自分で認めるのは悔しいのだが、はっきり申し上げてこの冬は小型種の採集にハマった。この冬を迎えるまでは小型種はゴミムシの仲間としか思えなかった。それがどうしてこんなことになったのか? 何がおもしろいのか? まだ小型種をご存じない方にも多少の紹介をさせていただこうと思う。
小型種を始めて数ヶ月の野郎が蘊蓄を垂れるのは甚だ僭越ではあるのだが、忘れないうちに入門した経緯を書き綴っておきたいと思う。
オオクワポイントの新規開拓に疲れたことがきっかけとなった。完全に目標を失った時期にクワ道さんを強引に誘って、あいあんさんにトウカイコルリの採集に連れて行ってもらった。
但し、小型種との出逢いは去年の春に遡る。檜枝岐にて原名コルリを採集したのが最初であった。
「コルリ」は去年採ったから、今年も1匹採れればいいや!
そんな心構えであった。「トウカイコルリ」というのは、最初は単なる愛称だと思っていた。採集記にも書いたのだが、これは立派な亜種の名称だ。いい機会なのでここで整理しておこう。詳細は図鑑などを参照していただきたい。
●ルリクワガタ(下記亜種に分類される)
・ルリクワガタ(原名)
・ウンゼンルリクワガタ
●ホソツヤルリクワガタ
●コルリクワガタ(下記亜種に分類される)
・コルリクワガタ(原名)
・トウカイコルリクワガタ
・キンキコルリクワガタ
・ミナミコルリクワガタ
●ニセコルリクワガタ
話をトウカイコルリに戻そう。そのトウカイコルリを採集しに静岡県まで連れて行ってもらったのだが、あ〜と同じ小型種ド素人のクワ道さんがいきなり成虫を採集してしまった。これが自分の採集意欲に火を点けたことは言うまでもない。材割をしていて成虫が出てきた時の感激はなかなかのものであった。
コルリは単なるコルリとしか認識していなかったのだが、静岡で採れたコルリは去年檜枝岐で採れたコルリとは違うのだ。つまり、本土ヒラタとサキシマヒラタを混同していたようなものだ。実はこれを知ったのは採集が終わってからであった。
こうやって微妙に異なる種類がいるところが小型種の魅力かも知れない。こんなことは今まで考えたこともなかったし、図鑑を見ても必ず読み飛ばしていたところだ。ただ、採集するのが現実となるとやっぱりある程度は知識を深めようとする。知識が少しでもついてくると、興味も出てくるのだ。
ただ、最初の小型種採集は、コルリ、マダラは採れたものの、非常に疲れたので二度と行くことはないと思っていた。
しかし、そうやって図鑑を見ていると、ひと通りの種類を採集したくなってくる。ビデオを見ると、ルリはコルリの20倍も採りにくいということらしい。そういう話を聞くと無性に採りたくなってくる。そんな中でるどるふさんがルリの情報を仕入れてきたので、探しに行くことになった。
マニュアル通りにちゃんと産卵マークがついていて、表面を削ると何頭でも出てくる。
トウカイコルリと違って立派なオオアゴがあり、サイズも大きい。やはり冬の採集で成虫が採れるのは魅力的だ。こんな世界があったのかという感じだ。ボーズを避けるためにはまずルリだ。(^^;) 然るべき場所に行けば、それほど簡単に採集できる。
山梨県へ連れて行ってもらった。ここではルリ、ホソツヤルリ、トウカイコルリ、マダラ、ミヤマツヤハダが採集できるという。ここでもホソツヤルリとかミヤマツヤハダなどという聞きなれない言葉が出てくる。(^^;)
ホソツヤに関してはあとで述べるとして、ここでツヤハダの話をしておこう。ツヤハダは下記の3亜種に分類される。
・ツヤハダ(原名)
・ミヤマツヤハダ
・ミナミツヤハダ
ルリ系のクワガタよりは少しクワガタらしいという印象しかなく、興味も全く湧かなかったのだが、「ここで採集できる」ということになると俄然状況は変わってくる。採れるのならやっぱり採ってみたい!
