感じたのか」この事実の前には、賞賛も批判も不要である。ただ受け止める。受け止めた上で、今後何をしていくべきか考える。それがサッカー文化の発展につながるはずである。「フランス98の時から日本のサッカーどう変わったか」という視点で読んでも面白い。いずれにせよ、韓日2002までに読んでおきたい1冊である。


投稿者・高丸早苗 自営業 北海道夕張郡長沼町 2001.10.30 update
増島さんを初めて知ったのは、何気なく『週刊文春』を読んでいたときのこと。私は静岡県出身で、サッカー大好き! そのサッカーの選手や監督、一人一人のことが書かれていた増島さんのコラムにすぐにハマってしまいました。スポーツを題材にしたとき、ほとんどは「あの時に選手を替えるべきではなかった。」とか「あの時の監督の采配は疑問だ。」等の記事が多いのですが、増島さんの文章はそういうことには触れずに、一人一人のその時の気持ちが忠実に表現されています。ワールドカップをともに戦ってきた彼らの思いが痛いほど伝わってきます。私は毎週、増島さんのコラムが読みたいために『週刊文春』を買っていました。だから『6月の軌跡』が出たときには どうしても欲しくて、主人に頼んで本屋を転々としました。やっと見つけたときにはなんとも言えず嬉しかった! この本を読んで思ったのは、皆、本当に一生懸命だったのだということ。日本はフランスワールドカップでは1勝もできなかったけれども、誰もが何にもかえがたいかけがえのないものを得て帰ってきたのだと思います。この瞬間があったから、今の活躍があるのだと……。 増島さんの文章には選手に対する思いやりというか、そっと見守る温かさを感じます。それがとても気持ちがいいのです。余談ですが、私も増島さんと同じ1961年生まれ。同年代の人の活躍ってとても励みになります。これからも選手の心に触れる、温かい作品を書いてくださいネ! 応援しています。


投稿者・わたなべゆみこ 公務員 栃木県 2001.4.8 update
フランスワールドカップ出場が決定してから、お祝いムードの中たくさんの関連本が出版された。大会開催中は、代表の戦いを解説する記事やコラムを目にしない日はなかった。けれども、大会が閉会すると代表の3戦全敗の結果に対する失望と共に、関連本は急激に減っていった。(代わりに増えたのが中田選手やセリエA関係)だから、この『6月の軌跡』を書店のスポーツコーナーで見かけたとき、正直「なんで今ごろ」と思った。季節外れの商品を見つけたときのような気持ちになった。しかし、それでもこの本購入を決断したのは、日ごろから雑誌等で読んでいた増島さんの書く作品が好きだったからであり、39人もの関係者の声が収められていると知ったからだった。
肝心の本の中身は、一人一人へのインタビュー。そこにいるのは、英雄や悲劇のヒーローと同行スタッフではなく、それぞれ激動の6月を過ごしたプロ集団だった。彼らに対する増島さんの視線は、客観的であると同時にやさしさが感じられる。また、文章はシンプルで読みやすく、スポーツノンフィクションにありがちな過剰な表現に振り回されることもない。また、これは別に代表チームの暴露本でもないし、ただの苦労話集でもない。39人のプライド+増島さん丁寧な取材が伝わる本当にいい作品だと思う。私のような若輩者が言うのも気が引けるが、できるだけ多くの人にぜひ読んでほしいと思う。


投稿者・アッキー 大学生 東京都港区 2001.4.8 update
若い世代の選手達を孤児院に連れていくなど、地元との交流や、選手の今の立場を理解させる、自己主張をさせる、選手の部屋に乗り込んで行って選手とコミュニケーションを取る.....etc。『6月の軌跡』の中で複数の人が問題視していたことを、トルシエは、全部なくそうとしているような気がします。トルシエが日本代表の課題や問題点を見極め、それを払拭し乗り越えようとさせている辺りは、やるなーと思ってしまいました。もしかしたら、彼も増島さんの本を読んだのかもしれませんね(笑)。


投稿者・月島健太 編集者
増島さんをヨイショするわけじゃなくて、本当にはずせない1冊。日本代表がフランス・ワールドカップ行きを決めてから、雨後のタケノコのようにワールドカップ関連本が出て、ワールドカップが終わるとほとんど一斉に姿を消した。それで、もうワールドカップの話題も消えかけた98年の暮れにこの本が出たんだけど、あっという間に店頭から消えた。売れすぎちゃって。フランスへ行った選手や監督・コーチはもちろんのこと、ドクター、コック、トレーナー、栄養アドバイザーに至るまで関係者39人の証言というだけで読みたくなる本だけど、もっとすごいのはその内容。へえ、あの時そんなふうに思ってたの?みたいな発言が出るわ出るわ(内容についてはとにかく読むべし)。私、編集者ですから、ここまで言わせて、まとめ上げた増島さんはすごい! としか言いようがない。だって、たった1人に聞きに行ったって、きちんとネタをとり、それを的確な言葉に昇華させられるライターなんてあんまりいないんだ、これが。それが、「ほう」「ええっ!?」「そうだったの!」の連続で39人。ワールドカップという超ビッグイベントで、それも日本は初参加。だからこれ、めちゃめちゃ貴重な本、資料としても第一級なのだ。日本サッカーがこれから歴史を刻めば刻むほど価値が出る本、間違いなく。

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