古谷


3月下旬のミヤマの芋虫掘りから、夏の桧枝岐詣でを経て10月の里子オフに到るまで、私の採集の足は日産フェアレディZである。平成2年の登録であるから、もう丸13年のっていることになる。
免許を取得してから20数年が経つが、その間に乗っていた車は4台。そのうちほとんど年月が先代の車も含めて、Zである。私のかみさん(うわばみ)より長い付き合いなので、まさに愛しい、愛しいくるまなのである。 
私が今まで過去に乗っていた車を紹介すると、1台目はシトロエン、2台目は箱スカ、3台目と現在がZである。最初に乗っていたシトロエンは、ちょっと変わった車で、当時日本に輸入されていたシトロエンは1200ccのエンジンを搭載していたが、私が乗っていたのは1000ccの空冷エンジンを搭載し、ソレックスのキャブレターをつけていた。今では絶対にお目にかかれないチョークなるものを調整してエンジンを始動させた。冬場のエンジンの始動には、まさに職人芸が必要な車だった。2台目の箱スカは2000GTではなく1800GLというちょっとセコハンで、1800ccの4気筒エンジンを搭載していた。たしかG18と言う日産製のエンジンではなく、プリンス製のエンジンだったと思う。しかしながら、排ガス規制前のエンジンであったので、今の同じ排気量の4バルブDOHCエンジンなどとは比べ物ならないくらいパワフルで、アクセル一踏み150キロといった車だった。 
さて、今乗っているZは一応スポーツカーというジャンルの車であるから、当然そのようなつくりとなっている。しかもちょうど今から十数年前のバブルの絶頂期に設計、誕生したくるまであるから、新しいZと違い派手な雰囲気をもっている。3000CCV型6気筒のVG30Eと言う平凡なエンジンに、ごちゃごちゃ一杯いろんなもの(インタークーラつきツインターボ等等)をくっつけ、VG30DETTなるものをでっち上げ、馬力は280馬力をたたきだす。タイヤのサイズは225の50である。少年時代にス−パーカーに憧れた私は、発表当初とうとう日本の車もここまで来たかと、真剣に喜び、丁度同じ時期にGT−Rも発売されたので、どっちにしようか散々悩んだもんである。
 
それからもう、13年乗っているわけであるが、いまだに高速道路ではアクセル一踏み1○0キロである。13年乗っているが、いまだかつてアクセルを床までベタ踏みしたことはない。ベタ踏みしなくてもポルシェやベンツあたりでは十分180キロまでは追いつくことは可能である。さすがに、先日外環でマフラーか火を噴いて走っているランボルギーニに遭遇したが、その時は追い付くことはできなかった、というよりも火を噴いて走っている車を最初から追っかける気がしなかった。(蛇足であるが、某○ンダーさん運転の車も追っかける気はない。死にたくないからである。(^^;;)
およそ虫の採集には似合わない車に乗っているわけだが、乗っている本人はまったく不便を感じていない。それは、虫の採集に対する私の姿勢が大きく影響している。私の場合、絶対虫を捕まえなくては嫌だというのではなく、どちらかと言うと、みんなで集まってワイワイ騒ぎたいという、宴会重視型であるために、集合場所まで行ければよいからである。そして虫を採る時は、現場(たとえば林道)までは誰かの車に乗せてもらえば事が足りるのである。そんな虫の採集に対していいかげんな私であるが、ちゃんと今年の夏に桧枝岐でオオクワの♀を捕まえた。夜のライトトラップで、べろべろに酔っているときに、飛んできた虫を何気なく拾ったら、それがオオクワの♀であった。別に血眼にならなくても、運が良ければちゃんと虫は取れるものなのである。したがって、バリバリの4駆の車に乗っていなくても、虫は取れるのである。(なんといいかげんで、都合の良い考えだろう(^^;;) 
さらに愛しい愛しいZを褒めちぎると、結構荷物が積めるという事が挙げられる。その見た目から、絶対に不可能と思えるくらいに積める。ちなみにどのくらい積めるかと言うと、桧枝岐に行ったときに搭載したものは、バーベキューコンロ(ちゃんとした大きさのもの)、折りたたみのテーブル2つ、折りたたみの椅子、鍋、シラフ3つ、タープ、炭、ガスコンロ、食料、クーラーボックス2つ、酒(一升瓶2本)、着替え、虫の入れ物と網、フライの道具(ロッド、リール、ベスト、ウェダー、長靴)・・・およそ親子3人がキャンプするのに十分なくらいの道具が積めるのである。ただし、積み込むのにはテクニックが必要で、あらかじめそれぞれの大きさを確認してジグソーパズルのように順番にトランクにはめ込むのである。したがって、突然下のほうに詰めたものが必要になると悲惨で、一旦上に積めたものを全部外に出さなくてはならなくなる。さらにZは、トランクの床面積は結構あるが高さがあまりないので、厚みのあるものは積む事ができない。したがって、段ボール箱のようなものは、積む事ができない。まあ、そうは言っても先ほども書いたが、工夫次第で親子3人がキャンプをするだけに十分な荷物が積む事ができるので、私のようないいかげんな採集者には十分なのである。


