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プラハ 紅葉が社長ならこう言うぞ
ああ、谷くん、わざわざ来てもらって悪いね。
実は「プラハの春」のことなんだがね、これを上演しようと思った根拠は何なんだね?
ん? 上演する意義のある作品だからってわけかね。ふうん、なるほどねぇ。
谷くん、我々は宝塚歌劇をビジネスとしてやっていることはわかるね? また、宝塚はエンターテインメント、ひらたく言えば娯楽を提供する客商売だってこともわかってるよなぁ。
つまり、君が何を上演したいかではなくて、お客は何を見たいのかが最優先なんだよ。
君の目には宝塚の客は、のんきな女こどもに見えるかもしれんが、そんなことはないんだぞ。彼女たちだって、さまざまな人生をかかえてつらいことだって、いろんなストレスだってあるんだ。
そんな彼女たちが、宝塚を見ているひとときだけはいろんなことが忘れられる、見終わったあとも満足感でいっぱいになって元気になって帰ることができる、そのために来てくださるんだぞ。
だいたい、若い女性の給料ってどのくらいなのか知っているか? まぁ、君の3分の1くらいだよ。そんな給料の中から高いチケット代を払ってくれるんだ。
その気持ちに応えられる作品を提供し続けなければならんのだよ、我々は。
そのような努力を重ねていなければ、早晩、客に見放されるってもんだ。これまで、1つの公演を2回見に来ていた人が、「おもしろくないから」って1回しか来なくなったらえらいことだぜ。半減なんだからな。チケット代だけじゃない、本も飲食関係もすべてが一緒に落ち込むんだ。
さて、ここからが君に来てもらった理由だ。君は宝塚の観客が「主人公が反体制運動を行った結果殺される悲惨な政治劇」を見たいと思っているのか?
そんな劇を見て、元気に家路につくことができると思っているのか?
なに? 新聞の劇評はよかったって?
あのなぁ、新聞記者ってのは「招待券」で見るんだよ。ただ券でな。彼らは仕事で見てるんだよ。客じゃないんだ。
たとえ3500円だって、金を払っている客は評価が100倍きついんだぜ。
なんだと? このごろのトップスターは集客力がない?
それなんだよ、君らの甘えた仕事ぶりの根源は。いつだって、逃げ道を作ってみずからの責任を他人に転嫁しようとするところだ。
はっきり言って売れない商品、商品っていうのは生徒のことだが、それを売れるようにプロデュースするのが君らの仕事じゃないか。
谷くん、君はいつも「虐げられた民衆の味方」「抑圧者に対して戦う民衆に寄り添う」という姿勢を示してきた。
いいだろう、それは君の主義主張だものな。しかし、宝塚の舞台でそれをやったって、「虐げられた民衆」にとってはなんの力にもならないぜ。
君が本当に自分の思想信条を貫くつもりなら、こんな安全地帯にいるのではなく、自分の自腹を切って自分の劇団を立ち上げ、全国を公演して回るべきなんだよ。
「昔の社会主義は極悪非道でした」っていう劇を思う存分やればいいだろう?
ピンポイントをねらってミサイルが飛ぶ時代に、歌うたって秘密警察を撃退するっていう歴史観の劇をやれよ。君の信条を貫けよ。
いい加減に「傍観者」であることをやめて、行動したらどうなんだね。
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