オオクワ採集記

2009/6/20(土)のオオクワ採集記
オス53.6mmとオス50mm メス43mm 小さいオスはその場でリリース 計4頭


昨年のオオクワ採集記を書かせていただきます。
その日の採集は、数々の布石と偶然と運があっての採集結果だと改めて思います。長年、採集しているとこういうこともあるのですね。

採集ポイントは2年前(2007)、T氏が見つけた樹皮捲れの木(B)のある、細い農道沿いにある里山。


その時はたいした成果もなく、急斜面で笹藪に覆われ、周辺に虫(クワガタ)の気配もなく、その後、通うこともない、軽視していたポイントです。後で考えれば、他の採集者の痕跡の全く無い、魅力的な里山なのですが。

昨年(2008/6/24)は、木(B)そのものを見つけられなかった(採集人として恥ずべき初歩的なミス)。
ただホタルが乱舞していたので、翌日家族でホタル狩りに行きました。

そして1年が経ち、前日の夜(2009/6/19)、再び家族でホタル狩りに行く。その時、子供たちが夢中になって網を振っているホタルには気もそぞろで(勿論キャッチアンドリリースです)、ライトで木の確認をしていると、一本のクヌギの二股の部分に黒い虫の姿が見え(子供をほったらかして山に入っていくなんて、後が恐ろしくて出来ませんでした)、改めてその木(そそられるシルエットでした)を確認したい気になりました。

そして6/20(土)、早朝マウンテンバイクで下見を兼ねて採集に行くことにしました(単独)。
MTBで出発後、しばらくすると後ろタイヤがパンクし(釣り針みたいなのが刺さっていた)、家に引き返しました。普通ならここであきらめるところですが、今年3月に購入した妻のMTBに乗り換え、再出発。妻のMTBが無ければ、この物語もここで終わり。というか、話にもならないところです。

現場到着すぐに昨晩気になった二股の木を調べましたが全く健全な木でした。見かけ倒しの木、というか私の見立ての悪さを痛感しました。そして「木(B)は確か道から少し登った所」との記憶を頼りに木(B)探すが見つりませんでした。
「やっぱり無駄足だったか」とあきらめて、ただもう少し上まで農道が続いているので、MTBで登りましたが行き止まりになりました。引き返す途中、一匹のスズメバチが目の前を横切り、里山の中に飛んでいくのを見ました。
「どこかに樹液の出ている木がある!」。

もう一度その里山を見渡すと、急斜面で笹藪でひどいく分かりづらいがクヌギ林に間違いない。MTBをとめ、少し入りやすそうな所から藪漕ぎをする事に。後で気がついたのですが、歩きやすかったのはそこがイノシシの獣道になっていたからでした。
木(B)もあるはずと斜面を登り、何本か見るが見つかりません。ただ、ブッシュもまだ進める感じだったので、奥に進むことにしました。獣道の登り斜面だったので、調度いい具合に視界が開けており、先に進む気になったのです。

一息ついて、先に何本かクヌギがあるのを視認していると、再びスズメバチが目の前を横切りました。それを目で追うと一本のクヌギに止まりました。「よし、あそこまで頑張ろう」という気になりました。そしてたどり着いたその木(A)

には目の高さに良い感じの樹皮捲れが。
笹でスズメバチを追い払い、さあじっくり確認しようと見ると、目の前に小さなオオクワ(中歯オス)が樹皮に挟まっているではありませんか。

一瞬目を疑ったが、オオクワに間違いありません。でも何故、人目につくような外部の樹皮に挟まっているのか?
疑問はあるが、オスがいるということはメスもいるはず、と樹皮捲れの上部を鏡でのぞくと、やはりメス(小歯のオスの可能性も)がいる。それも大きい。鏡で見ているので大きく見えるのですが、それにしてもオスのサイズとのバランスが悪そうというのが第一印象でした。

