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漢方診療Q&A                HOME    読み物index 

患者さんからしばしば受ける質問、漢方診療を受けるにあたって知っておいていただきたいことなどをまとめました。
q

質問

Q1)風邪の時に葛根湯を買って服用してみたが効きませんでした。
Q2)漢方はどんな病気にも効きますか?
Q3)漢方薬が特に得意にしている病気はありますか?
Q4)どんな患者さんが多いですか?
Q5)西洋医学の薬と併用しても大丈夫ですか?

Q6)ステロイド剤や降圧剤を止められますか?
Q7)煎じ薬とエキス剤はどう違いますか?
Q8)値段はどれくらいですか?
Q9)効果が現れるまでに長くかかりますか?
Q10)一度悪くなってから治ると聞きます、本当ですか?

Q11)良くなれば漢方薬を止められますか?
Q12)副作用はないですか?
Q13)本場中国の漢方薬の方が良いですか?
Q14)残留農薬の危険は無いですか?
Q15)体質改善できますか?

Q16)自分がどんな体質や証なのか教えてもらえますか?
Q17)生活上注意することはありますか?
Q18)漢方について勉強してみたいのですが、お勧めの本はありますか?
Q19)遠くて通院できないのですが、薬を送ってもらえますか?
Q20)診察を受ける時に用意するものはありますか?

A1
A1)風邪の時に葛根湯を買って飲んだことがあります。全然効きませんでしたが、、、。
 風邪といえば葛根湯ばかり有名ですが、風邪によく使う漢方薬だけで20種類くらいはあるのをご存じですか?

 本来の漢方治療では、風邪ならこの薬というように病名で薬を決めるわけではありません。暑がっているか寒がっているか、汗をかくかどうか、便通は、食欲は、風邪をひいて何日目か、年齢は、おなかや脈を触った感触などなど、風邪とは関係がなさそうに見えることまで含めた情報を総合し、患者さんのその時の状態を漢方独特の概念でパターン化し(このパターン化された認識を証=しょう=と呼びます)薬を使い分けるのです。このあたり、「生薬歳時記」の「葛根」の項にも書いていますから、興味があればお読みください。

 葛根湯が効かなかった風邪、もしかすると他の漢方薬なら少しは効いたのかもしれません。一般に、ひきこんでしまった風邪は、漢方でも現代医学でもやっかいで時間がかかることが多いものです。しかしかかり始めの、風邪をひきそう、くらいの軽い症状が出始めた時期に適切な漢方薬を服用すると、実に早くよく効き、1、2回の服用で、風邪と思ったのが勘違いかと思うほどきれいに治ってしまうことも、珍しくありません。
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A2
A2)漢方はどんな病気にも効きますか?

 どんな病気にでも漢方をお勧めするわけではありません。漢方が効かないというより西洋医学的治療を優先したほうが患者さんのためになる場合が多い病気は、少なくありません。いくつか例を挙げて説明します。

 高血圧や糖尿病に対して、漢方の降圧剤、漢方の血糖降下剤と言えるような、確実に血圧や血糖を下げる漢方薬は残念ながらありません。現代医学が生み出した降圧剤や血糖降下剤、インスリンの注射剤などは、効果が確実で上手に使えば十分安全です。効果が不十分・不確実な漢方薬に頼る理由は、あまりありません。コレステロールや中性脂肪が高い高脂血症、尿酸が高い高尿酸血症にもほぼ同じことが言えます。

 肺炎や腎盂腎炎などの重い細菌感染症に対しても、漢方の抗生剤と言えるような漢方薬はありません。心筋梗塞の発症後間もない急性期や、急いで手術を必要とする癌なども、漢方を治療の主役と考えるのは、適切ではありません。

 しかし以上挙げたような病気にも、漢方の出番が無いわけでは決してありません。たとえば当院で治療中の患者さんの実例では、糖尿病と高血圧と高脂血症を合併した方で、インスリンも降圧剤もコレステロールの薬も使いながら、漢方薬を併用することで、合併症としての腎不全の進行・透析導入を遅らせている例があります。癌の手術前、手術後には、体力増強、回復促進と再発予防のために漢方薬併用がお勧めです。

 当院では、患者さんの全体を見るという意味で漢方の目を生かしつつ、治療手段としては漢方薬だけにこだわるのでは無く、場合によって現代医学の薬を積極的にお勧めすることがあります。両方の良さを共に生かすことこそ患者さんのためと考えるからです。

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A3
A3)漢方薬が特に得意にしている病気はありますか?

