私はこーしてクワ馬鹿になった。

クワ中


クワ馬鹿な方々はほとんど幼少の頃にカブトやクワの採集をされてますが、私の場合は違い ました。私はいわゆる転勤族の家庭であちこちを転々としましたが、丁度物心がつき虫に興 味を持った時に住んでた場所が東京の港区の団地で周囲にはカブトやクワは全くいない環境 でした。従いまして採集に行ったことなどなく、カブトやクワはどんな所に居てどのように して捕まえるかなど知る由も無く、またこういう事を知ってる友達も皆無でした。ただ虫は 好きだったので昆虫図鑑を眺めて「いいなあ、欲しいなあ・・・と呟いてただけでした。

そんなある日、父が露店でカブトのペアを買って来てくれました。30数年経った今でも忘 れられないほどの感動を覚え、カブトが茶の封筒に入ってたのを未だに覚えています。今で 言えば私にとってはヘラクレスみたいなものでカブトやクワは宝物のような存在でした。そ の為か今でも私はカブトやクワは買うものだという意識が潜在的に残ってます。その後もあ ちこちに住み、小学5年くらいまで飛んできたクワや買ったクワを飼育してましたが、それ 以降はクワ・カブトとは無縁になりました。

復縁したのは5年くらい前で子供が生き物に興味を持ち始めたまたまホームセンターかどこ かでカブト成虫のペアが売ってたのを購入してからでした。飼育してて少しずつ昔のクワ・ カブトへの思いが甦りつつあったある日、子供と近くの森を散歩していたらカブトの死骸を 見つけました。当時は埼玉の川越に住んでましたが(現在は埼玉県上福岡市)、「この辺に もいるんだ、何とか採集してみよう」と思い、その後はひたすら子供と自転車で散歩がてら 採集に出かけました。

しかし、全く取れない。当然でした。私はクヌギやコナラの木の見分けもつかず、またカブ トが来る時間帯すら知らなかったのですから・・・。真昼間に目くら滅法木を見回るだけで したから取れるはずもなかったのです。そんなある日たまに出前を取ってるそば屋のおじさ んに出くわしました。「何してるの?」と聞かれたので、「カブトやクワガタを採集しよう としてるんですが、なかなか見つからなくて・・・」と言うとおじさんは笑いながら「こん な時間(午後1〜2時頃)じゃまずいないよ。カブトが来るのは日が沈んでからだよ。あと カブトが来る木を教えてあげるからついておいで」と言われてついてくと「これがクヌギの 木。カナブンが止まってる所を夜来て見てごらん」と言うので、その通りに夜来てみると何 とカブトがいました。私はカブトが樹液を吸ってるのをライブで見るのは生まれてこの方こ れが初めてでしたし、樹液採集もこれが初めてでした。これ以降すっかり病みつきになり毎 晩のようにカブト・クワを求めて近所の雑木林を駆けずり回り、採集に没頭したのでした。

こうして日増しにクワ・カブトへのボルテージが上がってきた一昨年の5月「クワガタムシ を飼う」(成美堂出版・吉田賢治著)と出会ったのでした。私はこの本を見てど〜してもオ オクワが欲しくなりました。しかし、入手したくてもなかなか近くのペットショップやホー ムセンターではほとんどオオクワは売っておらず、あっても1ペア数万円で私のサラリーで はとても手が届かない値段でした。韮崎まで採集に行こうかと本気で考えましたが行く暇も 金もなく、また仮に行ったとしても採集のド素人の私に取れるわけがないと思いました。「 やはり無理か」とオオクワ飼育を諦めかけてた6月末に我が家にインターネットを導入しま した。これはクワの為に入れたわけではなく、家にパソコンがあるからとりあえず入れてみ ようという無目的な感覚で入れたのですが、結果的にはこのパソコン導入が私の運命を決め ました。検索でオオクワを開いてみると通販業者があるある・・・。片っ端からプライスを チェックしていくと、私にも手が届く値段で売ってる業者を見つけました。女房に泣いて頼 んで購入し、念願のオオクワを入手したのでした。オオクワが家に届く当日は朝からワクワ クしてました。クワが届いて箱を開けてみると・・・「でかい!こんなでかいクワガタが世 の中にいたのか」と感動してしまいました。67mmの♂と44mmの♀だったのですが、 生まれて初めて見るオオクワを目の当たりにしてただただ感動するばかりで、30数年前カ ブトを初めて見た時の事がオーバーラップしてきました。ここから私は坂道を転げ落ちるよ うにクワの世界にはまって行き、その後はサキシマ、ツシマ、果ては外産にも手を出し、気 がついてみると20種以上のクワを飼育していました。

この世界に入って一番驚いたのは外産クワが国内でも飼育されてる事実を知ったことです。 法的な規制があることは当時はまだ知らなかったのですが、私は熱帯や亜熱帯に生息するク ワやカブトが日本では環境的な問題で生存するのは不可能だろうと思ってました。クワガタ 図鑑等によく外産クワガタの写真が載ってますが、以前はこれを見て「こんなの飼ってみた いけどかなわぬ夢だよな・・・」と思ったものでした。まさかこの夢が現実のものになろう とはそれこそ夢にも思いませんでした。外産の国内輸入に規制がありごく限られたものしか 認可されてない事実を知ったのはしばらく後だったのですが、これもあいあんさんのご尽力 により、48種もの外産輸入が認可された事は外産愛好者の私にとっても喜ばしい限りの事 で、あいあんさんのご努力に対し、敬意を表するとともに心より感謝申し上げたい次第であ ります。

昨年2月には埼玉支部にも入会させて頂き、初めてオフミにも参加していろんな方とお会い する事が出来て交流の輪が大きく広がりました。ここまでクワの道にはまってしまった以上 もう後戻りは出来ないので、とことんはまるだけはまってHNの通り骨の髄までクワガタ中 毒になってし まおうと思っている今日この頃です。

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