さあ、ここでどうするか。初めてのオオクワだったら間違いなく、すぐに採集に取りかかるところです。ただ、過去に写真を撮らなかった後悔があり(初めてのオオクワ)、採集せずにそのままにしてカメラを持って再訪することにしました。
その里山自体に採集者の痕跡は全くなく、周りの状況からして急いで採集しなくても、他の採集者に見つかることもないだろう、もしいなくなれば他に良い木があるということでもあります。なにより、この事を誰かと分かち合いたい気分で、T氏にメールをしました。
「オオクワの木を見つけました」と。

その日の夕方、今度はT氏と採集に出かけました。再びブッシュをかき分け、木(A)へ。
見ると朝見たオオクワはまだ同じ場所に挟まっており、T氏が樹皮捲れを確認すると実は雄雌ペアで隠れていたのでした
(T氏が樹皮捲れを確認しているところ)。

ということは小さなオスは追い出されたということになりますが、何故動かないで外部に身をさらしているのか。T氏が掻き出し棒でつついても押しても身動きせず、どうやら身動き出来ない状態で樹皮に挟まっている様でした。そこで樹皮を少しゆるめて、救出してあげました。

結局、その木でオス2メス1の3頭のオオクワを採集し)、小さなオスはそこに逃がしてやることにしました。多分、その木に住むであろうし、再びメスが来れば子孫を残してくれることでしょう。

この木には他のクワガタは1匹もいませんでた。
樹皮捲れの中のオオクワの写真は"やらせ写真"の様な小さなオス以外は、どうしても撮影できませんでした。

今度は2人でさらに奥にあるクヌギを調べてみましたが、発生木になりそうなクヌギが2本あるだけで、樹液の出る木は見つかりませんでした。

ひとまず、山から出て、木(B)も調べて見ようということになり(これは私の見当違いで、アプローチがもっと手前で見つからないわけでした)、なんとそこにも樹皮捲れの下部にオオクワ・オス(50mm)がいました。

オオクワの木を2年間もほったらかしにしていたのです。

その里山で見つけた樹液の出ている木は2本だけで、その2本ともにオオクワがいるとは・・・。逆にノコギリ・ヒラタなど他のクワガタは居ませんでした。どちらかというと虫の気配の少ない里山です。

昼間の樹液採集で一度にワイルドオオクワ4頭、こんなことはこれまでに無い成果です。一大産地と言われる能勢・川西方面でも最近では難しい様なので、貴重な体験と言えるでしょう。

採集圧の高い採集ポイントでは、どうしても放虫という言葉が脳裏をかすめますが、ここは間違いなくオオクワポイントでしょう。開発の無いことを祈り、他の採集者に見つからぬよう、そっとしておきたいポイントとなりました。

もしホタルが飛んでいなければ、もし二股の木のシルエットに興味をそそられなかったら、もし妻のMTBがなかったら、
もしスズメバチと遭遇しなければ、・・・
"もし"の積み重ねが無ければ、この採集はありませんでした。不思議なこともあるものですね。

ちなみにその里山には以後、夏のシーズン中は行きませんでした。頻繁に通うと採集の痕跡が残ってしまいますし、夜間の場合ライトでポイントを他の採集者に知られる可能性を恐れたからです。私の地元でも荒らされ悲惨な状態のポイントが多々あるのです。
再度チェックにいったのは9月に入ってからでした。リリースしたオスがいるかと期待していましたが、残念ながら見あたりませんでした。他の木に移動したのか、動物のエサとなったのか・・・。

今回の採集で思ったこと。台場クヌギの少ない地元では、自分なりの採集のセオリー(数少ない採集例ですが)みたいなものはあったのですが、今回は全く違っていました。
つまり、オオクワはその所々での環境に適した形で生息しているのだなあと実感しました。そして数の多少はあれど、どこにでも生息していることを改めて実感しました。
そして、まだまだ未知の木の、そして数多くのマザーツーの存在を願い、それを見つけたいと思っております(ほとんどが空振りですが)。





目次へ戻る