 Q2の答えとちょうど反対に、西洋医学的な治療で副作用などの問題点が大きく残されている病気や、西洋医学的には病気として扱われないような状態などは漢方の得意分野、ということになるでしょう。例を挙げて説明します。

 気管支喘息やアトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫性疾患では、西洋医学的にはステロイド剤や免疫抑制剤による治療が行われます。これらは副作用も心配しながら使わなければいけない薬なので、患者さんによっては副作用のために治療の継続が難しい、あるいは病気が命に関わるほど重くないから治療はしないと言われて症状に苦しむ、といった場合が出てきます。こうした際には、漢方薬を単独あるいは西洋医学的な薬と併用することで、治療がうまく行く場合が少なくありません。子供や高齢者、妊娠中の方などは、特に薬の副作用に慎重に対処する必要があるので、漢方薬の併用は有力な手段になる可能性があります。

 「西洋医学的に病気として扱われないような状態」の代表例は、風邪をひいてばかりいる、すぐに疲れて寝込んでしまう、すぐおなかが痛くなる、体が冷えて困る、こうした症状で病院で検査を受けても何も異常が無いと言われる、そんな方たちです。

 この他、無月経、月経不順や、月経時の腹痛、頭痛、月経前の心身の不安定や不妊など女性特有の生理に不随した諸問題に対しては、漢方は安全で有効性が高い治療手段だと思います。

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A4
A4)どんな患者さんが多いですか?

 数年前に当院の患者さんの統計を取ってみたことがあります。それによると、男女比は2対8で女性が圧倒的に多いです。漢方診療をしている医療機関に共通の傾向のようです。年齢層は1歳から90代まで、小児科を標榜していませんが小児も1割程度を占めています。

 疾患別では、一般内科領域では、高血圧、高脂血症、糖尿病。消化器領域で過敏性腸症候群や機能性胃腸症、潰瘍性大腸炎やクローン病など。呼吸器領域で気管支喘息や慢性気管支炎など。腎・泌尿器領域で慢性腎炎や慢性腎不全、反復性膀胱炎など。内分泌領域で甲状腺機能亢進症・低下症など。膠原病・リウマチ領域としては、関節リウマチ、SLEなど。

 内科以外では、婦人科領域で、子宮筋腫、子宮内膜症、月経困難症、月経前症候群、不妊症、不育症、更年期症候群など。皮膚科領域で、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、にきびなど。耳鼻咽喉科領域で、慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎など、広い範囲の疾患を拝見しています。

 ほとんどの方に漢方薬を処方しており、煎じ薬(生薬)とエキス剤の比率は、ほぼ半々程度です。しかし、必ずしも漢方薬「だけ」を処方しているわけではありません。内科疾患に関しては、降圧剤や血糖降下剤、インスリン、甲状腺剤、ステロイド剤などの西洋医学的な薬も、必要に応じて当院で処方しています。内科以外の領域や、内科でも特殊な難病に関しては、必要な診察・検査が当院ではできない場合が多いので、必要に応じて他の医療機関と併診の形をとっています。

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A5
A5)西洋医学の薬と併用しても大丈夫ですか?
  一般的には問題になる場合は少ないと言えます。むしろ、抗がん剤の副作用を軽減するために漢方薬を用いたり、漢方薬を併用することでステロイド剤など副作用の強い薬を少量に抑えたりと、併用によって治療がよりうまくいく場合も多いのです。

 ステロイド剤や降圧剤、血糖降下剤、抗うつ剤などは、急にやめると危険ですから、漢方薬を服用するからといって、自己判断で服用を止めたりしては、絶対にいけません。

 漢方と西洋薬を併用してはいけない場合の代表は、慢性肝炎の治療です。インターフェロン療法と小柴胡湯はどちらも慢性肝炎に対する効果が証明されているのですが、併用すると間質性肺炎という重い副作用を起こしやすいとされ、併用禁止になっています。

 また、副作用の話(Q12)で出て来る甘草の副作用が、高血圧の治療に使われる利尿剤の一部などいくつかの西洋薬によって増幅され、現れやすくなることがあります。ですから他の医療機関での治療内容、服用している薬などは、ぜひその都度できるだけ詳しくご報告ください。

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A6
A6)ステロイド剤や降圧剤をやめられますか?

