09/06
新・軟禁7日間



朝は不意に訪れた。見ると部屋の入り口(病室の入り口ではなひ)に可愛い顔ではないがかわいらしい看護婦さんが入り口のカーテンを開けようとしているところだった。それを見ながら高校時代に3m以内に見知らぬ気配があると目覚める訓練は今でも生きていると感歎してみるのも役立ち度との対比でそこはかとなく面白い。
兎も角、如何なる用かと思えば採血なのだそうだ。そーいえば夕べ高見さんから朝採血するから晩飯以降何もくうなと言い渡されたよーな気がするが何も朝7時で無くてもええんでない? と思うものの起床時間は6時なので「眠いからヤダ」とガキのようなことも言えず無下に追い返すわけにもいかず大人しく右腕を差し出し今将に血を抜かんとする瞬間を見物しようと目を輝かせていると看護婦さんは突然一言「あ、失敗しちゃった・・・」やむなく左腕で採血したが朝もはよからこれはやめてほしいと思うのは・・・以下略。

朝飯は時間通り8時に支給された。一応大盛りらしいがさすが病院食、普通に大食いの人間には余りにも少ない量である。しかし文句を言ってはいけない。私は隔離される身であり逆鱗に触れると以後飯が出てこなくなるのは困るし、火曜に雑誌の買い出しをお願いできなくなってしまうのも困るのだから。
9時になると昨夜のイメクラ風看護婦さんが今度は普通の看護服で体を拭く為のホットタオルを持ってきてくれた。名目上回診の時間なのにここまであからさまでええんじゃろか。そう思いながら頭を洗っている俺も相当いい加減だ。入浴時の洗髪は禁じられているのに。
結局回診は10:30分頃にトップを除く担当意志軍団勢揃いで行われた。といってもやはり簡単な問診と薬の塗布と保護ガーゼの交換だけだった。もうちょっと面白いことがあってもええんでないかと不謹慎なことを考えながら西部警察の再放送を見ながら惰眠を貪ってみた。
昼食が終わって暇をもてあましていると看護婦さんが飛び込んで来た。どうやら橋口さんというらしい、わりとかわいくてかわいらしい人である。何事かと思えば、これから耳鼻科の診察に行くので案内してくれるという。事前に耳鼻科の診察が「ある」と聞いていたし一応隔離の身なのだから往診だと思っていたので少し驚いてみる。
耳鼻科に行く為には入院している東館から全5車線の一般道を挿んで100m程離れた本館まで行かねばならない。歩いていくのかと思いきやいきなり地下に行くという。地下というとどうしても怪しい響きに胸弾ませていると着いたところは地下駐車場である。ここから送迎バスなる特殊ワゴン車が運行しているとのこと。これに揺られていざ耳鼻科に向かうのである。乗るときに低い天井に頭を強かにぶつけて痛かったけれども。

耳鼻科受付けでバス乗り場で渡された予約表を渡す(東館と本館は別病院扱いのため)と先に聴力検査を受けるよう指示されたので行ってみると、ここも検査士は若いお姉ちゃんだった。つくづく若いお姉ちゃんの多い病院である。そしてよくわからない検査をいくつか受けて受付けに結果を提出すると次は診察なので中待合で待つよう指示される。後はひたすら待つだけだが、この待ち時間が異様に長い。看護婦さんが入れ代わり立ち代わり「もうちょっと待ってね」といってくれるのでその間に色々と見聞していると、どうやら私が診察を受ける部屋で簡易手術が行われているらしい。仕方なく隣で2人の男性が点滴を受けながら話す内容を聞いてみると「担当の先生が急にどっかへ行っちゃってねぇ。代わりの先生にリハビリするようにいわれてやってたら元の先生が慌てて飛び込んで来てやめるようにいうんだよ、まだ早過ぎるって。おかげで3ヶ月くらい長引いちゃったよ。」等と恐々とする話をしていたかと思うと件の診察室から出てきた先生は衣服に血をべっとりつけた状態で「あれってどこにあったっけ〜」と看護婦さんに聞きながら子供も数人いる中待合廊下を闊歩していく。
そして再びしばらく待って漸く診察が始まったと思うと耳の中を覗いて鼻にファイバースコープを突っ込むだけの2分程度の診察時間でバスに乗りこむことになってしまった。

病室についてみると既に15:30分を過ぎている。部屋を出たのが13時前後だから2分の診察のために2.5時間近く費やしたことになる。その空しさを反芻していると食卓の上にシュークリーム風のケーキが乗っているのに気がついた。一体誰が置いたものか思案していると橋口さんが再び検査の案内に来てくれた。そして部屋の入り口に立ちケーキに気づくと、その可愛らしい声でこう言ったのだ
「あ、おやつが来ちゃいましたね。」
ゑ? おやつが出るのか!? うおぉっ、さすが個室だっ!!!
しかしケーキよりも先に検査を片付けねばならない。一応ケーキと検査どちらを先にするか問われたが、若い娘さんが案内に来てくれたにも関らずケーキを先に食うのは失礼というもの。いや、若くなくても男でも失礼だが、泣く泣く検査に行ってみると前日に予約が入っていなくててんやわんやした検査である。しかも胸部X線写真である。まさか影でも見つかって再検査かと訝しむ私を待合に座らせ橋口さんは検査の手続きをする。が、今回も何やら慌てている。やがてこちらに向き直ると申し分けなさそうに「昨日撮っているので、もういいそうです。」という。こんなに連携できていなくていいのか。
病室に戻りケーキを貪りながら漸く昼食後分の点滴が始まり、終わった頃にはもう夕食である。そして夕食が終わって一息つけば再び主治医補佐A先生が点滴を持って様子を見に来てくれた。有り難いことであるが、前後に先生が隣を訪れた音はしていない。訪れたならばドアが閉まる音が聞こえるはずである。また、なぜ態々先生が点滴を持ってくるのか。の疑問は数日後何となく解決することになるが、このときは更にハゲるのも嫌なので入院したてだから様子を見に来てくれるだと思うことにして、夜中にみたい番組があるのでとっとと眠ることにした。

こうして2日目は終了した。
もちろん夜中の看護婦さんの見回りには「もうすぐ眠れると思います〜。」と言い続け4時間ほどテレビ三昧だったが。



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