ツヤハダの場合は赤枯れに多い。多いのだが、かなり違ったシチュエーションでも入っているのでこの程度の表現しかできない。アカアシやスジ、ヒメオオが採れる材からマダラのいるような赤枯れまで、色んな材に入っている。ただ、それはあとからわかったことだ。
こいつらの難点は成虫がほとんどいないこと。星の数ほど幼虫や成虫の死骸は見つかるのだが、生きた成虫がほとんどいない。不思議なやつらだ。めちゃくちゃ硬い場所に蛹室を作らないと、ちゃんと羽化ができないようだ。しかもめちゃくちゃ硬い場所から出られないらしい。(^^;)
山梨ではミヤマツヤハダの採集に成功した。そうなると今度は原名のツヤハダが見たくなる。群馬に行き、長野に行き、茨城に行き、原名ツヤハダの採集に走りまくった。
大アゴの違いしかわからないが、「採れた」という実績だけでも充分嬉しいものだ。
おもしろいのは、同じエリアに棲息していても、種類によって採り方が全く変わってくること。下記にもう一度整理してみよう。
ルリ:太めの立枯れの幹の部分に多い
ホソツヤルリ:枝の枯れた部分、空中に引っ掛かっている落ち枝の乾燥した部分に多い
コルリ:半分土中に埋まったような落ち枝の黒枯れ部分に多い
ツヤハダ:大木の倒木の赤枯れに多い
マダラ:赤枯れに多い
あ〜が思うに、この世の生物に役割があるとすれば、クワガタムシのそれは「木を土に返す」ことだと思う。成虫なんて何も役割を担っていないと思う。
棲み分けなどという言葉もあるのだが、例えば1本の大木が枯れたとする。その大木の表面部分はルリが、幹の部分はアカアシ・ヒメオオが、枝の部分はホソツヤが、落ちた枝はコルリが、その大木が倒れたら幹の部分をツヤハダが、それぞれ土に返していく。もちろん外道なども同じように入っている。
一ヶ所で採集するのに、ターゲットによってこれだけ探し方を変えないといけないのは、ある意味とても忙しいのだが、そうやってボロボロになりながら、こんなことを考えていた。
いちばん苦労したのはこいつだ。材割シーズンの最後の最後にやっと採集できた。あいあんさんがいつも「ホソツヤホソツヤ」と口にしていたので、これを狙うことがステータスとなっていた。しかし、さすがはド素人で、全く結果を出すことができない。目の前にルリ材があれば思わず削ってしまったりする。本気で探しても、ホソツヤ材の判断ができない。手も足も出なかった。
採集に成功した場所は、ルリの棲息していない場所であった。ここではホソツヤがルリの代わりに大木を噛っているらしい。
あいあんさんの一言、「ルリを探す要領で」これなら簡単だ。あっさりと採集できた。ホソツヤって何なんだろう?(^^;)
マダラクワガタ!! こいつだけは忘れちゃいけないのだ。いつも下を向いて反省している。かわいそうに。普通の材割のやり方なら、間違いなく吹っ飛ばされるだろう。それほど小さい。小さいだけに、こいつを見つけた時の快感はなかなかのものがあるのだ。
馴れてきてわかったのだが、いっちょ前に食痕や蛹室もある。こいつだってクワガタなのだ。そう言って励ましてやろう。
とりあえず、ホソツヤを最後に東日本で採集できるルリ系、ツヤハダ系、マダラ系は採集できた。ただ一つ、原名コルリを除いて。これが採集できなかったのが唯一心残りだったのだが、これは新芽採集ができるので、いつかは採れると思っていた。去年は採集できたが、もう一度見てみたい。そんな思いを強くし始めた頃、いよいよ新芽の季節を迎えたのだ!!
まさか、コルリがこれほど採れるとは思わなかった。感激である。緑っぽいトウカイコルリしか見ていなかった今年であったが、南会津で採集したコルリは青っぽい。あ〜の色弱は何度か書いたが、その目で見てもはっきり違いがわかる。クワガタを色で楽しんだのはこれが初めてだった。
色がついててクワガタらしくないので、以前はルリ系は嫌いだったのだが、南会津のコルリをあらためて見てみて、本当に綺麗だと思った。しかし・・・
こうなったらミナミコルリもニセコルリもミナミツヤハダもキュウシュウヒメオオもキュウシュウオニも採りたくなってくる。6月頭の帰省の際に九州まで足を伸ばしてしまった。
わかってはいたが、コルリシーズンは終わっていて、ヒメオオシーズンには早過ぎる。1年のうちでここしかないという谷間にジャストミ〜〜〜〜〜ト!!!惨敗に終わった。
そのリベンジも兼ねて、今度は信越方面へ遠征した。新芽でクワガタを採集するのは本当に楽しい。これは来るべきヒメオオシーズンに向けての前哨戦ともなる。見つけたときの快感は、何度経験してもいいものだ。何もかも忘れて採集に没頭できるなんて本当に幸せだと思う。
そして、この地域で採集できるコルリの青の綺麗なこと!!色弱のあ〜でもびっくりだ!!紫の「越後型」などというのが存在するらしいが、あ〜としてはここのブルーが本当に素晴らしいと思う。南会津でも青いと思ったが、全く比較にならない。
さらに、新規開拓でポイントを発見!これがまた快感だ。ここは色のレパートリーも豊富なので、来年は晴れた日に行ってみたい。
新芽採集は何度通っても飽きないだろう。
全く知らなかった世界を見せてくれたあいあんさん、南会津で見事にパラダイスを発見してくれたr.matsudaさん、地道にポイントを開拓してくれたるどるふさん、何度も煽りまくってくれたポンカンさん、一緒に休んでバカしてくれたクワ道さん、現地で色々教えてくれたえりーさん、ネット上や現地でお世話になっているつーさん、k-suganoさん、Kirkさん、たんたんさんに感謝の気持ちを述べたい。