 副腎皮質ステロイド剤が内服や注射で使われるのは、生命に関わる重い膠原病、自己免疫疾患、ある種の癌など、難病の治療です。数々の副作用は承知の上で、それでもこの薬を使わなければもっと深刻な状態になる危険性が高いから使われるのです。当院でも、ふだん漢方薬で安定している難病の患者さんが悪くなった時期には、処方することがあります。

 副腎皮質ステロイド剤を内服や注射ではなく、外用剤として、つまり皮膚への軟膏塗布、鼻や気管・気管支に吸入、目に点眼などで使う場合には、内服・注射と比べて副作用の危険ははるかに小さいと言えます。ですから、アトピー性皮膚炎などの湿疹、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎などの治療の場合には、命に関わるほど深刻な状態でなくとも、有力な手段として、外用剤が使われるのです。当院でも、積極的に勧めることがあります。

 ステロイド剤を減らしたい、止めたい、と考える患者さんはたくさんいます。でも減らすこと、止めることを、漢方治療の目的にするのには、賛成できません。治療の目的は、より健康な良い状態を保つことです。そのために必要ならば、ステロイド剤は使うべきです。

 漢方治療を併用することで、結果的にステロイド剤の必要量が減り、時には必要でない時期が出てくることは、あります。自然にそうなるのを、気持ちに余裕をもって、待ちましょう。ステロイド剤は、目の敵にする薬ではありません。うまく使えば、非常に強い味方です。

 降圧剤も、一生飲むのは嫌だと言って止めたがる人が多い薬です。血圧をコントロールする目的は、脳梗塞や心筋梗塞など血管病の予防です。血圧が少々高くても日常生活には困りませんが、脳梗塞や心筋梗塞を起こして困ってからでは、取り返しがつきません。私ども医師はそういう人を何人も見ているので、どうぞ止めないでください、とお勧めし、お願いするのです。別のところにも書きましたように、降圧剤の代わりになる漢方薬はありません。漢方薬を服用していたら、全体的に体調が良くなって、降圧剤が少なくて済むようになることは、時にはありますが、お約束できるような確実性はありません。

 漢方薬は、現代西洋医学の薬の代替ではありません。強力な西洋医学の薬も、穏やかで全体的な漢方薬も、得意なところはそのまま生かし、不得手なところは補い合うような形で、両方をうまく使うのが、一番患者さんのためだと考えています。

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A7
A7)煎じ薬とエキス剤はどうちがいますか?
   漢方薬の多くには「○○湯(とう)」と名がついています。「湯」は中国語で「タン」、中華料理ならスープを意味します。つまり漢方薬は草木の皮や根や実を煮込んだ薬草スープ、漢方薬の名前は、料理の名と同様に、材料と分量と作り方のレシピを示しているわけです。たとえば葛根湯は、葛根、麻黄、桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜という7種類の生薬を決まった分量合わせて煮込む薬草スープです。

 漢方薬を、このような本来の姿でお飲みいただく場合、薬局では一日分ずつの生薬を大きなティーバッグのように包装した形でお渡しします。患者さんは一日一度、これを水から30分から1時間程度煮込み、できたスープを二度または三度に分けて服用します。
 エキス剤と呼んでいるのは、上記のインスタント版です。薬品会社の工場で大量に作ったスープを、インスタントスープやインスタントコーヒーを作る時のように水分を飛ばして粉状にし、一回分ずつ袋詰めしたものです。

 煎じ薬とエキス剤の関係は、手料理とインスタント食品の関係から類推できるとおりです。手料理は、手間ひまかかるが内容の加減は自由自在、上手な人の手にかかれば素晴らしい一皿になる代わりに下手をすればひどい物にもなります。インスタント食品は、簡単で質は一定、ひどく不味くはならないが素晴らしい手料理に及ばす、あまり中身の加減はできません。
 漢方薬もこれと同じ。同じ葛根湯を煎じ薬とエキス剤で比べれば、煎じ薬の方がよく効きます。そして、その人に合わせて内容を調節しようとなったら、煎じ薬でないと困難です。エキス剤は「つるし」の服、煎じ薬は「オーダーメイド」の服という比喩もできるでしょう。
 煎じ薬の欠点は、手間がかかること、持ち運びしにくいこと、家の換気が悪いと漢方薬の匂いが家中に立ちこめてしまうことです。

 当院では、煎じ薬も、エキス剤も、保険診療で取り扱っています。値段はあまり変わりません。どちらにするか、患者さんの生活事情や希望を考慮して、相談して決めています。どちらか迷う方には、煎じ薬とエキス剤を1週間ずつ服用してみることをお勧めしています。


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A8
A8)値段はどれくらいですか?