虫の採集に行くのに十分な荷物が積め、そこそこのスピードで目的地行くことが出来る愛しのZであるが、欠点がないのかと言うと当然そんなことはまったくない。
まず馬力のあるエンジンを搭載し、そこそこのスピードで走れるので当然燃費は悪い。都内の走行ではリッターあたり5キロ、高速を使った遠出で7キロといったところであろうか。(でも、某エ○ダーさんよりはましだとか)また、ターボをつけているので走る前後の暖機運転は絶対に必要である。(ようはいきなり走ったり、エンジンを切るとターボが焼きついてしまう) 
次の欠点は、車体が低いということである。車体が低いのはスポーツカーであるから当然であるが、都内を走っていて、ディスカウントショップの階段式の駐車場の出入り口や、踏み切りを通過するときに腹を擦るのには閉口する。さらに車体が低いのと私の車の色はガンメタであるために、どうも昼間車体の高い車のバックミラーから見えにくいようで、高速でトラックに幅寄せされてひやひやしたことが何度もある。こんな車であるので、当然山の林道を走ることなど絶対に無理である。但し、地面が砂のようなところは案外平気で、大利根のダートコースをスタックもせず爆走することは得意である。(本当だよ)ようは、腹をすってもオイルパンなどを痛めないところであるならば、そこそこ走れるということであろうか。 
さらに、運転がしにくいと言う欠点もある。運転席からの視界は狭く、前後左右の車両感覚もそのグラマーなボディのおかげでわかりづらい。ボディの長さはそうでもないが幅が広いので、けっして取り回しが楽とは言いづらく、都内の狭い路地なんぞは、お金を貰っても入りたくない。しかも私のZは、ミッション車であるので、運転がしにくいことに拍車をかけていて、渋滞にまきこまれるとハンドルを握っていながら泣きたくなる。そんなおかげで、都心や、連休お盆の高速道路は絶対に避けている。


そこそこスピードが出て荷物がそこそこ積めるが、燃費が悪く運転がしにくい愛しのZであるが、SP−311からずっと続く伝統のある車であり、なんとなくバタ臭くなんとなく暴力的なにおいのする、そんなZが大好きなのである。最初はフライフィッシングの足に使っていて、今は主に虫の採集の足に使っているが、別に不便を感じているわけではない。私は、車は大人の玩具であり、乗っている本人のこだわりを満足させてくれれば十分である、と思っているので、その意味でも満足で愛しいのである。
その愛しいZは、来年の1月に車検をむかえる。さすがに13年も乗っていると、足回りはスカスカになっているし、ボディのあちこちに小さな傷が無数にあるし、・・・そうとうガタがきている。さらに、来年の桧枝岐詣でには愛犬の楓(ふう)を是非とも連れて行きたいとおもっていることと、まわりのクワ馬鹿仲間がXトレイル乗り換えているのをみていると、新しい車に変えたいと思が募ってくる。 
しかし、景気も悪いし今年仕事も変えたし、やっぱり13年もZに乗っていると愛着もわいてくるし、そんなこんなでもう少しの間、愛しのZに乗り続けるかと言う気持ちが強くなってきている。まあ、腐れ縁と言う物であろうか。
 

くわがた狂の大馬鹿者達!
 2002年冬号  目次へ