幾千のダイヤモンドダストを身にまとう 朝海ひかる

夜の東京宝塚劇場 初めてビデオで見た宙組版「エリザベート」。
私は朝海ひかるに釘付けだ。

絶望的な孤独、絶望的な孤立無援のさなかにある美しい青年。
死神の誘いに引き込まれ、死神に抱かれる高貴な青年。
極限の状況に追い込まれた不幸な若者を、少年のあやうさ、もろさを残した朝海ひかるが演じた。
この役を演じているとき、朝海ひかるはほとんど「いっちゃってた」そうだが、うん、わかるよ。
あたかも何者かが憑依しているかのような、姿月あさとと朝海ひかる。「演技」を超越しているかのような張り詰めた空気。
朝海ひかるってこんな人だったんだ。初めて朝海ひかると出会ったような気持ちだ。

もちろん、朝海ひかるはずっと前から知っている。
初めて認識したのは、1993年の花組のショー「ラ・ノーバ」。中詰で「アモレアモ〜レ〜」と(いつものようにくどく)歌い踊る真矢みきのうしろに2人の娘役が出てきて踊った。
ピンクのだるま姿で、さらに大きな羽根をしょっている。おかっぱのようなかつら。
2人ともなんとも、コケティッシュで魅力的。ふつうの娘役にはない特別なオーラを放っていた。
私は『あれは、誰?』とすかさずプログラムをチェックした。それが朝海ひかると、千波ゆう(すでに退団してしまった)だった。
『ああ、そうか! あの2人は男役だったんだ』と納得。
あのキャスティングは抜擢だったはず。ああ、この2人はスター候補なんだなと私は理解した。
もうひとつ、『男役の衣装の下にはあんなに細いウエストの華奢な体があったんだ』と、いまさらながらちょっとした感慨があった。
朝海ひかるの名はこのときインプットされた。
そのあとも、真矢みき主演の「ブルースワン」の1シーン。ダンスの場面で、朝海ひかるがターンしたときの一瞬の形が大変美しく、強く印象に残った。
そんなこんなで、私は朝海ひかるはずっとスターだと思っていた。
でも、雑誌のインタビューなどを読むと、なんだかずいぶん自己評価の低い人だなぁという印象を持つ。自信なさげに感じる。
どうしてなんだろう?
そもそもその美しさだけで充分なのに。どうしてあんなに美しいんだろう? 少女まんがから抜け出したよう。
CGで合成しなくても、朝海ひかるのまわりはキラキラ感でいっぱいだ。
(オフの顔はあんなに地味なのに。化粧がうまいのか? ちなみにジャニーズの松本潤に似てるね)
ダンスも美しい。動きがシャープで、かたちが美しい。何がどういいと具体的には言いにくいが、結局センスがいいんだと思う。
こむが出ているので、雪組の東京公演を見に行った。「追憶のバルセロナ」と「ON THE 5th」。
こむの地方公演のちらしを見ながら「楽しみだねー」と歩きながらにこにこしてしまう私。
こむ見たさに出待ちまでしてしまった私。
なんて言ったらいいのかなぁ。こむって、かわいい、かわいいって言われるけど、かげりも濃いんじゃないかなぁ。
冷たく硬質な感じではあるよね。体温低いっていうか。
こむが次期トップと知ったときは「え? もう?」みたいな意外な感じもしたが、「ああ、いいかも」と思った。
ぜひぜひ、そのダイヤモンドの輝きのような美しさを堪能させてほしい。