  漢方=高価のイメージから来る質問と思います。

 漢方薬は、大量に合成できる化学物質ではありません。工場で生産されるエキス剤も、原料は山野で取れる薬草(鉱物や動物もあるが、ごく一部)です。薬草の中には栽培されるものもありますが、栽培に何年もかかる物、栽培ができず天然物の採取に頼っている物も多くあります。既に採りすぎや自然破壊で資源枯渇が心配されている薬草も少なくないのです。

 原材料の希少さ、栽培や採集にかかる人件費を考えると、漢方薬の値段は、上がるべき要素が大きいと言えます。にもかかわらず、保険制度上の漢方薬の値段(薬価)は下がり続けているのです。これは大きな問題で、私は漢方薬の薬価はもっと高くあるべきだと思っています。私だけでなく、事情に詳しい人の多くがそう言っています。

 巨視的な話が先行してしまいました。実際に患者さんが支払うお金はいくらくらいになるのか、という話をしましょう。

 ひと言で「漢方薬」といっても、安いものと高いものの差がかなりあります。

 まず安い例です。生理痛などに使う桂枝茯苓丸のエキス剤一種類を2週間分処方した場合、保険診療で3割負担の方なら、薬局でお支払いいただく自己負担額は約750円です。高い例では、柴苓湯(さいれいとう)のエキス剤1週類を2週間分処方した場合、3割負担の方で、自己負担額は約2500円です(エキス剤のメーカーにより若干違いがあります)。比較のために、代表的な降圧剤であるノルバスク5mg1日1錠を2週間分処方した場合、自己負担額は780円になります。

 煎じ薬は高いと思っている方が多いですが、煎じ薬の方がエキス剤よりも安い場合もあり、高い場合でも差は大きくありません。
 
 ひと言で漢方薬といっても、値段がかなり違うことがおわかりいただけたでしょうか。値段の違いは、主に原材料の価格の違いによるもので、高いほど良い薬というわけではありませんので、御注意ください。

 尚、当院は院外処方ですので、当院でのお支払いに薬代は含まれず、薬の内容による支払額の違いはありません。

 初診時に検査や書類発行は行わず、診察と処方のみの場合の当院での支払いは概ね下記の通りです。(3割負担)

     保険診療分1020円〜1080円
     初診予約料(保険外)2000円 

 参考になりましたでしょうか?安いとは言えないかもしれませんが、そんなに高いものでもない、と思っていただけるのではないでしょうか? 

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A9
A9)効果が現れるまでに長くかかりますか?
 必ずしもそうではありません。風邪のひきかけに漢方薬を使って、うまく薬があっていれば30分ほどで効果が実感できるはずです。月経痛や月経前症候群に漢方薬を服用し始めて最初の月経で、ずいぶん楽になった、という実感が得られる例も珍しくありません。

 また、一番治したい症状には変化が無くても、他に良いところが感じられる場合もあります。たとえば、なんとなく元気に生活できる気がする、なんとなく体が温かく感じられ気持ちが良い、などです。こうした変化は、薬が患者さんの状態に合っている証拠で、後から一番治したい病気や症状が良くなってくる前兆のことがよくあります。

 服用中の薬が患者さんの状態にあっているかいないかは、2〜4週間ほど服用を続けてみれば、ある程度判断できる場合が多いと思います。効果がないと判断がつけば、薬の種類を変更してみるのが定法ですし、患者さんの状態は変わっていくものですから、それに合わせて薬を変更していくこともよく行います。

 効果がよくわからないままに、漫然と同じ漢方薬を長い間飲み続けるようなやり方は、避けるべきだと考えています。
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A10
A10)一度悪くなってから治ると聞きます、本当ですか?

