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大学の先輩であるS氏は伝説の人物である。と言ってもサークル内の話だが、ゴミや本で立体的な床を造形し、「俺はMacが好きだ」と力説しているにも関らずPC-98を購入し98ならではの趣味に走る(買うよう唆したうち一人は私なんだが)等、数々の伝説を残し引退した人である。今は学業の傍ら大学食堂で「そば屋のエース」として残る大学生活を過ごしている。 そのS氏から、ある夜半に一本の電話がかかってきた。 「フロッピーの調子が悪いんだけど、どうしたらいい?」 S氏の自宅は大学から徒歩10分であり、私の自宅は徒歩で通えば3〜4時間かかる。電車で行ったとしても35分もかかるのだから、体力というものには縁のない私に再び外出する元気などあるはずもない。とりあえずケーブル類の確認という極めて常識的な解答で、後日お宅に伺い原因を調査することと相成った。 S氏の自宅につくと、驚いたことに床が見えるのである。先に到着していたA氏と共に掃除をしたらしい。別にそれはどうでもいいんだが、症状は「Windows95でFDDを読むとデバイス不良と言われ、DOSではルート直下のディレクトリしか読めず、子ディレクトリを読むとエラーが出る。クリーニングもしたんだけど。」と言うことである。ケーブルに異状がなければ、新しくFDDを買ってくるか若しくはメーカーに修理を依頼する以外に手がないことは態々足を運ばずともわかっていた。私が足を運んだ目的は、壊れたFDDの分解するという欲望である。 嬉々としてFDDのカバーを開けたところ、埃がほろほろと落ちてきた。一吹きすると更に大量の埃が吹き出した。擬音語にすると「ぼふっ」っと表現するのが適当であろう。なかなか希有な量である。となれば不調の原因は埃だと思うのは人の道というもの。念入りに埃を吹いたのち試してみた。しかし、やはり動かない。そうであれば私のめくるめく分解欲は怒濤のように荒れ狂い、FDDに襲いかかるのである。と言っても、ドライバーだけでは分解できないのが少し哀しい。 再びカバーを開けヘッドを動かして遊んでいたところ、妙に簡単に動くことに疑問を持った。「ヘッドってこんなに簡単に動くもんですかね?」S氏、A氏の意見は共に「いや、そんなに簡単に動かないんじゃない?」と言う。確認のために大学から拾ってきた別のFDDで試したところ、ヘッドはかなり重い。 「そうか、機械的な問題だったんだな。これじゃ買ってくるしかないなぁ。」「でも原因は何だったんでしょう?」「何回もSCSIボードの抜き差ししたからじゃない? 思いっきり抜き差ししてたから、その衝撃で壊れたのかもしれないね。」 「それにしてもほんとに簡単に動くなぁ。」S氏はスカスカとヘッドを動かしながらしみじみと呟く。I氏も手に取り「ヘッドが動かなかったから親ディレクトリしか読まなかったんだね。」 結局FDDを買ってくることで一致したが、やはり諦められないのかS氏はスカスカと動かしながら言う。「もう一度試してみよう。」おもむろにむき出しのままFDDを接続し電源を入れた。「あっ! 動いた!!!」 我々は驚愕した。白目剥いてひっくり返るほどではないが、驚愕した。「動いてるっ! 少しずつだけど動いてるよ!!!」 喜びが一段楽したところでI氏が我々のエサとともにやってきた。 「結局原因は何だったの?」I氏が問う。 「何だったんだろうね?」「埃じゃないの?」「挟まってた埃が動かしてるあいだに取れたんじゃないですか?」「なるほど、この部屋ならではの原因だったわけね。動くまでの過程を見たかったなぁ。」「カバー外して剥き出しで使ってたのもまずかったかなぁ。」「やっぱり1ヶ月に1回くらいはクリーニングしなきゃいけないってことだね。」 そうして我々はポテピリバーガーを頬張るのであった。 |