積算温度についての疑問 by 隠@G

積算温度って、生態・観察系の方々が良くお使いになる指標ですよね?
良く聞くので定義を調べてみると、

有効積算温度Σ(T-t)
但しT-tは正または
 (T=環境温度(気温)、t=加算分岐温度)
のようになっています。

この温度の単位に(℃)を用いて計算を行っている例が殆どです。
この定義の式は問題としている期間の全てにわたって一日の気温がTであるとした上での定義であり、Tが時間pの関数としてT(p)で所定の期間内Pに亙って与えられたとすると厳密には∫[T(p)-t]dpと与えられるべきだと思うのですが、それは措いても、(T-t)の単位として(℃)を用いて表した時、例えば、積算温度が20(℃)平均で30日すなわち600(℃・日)と表された時、15(℃)平均で20日300(℃・日)の積算温度は、何が前者の半分の量を表すというのでしょうか?
単に(℃・日)単位で表した場合の、数値上は確かに半分です(笑)が、「物理量として何が半分なのか」という疑問が起こります。

実際、温度T(K…ケルビン)を有する任意の系の熱エネルギーは1自由度当たり
(1/2)kT(kはボルツマン定数1.380658×10-23(J/K)
で与えられますから、積算温度計算の温度単位に絶対温度Kを用いるならば積算温度の数字自体が、その期間その温度を負荷し続けた場合に系が保っていた熱エネルギーの総和に比例する量を表します。

(℃)単位で表現した場合、環境温度がT1(℃)であった場合と、それより低い温度T2(℃)で同一期間を同一の温度推移で経過した場合との差を考える時のみ、
Σ(T1-t) -Σ(T2-t) = Σ(T1‐T2)
の単位は、(℃)の場合と(K)の場合とで一致するので、積算温度にどれだけの差があるかの議論は出来ます。しかし、その比を取ると、明らかに
[Σ(T1-t)]/[Σ(T2-t)]≠ ΣT1/ΣT2
ですから、比を取ること自体、2つの異なる環境温度における比較に使えません。

(K)で表現した場合であれば、同様の理由により、差を取って論ずることができる上、系の熱エネルギーの総和E(1/2)kΣTに比例しますから、加算分岐温度tが存在しなくても、また、同一期間でない温度の積算であっても、平均絶対温度T1(K)におけるE
E1=κΣT1(κは定数)
などと書けば、
E1/E2=((κΣT1)/(κΣT2))=ΣT1/ΣT2
となり、温度T1(K)T2(K)における系の熱エネルギーの総和の比が単純に積算温度の比となります。

以上を鑑みると、加算分岐温度tの存在如何に関わらず、温度Tの単位としては絶対温度(K)を用いるべきであると私は考えます。