 たとえば麻疹(はしか)の時、皮疹が出るのを抑えるのではなく助けてあげた方が結局早くよくなる。風邪の時も、熱を冷ますのではなくて、早く熱を出してあげた方が早くよくなる。こういう考え方は漢方の中にしっかりあります。そんな場合、一時的にはかえって悪くなったように見えるかもしれません。

 上のような場合とは違い、医師にも予想外の症状変化が起きて驚いたのだが、それがきっかけとなったように、長く続いた病気が治った、というような話は、昔から少なからず伝わっています。これを瞑眩(メンケン・メイゲン)と呼んでいます。これは、予想外であり、短期的な悪化であり、その後急速によくなる、ということが条件です。そして、めったにあることではありません。めったに無いことだからこそ、非常に印象的な症例となり、昔から本に記載されてきたわけです。

 最初の例とも二番目の例とも違うような悪化は、単に薬が効いていないか、かえって薬のために悪くしてしまっただけ、と考えるべきだと思います。

 一般に、一度悪くならないと良くならない、などということは、ありません。

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A11
Q11)良くなれば漢方薬をやめられますか?
 難しい質問です。一般論では答えられません。ケースバイケースというしかないでしょう。実例を挙げます。

 長年生理痛、生理不順に苦しんでいた患者さんがいました。当院に3回受診し、合計一月半分の漢方薬を処方しましたが、それっきり来院しなくなってしまいました。数年後、赤ちゃんを抱いて現れました。「あれっきり、生理痛も生理不順も生まれ変わったように治ってしまい、無事赤ちゃんに恵まれました」と報告に来てくれたのです。止めても大丈夫だった、という例です。

 そういう方ばかりではありません。「大丈夫と思ってやめたら、半年ほど経ったら調子が悪くなってきたので、また薬を処方してください」と受診する方。最初の症状が良くなったら、別の症状が苦痛になって・・の繰り返しで、何年も通う方も、珍しくありません。

 一般的な傾向で言えば、発症してからそれほど月日が経っていない症状は、良くなれば薬を止めて良い。長年苦しんでいた症状ほど、良くなってもすぐには薬を止めない方が良い。現代医学的に慢性病とされ、治癒困難とされる病気のコントロールのために服用する場合は、効果が出ていればいるほど、止めない方が良い。成人病や、老化が背景にあるような病気も、同様。こんなところでしょうか。

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A12
Q12)副作用はないですか?
 残念ながらそうはいえません。漢方薬にも副作用がありうることは是非知っておいていただきたいと思います。

 たとえば食欲がない、もたれる、下痢、便秘、動悸、不眠、尿が出にくい、などはときどき経験する副作用です。原因になる薬の服用を止めればすぐに治ります。

 漢方薬が原因で肝障害が起きることも報告されており、当院でもこの十年で2例ほど経験しています。肝障害は、かなり重くならないと自覚症状がありません。比較的肝障害を起こしやすい漢方薬がある程度わかっていますので、該当する漢方薬を長期に服用する方は、副作用チェックのために年に2回程度は血液検査をお受けになるようお勧めします。

 薬剤性間質性肺炎という生命に関わる副作用も、稀ではありますが、報告されています。幸い当院では経験がありません。薬剤性間質性肺炎では、咳、発熱など風邪と区別がつきにくい症状も出ますが、特に息切れが強く現れ、特有の聴診所見が聴かれると言われています。もし万が一、急に強い空咳と息切れが現れてきたような時は、薬の服用を中止して至急御連絡ください。

 また甘草(かんぞう)という生薬に含まれるグリチルリチンという成分のために、血清中のカリウムの値が下がって不整脈や筋肉の脱力、むくみ、血圧上昇といった副作用が現れることがあります。甘草の服用を止めれば元に戻りますが、発見が遅れると生命に関わることもある怖い副作用です。甘草は多くの漢方薬に配合されているだけでなく、仁丹や調味料などにも使われており、医師も患者も知らぬ間に大量の甘草を服用する結果になっていることがあります。またこの副作用は、いくつかの西洋薬との併用で起きやすくなります。他の医療機関から処方されている薬、薬局などで購入している薬やサプリメント、健康食、常用している嗜好品など、できるだけ正直に申告してください。当院では、この副作用の早期発見の意味もあって、受診時には必ず血圧の測定をしていますが、自宅でも血圧を測定していただくようお願いする場合があります。

 このほかに、附子(ぶし)、烏頭(うず)など、トリカブトの根を材料にした生薬が使われることがあります。ご存じのようにトリカブトは猛毒ですから、煎じ方、服用量などの注意をきちんと守っていただかないと危険なことは言うまでもありません。

