「くわ馬鹿」をご覧の皆様、初めまして。当方は関西地区約30名ほどのクワガタ愛好家が集まり、平成11年9月に発足いたしました「くわクワ倶楽部」と申します。その活動の一環として、くわクワ倶楽部PRESS(通信)なる機関誌を今年の1月に創刊。6月には第2号を発行予定です。このように、まだまだ実績のない当誌ではありますが、くわ馬鹿スタッフ様のご好意により、次号くわクワ倶楽部PRESSに掲載予定の一部記事を、今回「くわ馬鹿」ホームページ上で紹介していただくことになりました。「くわ馬鹿・夏号」は小型種特集であるにもかかわらず、投稿記事を採用していただきましたことには、倶楽部会員一同心より感謝いたします。                      hiromi
 

インド産 Dorcus antaeus のブリードに関して

「印度アンタエウス」…不思議な虫です。

我々、大多数の飼育を対象としたクワガタムシ愛好家の中にあって、標本収集マニアと同じレベルでデータ詳細にこだわったスタイルで、生虫を扱われている方でさえ黙ってうなづかせてしまう程この虫は特別な魅力を持っています。

それとは別にまず生虫市場の中にあって、非常に高価な事、インド産という土地柄の関係で、野外採り個体の市場への流通が極、わずかである事等も、この虫の付加価値を高めていると思われます。

又、流布している情報の中に、今回の主役であるアンタエウスを含め、インド系のクワガタ達は、ブリードが難しいという内容のものがあり、よりミステリアスな手のつけにくい虫になってしまっているような気がします。

ところが実際、幼虫飼育〜成虫管理〜ブリーディングと各ステージを経験してみると、大顎の全く異なる程の遠距離の地域に生息する他産地のアンタエウスと比較してみても、常識的な飼育管理の下では、全く同じように累代飼育が可能な虫である事がわかりました。

これを御覧になられている「くわ馬鹿諸兄」におかれましては、インドアンタエウスと言えども、数ある魅力多きクワガタムシの中のただ一種に過ぎない事は十分承知しておりますが、入手先の違う2組のペアを使用して、データを残しながらのブリーディング結果がまとめられましたので、報告いたします。何かの参考にでもしていただければ幸いです。

悠支
 
 
Aペア(兄弟) Bペア(別系統)
♂75o 菌床飼育 羽化後約70日 ♂78o 菌床飼育 羽化後約55日
♀47o 菌床飼育 羽化後約120日 ♀44o 材飼育  羽化後約290日
○埋め込みマットは、市販微粒子発酵マットを加水せず、ケース底部3cm程強く敷き、その上に材をセットし、同じマットでほとんど全部を埋め込む。割り出しの目減りに応じて、同種使用後の菌床割カスと新しい埋め込みマットを追加ミックスした。

○産卵木は、径10〜20cm長さ10〜25cmのエノキカワラ材・コナラ霊芝材・一般的なクヌギ及びコナラホダ木をやわらかい物からかたい物まで取り混ぜてケースに入るだけ入れ、剥いだ皮を細かく砕きマットと材の間に、少しばらまきながらセットした。材の水分は70℃〜80℃のお湯に5〜10分程度漬けただけで使用した。

○ペアリングは2ペア共に、♀単体ブリーディングセットまで最低2回以上(所要時間1分以上)行った。その後は割り出しごとに追交尾。♀が地上部に出てきたときにも行った。

○エサは、一般市販のゼリー・動物性タンパク質(幼虫)

○設定温度は、19℃〜25℃(秋〜春は温室、夏はクーラー)これ以下では仮眠状態にあり産卵行動は認められない。
 
 
 

割り出し結果(卵・初令・2令含む)


Aペア
割り出し時期
回収数
1回目 7月上旬〜9月上旬
30
2回目 9月上旬〜10月中旬
19
3回目 10月中旬〜11月中旬
1
4回目 11月中旬〜12月中旬
8
5回目 12月中旬〜2月上旬
6
6回目 2月上旬〜3月上旬
0
7回目 3月上旬〜 ♀死亡
64
   Bペア
割り出し時期
回収数
1回目 1月上旬〜2月上旬
9
2回目 2月上旬〜3月上旬
5
14

 
結果考察

 


 Aペアについては1回目〜3回目はエノキカワラ材を使用し、3回目よりコナラ霊芝材を使用するも、6回目からケース内発生の線虫が目立ち始めたが、そのままマット交換をせずにおいたところ、7回目もゼロに終わり、その後♀は死亡に至った。

 Bペアの2回目の割り出し日近くには、ケース内を徘徊する事が多くなるものの、エサの摂食はそれほど認められなかった。その時点でケース底部には元気に移動する幼虫が確認され、♀が新たな産卵場所を求めたとするならば、可能な限り大きいケースのほうが有利かもしれません。

 産卵材については、水分やや多目のやわらかい材であれば何でもOKと言う感じです が、一般的なクヌギ及びコナラホダ木にくらべ、エノキカワラ材・コナラ霊芝材の方が良好な結果が得られた。特に裏山から持ち込んだエノキカワラ材には自然界の持つ特別なパワーがあるのでしょうか?多数の幼虫・卵が入っておりまるで内国産オオクワの割り出しのようでした。このエノキカワラ材は他にも、DGG(羽化後4ヶ月♀)、それまで産まなかったアカアシ、アローコクワにも良好な結果が得られました。ただカワラ茸菌そのものは生きており、菌にまかれ死亡する卵・幼虫も確認できた。


  

 今回のインドアンタエウスのブリーディングを通じて感じたことは、通常の根食い種産卵セットで十分条件は整っている気がします。早いときにはセット数日後に材をかじっており、材中からマットに至るまで全域に産卵しており、産卵場所・幼虫初期食性・行動等はヒラタ〜クルビ系との共通点も持った万能種とさえ思えてきます。又、シーズン的な問題ですが、人為的な温度設定でカバーする事は可能であるような気がします。一般的に言われている“産まない”というナゾの根拠は全く発見できませんでした。

以上のリポート、いかがでしたでしょうか。インドアンタエウスのブリーディング方法及び、データの提供は、くわクワ倶楽部会員「ZIZIC」。監修をつとめましたのは、同倶楽部会長の「IKKYU」。打ち込み担当は「tsukasa-nakamura」でした。

 

 今回、原文をそのままと言う形ではなく、かなり要約いたしましたので、不備なところもあると思います。

 もし、ご意見ご感想などございましたら、下記メールアドレスまでお寄せください。

 何分、未熟な我々「くわクワ倶楽部」ではありますが、またこういった機会に恵まれました時には、どうぞよろしくお願い致します。
 

くわクワ倶楽部PRESS編集部

代表アドレス mukorin66@hotmail.com



 

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