04/12
九十九の後の一物語



この部屋はどうもおかしい。ひゃっひゃっひゃ、じゃなくて、どうも何か棲んでいるらしい。元々気持ち程度に霊感はあるらしく金縛り、通称金氏は特にこの部屋に限った話ではないし、布団の中から「うにょん」と手が出てくるなど視覚に訴えてくることも今までの部屋ではそれはそれでそれほど珍しいことではないのだが、今回は一味違い難儀なことに聴覚に訴えてくるのである(そういえば味覚臭覚に訴えてくる話が少ないのはどうしてだろう)。

初めに気がついたのはドアの開閉音。元々しっかり閉めなければわずかな風で空いてしまうドアだが、しっかり閉めているにもかかわらず深夜に開閉音が聞こえることがある。安普請のアパートだけに隣の音が聞こえただけの可能性はあるが、「ぎぃぃぃぃぃ」の様な人間の開閉にしては妙に緩慢で且つ遠くから聞こえる音でないのだが、家の中を見回すと扉はしっかりと閉まっており風で揺れるはずがないのだ。
これだけなら聞き違いと思ってしまえば良いのだが、PC用スピーカーから女性のつぶやき声が聞こえてきたのだ。確かにパソコン2台モデムスピーカーと電源は入っていた。CD-ROMドライブには女性ボーカルの音楽CDも入っていた。ついでにCDを流しなが寝たのでCDプレイソフトも起動していた。だが、だがしかし聞こえたのは起きて2時間も過ぎた目の冴えた時間で、しかも聞こえた時点ではCDプレイヤーも常駐しているだけで動作はしておらず其の他音を鳴らす類のアプリケーションも起動していなかったのである。加えて言うならば調べてみたところ同じような長さ、声、話し方の音声ファイルは無かったのだ。ひー。
しかしまだ聞き違いや電気ノイズの所為だと思ってしまえば納得できなくはないのだが、追い打ちをかけるようにテレビから声が聞こえるのだ。テレビ見てりゃ声が聞こえたなんてオチじゃなくて、まじで。電源プラグはさすがに差したままだが電源は常にテレビ側で切っているのでタイマー機能すら働かないはずなのに、ブツブツと何か言っているやはり女性の声が聞こえることがある。これも遠くの話し声という感じではなくテレビの近くで何かしているときに、何か聞こえるのでふと手を止めると、それなりに若そうな女性のつぶやき声だった。一度といわず二度三度、昼夜を問わずふと聞こえてくるところが何ともいえない。

そういえば前の住人はこの家に寄り付かなかったようだ。
そういえば猫は耳を立てて部屋の隅をじっと見ていることがある。
この家は本当に大丈夫なんだろうか。
果たして無事に2年の契約を全うできるかどうか・・・。
不安だ。


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