久しぶりに採集です

標本修理工T




今日は久しぶりに採集に行く。
今年(今世紀)に入って採集に行くのは、1月1日の初島以来だ。

朝5時半、あいあんさんの“雨”という言葉で起こされる。昨日の朝の天気予報では曇りだったのに、
昨晩の天気予報では雨に変わっていたのだ。しかも、朝6時〜夜12時までの降水確率は70%とかなり高いものだった。

あいあんさんの言葉に眠っていた頭もイッキに目覚めて、すぐさま外を見るが、こちらはまだ降りそうな気配がない。
「こちらはまだ大丈夫っぽいです。Uさんに連絡して、またそちらへかけなおします。」
そう、今回の採集は私とあいあんさん(&助手席さん)とUさんの3人(4人?)なのだ。
早速Uさんに連絡を入れると、すぐ近くまできているというので、
「それでは行ってしまいましょう」
ということに決定した。

Uさんと落ち合ってすぐに、今回のポイントの話となったのだが、いかんせん雨が降ったときのことを考えて、
車横付けのポイントへ行くこととした。
それではどこへ行ったのかというと、箱根である。箱根では3種のルリ属が採れるが、今回の狙いはただルリだ。
しかしである。箱根のただルリはめちゃくちゃ採集が難しいのだ。
かくいう私も、何度かここへ足を運んだが、未だに成虫は両手で数えられるほどしか採っていない。
しかも、クマザサが生い茂っていて、まともに歩くことすら困難なポイントなのである。
苦労が報われることはないであろう。

ポイントへ着いて、すぐにあいあんさんは山へと消えていった。相棒の助手席さんは、指定席で毛布をかぶっている。
私とU氏はポイントへ着いたにもかかわらず話に夢中で、車の外へすら出ようとしないという体たらくで、
やっとこ外へ出たのは1時間くらいしてからであろうか?
2人で1〜2時間ほど薮漕ぎをしたが、ルリの産卵マークは一向に姿を現さず、2人で「ないねー」などと弱音を吐き出す始末。
「少し場所を変えましょうか?」ということで、それまでの場所から少し移動すると、すぐにマークべたべたの立ち枯れに遭遇。
が、幼虫がいくつか出ただけで、親は一つも出ず。そのすぐとなりにあった材にも産卵マークがべたべただったが、
こちらは一目見てやる気をなくす(いわゆる入ってなさそうな)材だったので、ほとんど手をつけずに次を探す。

それにしても、産卵マークが無い以前に、我々2人を先ほどから悩ましているものがあった。それは花粉症である。
このポイントのすぐ脇にはスギ林があり、これがかなり効果を発揮していた。はっきりいって採集どころではない。
こんなヒドイ症状になったのは、今シーズン初めてである。

もうかなりやる気が削げていた。私などはここにはいつでも来れるという考えがあって、
無理せず他の人を暖かく見守ろうかという考えすら浮かんでいた。
そんな考えに思い巡らせていると、道脇で材に取り組んでいたU氏が
「Tさん、こんなゴミムシが出てきました」
と言うので、
「私はゴミムシはわかりませんよ」
なんて言いつつそれを見せてもらうと、ルリ♀だった。

「おーっ、ついに出しましたね。」
出した材を見せてもらうと、太い材が何本も無造作に転がされており、ところどころにマークが見られた。
2人でコツコツと削っていくと、すぐに私がやっていた材から黒♀が出てきた。
「やりましたね、これはまだ出ますよ。」
しかし、その続きは出ることなくあとは幼虫ばかり。
この材どもからは、ルリ♀2頭と幼虫30頭ほどが出ただけで、残念ながら♂親は出なかった。
この採集成果を見て、「なんだ、そのくらいしか採れないの?」などと言う人がいたら、私は言いたい。
「(にこやかな顔で)採ってみ。」

昼すぎになってパラパラと雨が降り出してきた。まぁよく持ったほうだということで、車に戻る。
独りで山へ消えていったあいあんさんに連絡を入れるが、向こうもろくな成果ではなかったようだ。とりあえず昼飯に向かう。

メシを食べながらも、私とU氏の花粉症は悪化の一途をたどり、かなりめげている状態であった。
しかし、まだ雨も小雨状態。この箱根ではもう採れる気がしないので、場所を変えて富士山へ向かった。

時間にして4時。雨は小雨だが、ここ富士山のポイントは標高が高いので寒さが増す。
ところどころに残る雪を横目に見ながらポイントへ着く。ここもスギがまわりに生えていて私にとっては地獄絵図のようだ。
30分ほどでU氏はタイムリミットとなり帰宅。私とあいあんさんは5時くらいまでやって帰ることとなった。

雨もだいぶ本降りになってきた上に花粉症の重い症状を背負った私には、かなりキツイ採集行だったと言わざるを得まい。
言い訳がましいが、富士山ではコルリ幼虫を見つけては埋める作業だけで時間が終わってしまった。
4月に晴れたらリベンジに来てもイイかもしれない、なんて今は考えているが、どうなることやら。



2001年春号目次へ