07/23
最強の刺客との結末



あの日あの時あの時間。どの日どの時どの時間? ・・・はて?
とにかく私にとって最強の出会いである。相手の名はTQ-640、通称スリープバスターという。G-SHOCKなるおもちゃで世界の頂点に立ったカシオ計算機製作の目覚まし時計という一族の、私がかつて出会ったことのない最強の刺客である。この一族は我々の平穏な眠りを妨げる許すべからざる族だと思うのは私だけではないだろう。

ハンバーガー屋の正面の店でワゴンセールのような形で売られていた哀しい存在だったが、スリープバスターは素晴らしかった。買い求める前に試しに鳴らしてみたが、喧しさこの上ない日曜昼間の秋葉原だというのにはっきり聞こえる、というかうるさいといっても多少大袈裟な程度で済む大音量ベルとスヌーズを搭載し、加えて2段階音量調節機能や集光樹脂、夜間時計を見るためのライトも付いている。まさに豪華絢爛絢爛豪華。至れり尽くせりといった所だろう。サイズが大きいのが多少難アリといったところだが、それを補って余り有る能力である。その気になるお値段は2980円。奥様テレビショッピングやテレゴング等では拍手喝采を浴び賞賛の嵐巻き起こること間違いないだろう。誠に素晴らしい。

その理想的といっても過言ではない素晴らしい目覚まし時計を見つけた私はというと、狂喜乱舞したわけではなく通りすがりに「目覚まし時計」を見かけたので「まぁこれでいいか」程度の気持ちでしかなかった。加えて店のおねぃちゃんが「黒と緑がありますけど、どちらがいいですか?」との問いに「どっちでもいいんだけどなぁ」と失礼な言い草で答えたのであった。

さて、帰宅して実際に鳴らしてみたところ自分の認識不足を恥じ土下座して侘びねばならぬと思ったその威力は「・・・なるほど、バスターだ。」と感嘆したほどである。「・・・」はあまりの音の大きさに声をなくしたと思っていただきたい。静けさ漂う朝ならば三件隣から苦情をもらっても文句は言えないほどの、それはそれは素晴らしい音量であった。「鳴らす」と意識していても、いざ鳴ってみると「お願いだから鳴らすな。」と懇願したくなるほどの音量である。試してみたところ、音量はMINであるにも関らず2部屋隣の兄が「めちゃめちゃうるさい」と止めに起きてきた程だ。全くもって「素晴らしい威力」と言うほかないではないか。この素晴らしい威力をもってすれば、私が寝過ごすことはなくなるだろう。

しかし、甘かった。残念ながら私の頑固な睡眠はそんなに甘くなかった。
けたたましくスリープバスターが鳴る翌朝も、私はただただひたすら、魚河岸のマグロのようにふとんに横たわり惰眠を貪りつづけたのであった。



TOPページへ戻る