パリでは、若い男女が平気で路上で抱擁し、キスをし合う。フランス人は、我が妻に言わせれば、
所構わず本能に基づいて行動する、たいへん動物的な人間たちである。
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そんなフランスで育ったヨーロッパミヤマクワガタ(Lucanus cervus cervus)も、 路上での熱い抱擁がお好きらしい。2007年6月18日深夜、パリ郊外のひっそりと静まり返った住宅街。街灯直下の歩道上で、 雌雄がカップルとして期待されるべき営みにいそしんでいた。
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できることなら、ミヤマには樹液場で出会ってみたいところだが、街の中のカフェと違って 森の中の居酒屋はそう簡単には見つからず（樹液を出しているヨーロッパナラは非常に少ない）、 彼らの普段の居場所がなかなかつかめない。夜な夜な街の灯りに誘われて遊び出ているところを見つける方が、 よほど手っ取り早いのだ。まあ、これも生態画像の一つと言えなくもないだろう。
それにしても、外灯下でクワガタムシが交尾をしているというのは、そもそも相当に珍しいことではないだろうか。 そのクワガタがヨーロッパミヤマであるのだから、なかなか貴重な場面に遭遇したのかもしれない。