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忘れられない言葉



誰にでも忘れられない言葉があるだろう。もしくは何かの折りに必ず思い出す台詞でもいい。感銘を受けた台詞であろう。もしかすると別れ際に言われた台詞をしぶとく覚えてるのかもしれない。
かくいう私にも忘れられない言葉がいくつかある。CMで用いた宣伝文句であるから「言葉」というのは少々語弊があるかもしれないが、それをを思い出す度に「阿呆か俺は」「俺はどうしようもない阿呆だな」と思ってしまうのだ。別にどうしようもない阿呆な言葉ではなく、しごく真面目な言葉である。少なくとも使った会社はしごく真面目に考えた文句だと思われる。そうでなければ宣伝文句として使わないだろう。その言葉とは
「垂れない塗料はニッペのトライ」
というものだからだ。テレビをよく見る人ならば一度ならず聞いたことがあるだろう。横一文字にペンキを塗って、従来品との垂れ方を比較したCMに使われた言葉である。

「垂れない塗料はニッペのトライ」
CMに用い新製品を明示し特性を明確に宣伝する名文句であるし、別段妙に聞こえる言葉でもないだろう。しかし思い出す状況によっては非情に困った言葉になるのである。

例えば、ドラマを見ている時。
外は雨が降っていて、窓には滴がついている。憂鬱な顔をしながら人が窓際に立つ。別に男性でもいいんだけど、こういうのは美しい女性のほうが絵になるかもしれないね。嗚呼、シリアス。しかし私は雨の滴を見るとこんなときでも思い出す。
「垂れない塗料はニッペのトライ」

別の例を出そう。
宇宙からの侵略に対し抵抗する二人が敵の敵に通信を行った直後に会話する。 「毎日信号を送信して援軍を待つの。2,3年はかかるかもしれないけど。」 「そんなにも待つのかい?」 「それでも味方が来るとは限らないわ。結局は孤立無援かもしれない。」 「でもまずは俺達が勝ったよな。」 「ええ。でも戦いはこれからよ。」 二人は互いにうなずきあい、手にしているスプレーでしっかりと壁に「V」を、Victoryの「V」を描き、再びうなずきあった。
「垂れない塗料はニッペのトライ」

どんなシリアスな場面でも、どんなに哀しいシーンでも、滴が、液体が壁面から垂れていたら思い出す。いや、思い出してしまう。
刺されて血が垂れていようが柔肌に水が滴っていようが「垂れない塗料はニッペのトライ」

・・・どうしようもねぇな。


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