室温によるヘラクレス飼育 by hodumi




ヘラクレスオオカブトの飼育というと、大きなスペースの確保と温度管理等、飼育してみたいが、ためらいを感じている方も少なくないと思います。そこで、ヘラクレス飼育初心者のhodumiがチープな飼育方法をここに紹介します。
 
 

ヘラクレスのリッキーとオキシデンタリスの2ペアが蛹になり、それぞれの♂の蛹が160mmアップしております。胸角も伸びて野外品のプロポーションにも負けていないと思います。またオキシデンタリスはギネスサイズ?です。そこで今回の飼育を振返り、大型でしかも胸角の伸びた理由を少しでも探りたいと思います。

1.現 況
神奈川県相模原市南部(町田市、横浜市に隣接)の軽量鉄骨造2階建ての集合住宅2階に暮らしております。虫部屋などはもちろんありません。居間の一角にワイヤーシェルフを置き、上段&最上段を使用して日夜ブリードに励んでおります。上段には主にプラケースをパズルのようにしてギチギチにつめます。プラケースの蓋にはコバエ防止用の内蓋をかませています。もちろんコバシャも使用しております。霧吹きによる加水は殆どしておりません。最上段は収納ケース内にブロー容器をつめています。現在カブトは6種。内ヘラクレスは3亜種飼育しています。もちろんクワもいっぱいいます。

2.飼育容器
ヘラクレスリッキーは、初めて参加させていただいた「第5回まちかねBBS主催里子交換オフ」で里子としてうららさんから頂戴した2頭(♂♀)です。また、ヘラクレスオキシデンタリスは某ショップのプレゼント企画で運良く当選した3頭(♂♂♀)です。5頭共に平成13年5〜7月頃の孵化個体で我家に到着したときは、3令初期で既に♂♀の違いは腹部の窪みにより確認することができました。リッキーは10月に、オキシデンタリスは12月に到着しました。体重は平成14年1月より計測しましたので、下表を参照してください。


リッキーは3令終期までブロー容器(径137mm×高さ155mm 2000cc)で飼育し、蛹化前に♂は中プラケ(縦300mm×横195mm×高さ205mm)、♀は小プラケ(縦230mm×横155mm×高さ170mm)に移しました。オキシデンタリスは3令終期まで ブロー容器(径137mm×高さ155mm 2000cc)で飼育し、蛹化前に全てを小プラケに移しました。オキシデンタリスはリッキーに比べ小型で、「大型固体でも飼育下では130mm程度・・・」と、どの本にもそろって書かれていたので、小プラケの縦幅を使っ て蛹室を作れれば蛹化は可能だろうと考えました。が、しかしである。平成14年11月下旬に一番で蛹化したオキシデンタリスの♂前蛹は、蛹室を小プラケの縦方向に平行に作り、蛹室長も推定200mmほどで(一部横面に20mm程の窓あり)真下から殆 ど確認できる状態(90mm程の楕円の窓あり)でした。蛹化は出社中の昼間であり、蛹の胸角は雷の稲妻のごとく2ケ所で90°に折れていました。なす術もなく、その後10日で☆となり、大変なショックでした。そのため小プラケで前蛹状態のもう1頭のオ キシデンタリス♂を急遽オアシスの人工蛹室に移し様子をみました。
 
 

3.フード(マット)

3令初期から我家での生活を始めた幼虫たちはマットを2度変更し、3種類のマットを食したことになります。近くのショップが既存のマットの販売を中止し、他のマットを販売することになった為、インターネットにより10リッターあたり800円から360円位の 安価なマットで飼育しました。使用したマットは2次発酵マット(低温になるとキノコが出ます)、1次発酵マット(埋め込みマット)、バクテリア完熟発酵マット等のうたい文句で、幼虫期間の12ケ月間に4ヶ月ずつ位使用しました。

冬場の食欲は温度の影響かもしれませんが明らかに落ちます。
 
 

4.温度・湿度管理

通年の温度管理は、最低限です。

夏場の猛暑はエアコンでしのぎます。午前中は窓全開、午後30度以上のときのみエアコンを使用します。照り返しのため温度上昇を抑える位の効果しかえられませんが、ないよりましです。飼育場所の真上にエアコンがあり、収納ケースのうえにキャンプ 用のマットを掛けて冷えすぎには注意します。また、冬場は意外と暖かく朝方の最低室温は1月から2月初旬にかけて、13度±2度位でしょうか。起床(6時)と同時にファンヒーターのスイッチを入れるので、30分もすると20度以上に上昇します。夜は最 低でも12時ころまでは22度±を維持します。また、一年を通してまめに換気をしているようです。(日中は会社へ出社しているため他人事)ただし、飼育容器の置き場所によっても温度は多少違うようで、特に壁際に置かれている容器はやや温度が低い ようです。♀の容器を壁際に置き、♂の容器は部屋側に置きました。 
 

