美しい死体処理方法入門(6) 小物のアブラ抜きとマウント

k-sugano


アブラ抜き

採集した昆虫は(飼育マニアでなければ)標本にするわけだが、
展足したままほったらかしにしておくと、体内から油分が沁みだして汚くなってしまう。
クワガタムシで油分が特に多いのは国産クワガタならヒメオオクワガタである。
海外産も含めると、オオヒラタやアンタエウスも多いように感じる。

上記のような大型種はアセトン漬けにするのも簡単だが、ルリクワガタ属のような小物は
小さ過ぎるし大量に処理するにはちょっとしたノウハウが必要だ。



1)脱脂綿の上に並べる

下の画像の様に、適当な紙(コピー用紙など)を脱脂綿の3倍強のサイズにして、
中央に脱脂綿を載せ、脱脂綿と紙をホッチキスで留める。

脱脂面の上に、展足済みのクワガタを乗せる。
アブラ抜きした後は、虫体は非常に脆くなるので(特にアンテナ、フ節)
前もって展足しておかなければならない。

紙には「鉛筆で」採集日や産地名を記入する。
ボールペンなどで書くと、インクがアセトンで溶けてしまうこともあるので
必ず「鉛筆」で記入しておくこと。

並べ終わったら、紙の手前側と向こう側を折って、両サイドをホッチキスで留める。
画像にあるように、のちのちのアセトン抜きのことを考えて、四隅をカットしておくと良い。
 




2)アセトンに漬ける。

適当な大きさのPP樹脂のタッパーなど、アセトンに溶けない材質の
蓋のできる容器を用意し、1)でつくった簡易タトウを入れる。

複数のタトウを入れても良い。

タトウの上には、浮き上がり防止のため、ガラス板や薄い陶器板などを乗せると吉。

用意が出来たら、タトウが十分浸る程度にアセトンを注ぐ。そしてすぐに蓋をして
火気のない、温度の低い、外気と交流のある場所に保管する。

アセトンは引火するので十分に注意して頂きたい。



3)取りだし

適当な時間が経過したら、アセトンから取り出す。
採集後、時間の経過しているコルリクワガタなら1日で良いと思う。

取り出す時にも火気に注意すること。

取り出す時には、1)で書いたように、四隅をカットしてあれば、
そこからタトウ内のアセトンが流れだして都合が良い。

なお、アブラ抜き用の容器内に残ったアセトンはアセトンが初めに入っていた容器に戻すか、
蒸発させる。

丁寧にタトウの両サイドのホッチキスを外し(ホッチキス部分をカットしても良い)
恐る恐る(笑)タトウを広げよう。

丁寧に処理すれば、ピッカピカの虫体が行儀良く並んでいるであろう。



マウント

小型の虫は胴体にピンを刺さず台紙に貼るわけであるが、台紙はビニール製と紙製があって
好みに応じて選べば良い。

筆者はビニール製を使う。透明であるため、虫の腹側があとから見えるという利点がある。
志賀昆虫普及社で販売しているものだが、下のようにカットして穴を別途開ける。
ただし、大き過ぎる穴を開けてはいけない。

虫と台紙との接着には木工ボンドを用いる。コニシの白い容器入りの速乾性が良い。
中脚と後脚の間の平たくなっている部分に台紙を着けるが、このとき、虫を仰向けにしておいて、
台紙側に少量のボンドをつけてから、台紙を虫に乗せるという方法をとると大吉かも(笑)

乾燥したら台紙に針を刺し、ラベルも一緒に差しておく。
針は2号が良いと思うが、紙製の台紙を使っているふじもりえりー氏は3号を用いるそうだ。

筆者は虫と台紙を直角方向にしているが、同方向にするやりかたもある
同方向にすると、虫の間隔が狭くとれるので、並べて比較する時に便利である。

小型のクワガタの収納には、画像に示す様に、紙製のボックスで区切ったドイツ箱が
使いやすくてお薦めである。

(本稿作成協力:Erie@ふじもり氏)


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