5.飼育期間

自己で採卵し、個々の孵化を確認しておりませんのであくまでも推定ですが、リキー&オキシデンタリスの♂♀4個体全て平成13年5〜7月孵化し、平成14年12月〜平成15年1月に蛹化しました。幼虫期間は約18〜19ヶ月です。ただし、リッキーの♀は平成14年8月に蛹室作成中のところを、マット交換のためひっくり返したため、蛹室を壊してしまいました。ですから、幼虫期間が♂並にかかってしまったようです。
 
 


蛹の期間は♀は正確には確認しておりませんが蛹化日は共に12月初旬(10日に確認。蛹の様子から7日又は8日に蛹化したと思われます。)、♂はリッキーが12月4日。オキシデンタリスが1月3日です。定温飼育(25度前後)の場合は60日弱で羽 化するようですが、4頭の平均蛹期間は85日で定温飼育の約1.4倍の期間がかかっています。
 
 

6.考察

1.     どんなに大きな蛹室でも飼育容器の底面から大きな窓がみられる場合は、人工蛹室に移した方が安全と考えられる。

理由:前蛹は、蛹化時に傾斜のついた蛹室の上方より下がりながら脱皮し蛹になります。底面にできた窓は滑りやすく、通常の状態であれば自分が脱いだ皮も押し下げ蛹室の端まで下がりますが、オキシデンタリス♂の角曲がりは、蛹化した固体のお尻 から蛹室後端まで8cmもありました。つまり、自力で下がれなかったと推察します。プラケースの底面の滑りと傾斜がないことの2点が原因だと考えます。また、プラケースは底面中央に凸部があり、この部分が蛹室にかかる場合も注意が必要かと思われ ます。

オアシスの大きさも大型の個体に対しては100円ショップで売られている物では少々狭い様です。蛹室後端から1〜2cmは前蛹の脱いだ皮にスペースを取られるため、人工蛹室の全長は、蛹サイズが今回の160mmだと仮定すると、最低でも180〜2 00mmは必要であり、終令時の幼虫体重により判断し、適正な人工蛹室を作成しなければ成らないでしょう。

2.     人工蛹室による微細な角曲がりは、蛹室の横断面のカーブに関係があると考えられる。

理由: 蛹化したての蛹は、外部から振動等与えない限りは仰向けの状態でいることが多く、横断面の理想は成虫胸部のカーブを再現するのが効果的と思われます。つまり、平らでは曲がり易いという事です。また、胸角が固まるには4日かかっており、そ の間の寝返りでは一時的に胸角根部の曲がりが確認されました。よって、蛹化した日も入れ1週間程は外部からの振動は極力与えない様にすべきだと考えます。人工蛹室の形状は、チョコエッグを細長くし、尚且つ若干の傾斜をつけることです。

3.     室温でもヘラクラスは飼育できる。

理由:室温(低温時)による飼育は、次世代の累代には至っておりませんが「幼虫⇒前蛹⇒蛹⇒成虫」の各ステージに何ら問題はないと思われます。今後の課題としては、「交尾⇒産卵⇒孵化」の各ステージにおいて、低温時にぶつかった場合の状況を 観察していきたいと思います。

 

7.最後に

 少ないスペースと、温室を持って無い方にも是非チャレンジしていただきたく原稿を書きました。冬場の室内最低温度は10度位だったと思います。一時的に低温になってもヘラクレスの幼虫や蛹達は温度の影響によって☆に成ることなく全てが羽化しま した。それぞれ亜種や産地によっても生息環境が異なり全ての個体に対して当てはまるかどうか分かりませんが、気長に飼育する覚悟があれば、室温でも飼育できることを報告します。

 今回は、3令からの飼育であり、それぞれの♂が140mmアップした理由の特定ができません。初令より3令初期の飼育にヒントがあるのか、それとも私が飼育した期間に大型個体作成のヒントがあるのかは分かりませんが、もしかすると何かのヒント がかくれているかもしれません。現在、孵化後すぐの初令から飼育しているリッキー6頭とヘラクレス4頭が3令になっておりますので、大型の♂が作成できれば、また報告させていただきたいと思います。

今まで諦めていた方にも“やっぱりヘラクレスが飼育してみたいと”思っていただけると幸いです。
 
 

目次へ