 こんなに書いたので、ちょっと心配になりましたか?一般的総括的に言えば、漢方薬は現代西洋医学の薬に比べれば、かなり安全な薬と考えて良いと思います。詳しくみれば、漢方薬の中でも非常に安全性が高く、ほとんど危険は無視して良いようなものと、毒にも薬にもなる、気をつけて使うべきものとがあります。当方はもちろん、そのあたりを十分意識して使っているつもりですが、ご心配がある時には、診察の時に遠慮なく御相談ください。

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A13
Q13)本場中国の漢方薬の方が良いですか?
 中国が漢方の本場、という考えは、少し誤っています。「漢方」というのは、中国から伝わって日本で独自の発展を遂げた伝統医学を示す言葉で、中国で行われている伝統医学と日本の漢方とは、似てはいるけれど、別物なのです。漢方から見ると、中国伝統医学は、何代も前に離れた故郷の本家、というところでしょうか。本家と分家なら本家の方がどこを取っても良いとは限りませんよね?

 中国伝統医学と日本の漢方、どこがどう違うのか。難しい話なので、詳細は省きますが、使う生薬の種類、量、用語、理論、どれにも違いがあります。当院では、日本の漢方を基礎としながら、中国流の良さも一部採り入れた形で診療を行っています。
 中国と日本、明らかに日本が勝っていると思うのは、薬の質の管理、特に安全面での管理です。中国製の「漢方薬」(正しくは、中国製の伝統薬は、中製薬と呼ばれます)では、過去に何度も重大な健康被害が起きています。やせ薬に甲状腺ホルモン剤が入っていた、糖尿病の薬に血糖降下剤が入っていた、などのために、安全な漢方薬と思って服用した人が死亡する事件が過去に何件も起きているのです。日本にも漢方薬の副作用による死亡はありますが、事の性質がまったく違います。

 現在の中国社会と日本の社会とでは、消費者の安全、製品の質の管理に関する企業の責任、製品に関する情報の開示といった基本的な価値観や制度に大きな違いがあります。日本に薬品として正式に輸入されたものは、日本の審査を経ていますが、現地で購入するものは、そうではありません。中国へ行って薬を買う、インターネットで薬を個人輸入する、という行為には、リスクが伴います。責任は、自分で負うしかありません。

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A14
Q14)残留農薬の危険はないですか?
 
 先に結論を書きます。安心して服用していただいて大丈夫です。日本で医療用に使われているものに関しては、です。

 漢方薬の原料生薬の多くは、中国産です。日本にない物、国産品があっても価格が何倍も高く使えない物が多いのです。中国以外にも、ヴェトナムやモンゴルや北朝鮮から入って来るものも、少数ですが、あります。容易に想像がつくように、こうした輸入生薬の残留農薬の危険という問題は存在し、何年も前から対策が取られているのです。

 過去に、漢方薬の材料生薬から農薬が検出されたとセンセーショナルに報道されたことが、何度かありました。健康上危険があるような濃度ではありませんでした。それでも漢方薬のメーカーや輸入業者は、それまで以上に神経と労力とお金をかけ、より安全な生薬の確保と、それに関する情報の公開をするようになりました。

 具体的な情報に関心のある方は、例として下記サイトを参照いただければ、と思います。1)は業界としての取り組みを総括的に開示したもの。2)は、当院で主に使用している生薬の供給会社の取り組みを開示したものです。

 1)日本漢方生薬製剤協会・漢方の安全性について    
 2)栃本天海堂・安全性管理

 漢方薬の材料は、工業製品ではありません。自然の中から産み出されてくる物ばかりです。自然の汚染の問題から100%逃れることは不可能です。食料と共通の問題です。重要なのは、リスクがきちんと管理されているかどうか、です。日本で医療用に使われている生薬は、食料以上にしっかり管理されています。

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A15
Q15)体質改善できますか?
 私自身は「体質改善」という言葉を使わないようにしています。定義があいまいで、あまりに過大な期待を込めて、あるいは過大な効果を期待させるために使われることが多いと感じているためです。

 体質って何でしょうか?

 アレルギー体質という言葉があります。残念ながら、アレルギー反応を起こしやすい状態を完全に消去してしまうような治療は、現在のところ不可能です。漢方治療でアレルギーによる症状を少し起こしにくくなることは、確かにあるようです。十分とは言えないし、確実でもありませんが、試す価値はあるでしょう。体質改善と言えるのかな?

 虚弱体質なんて言葉もあります。疲れやすいとか、風邪をひきやすいとか、そういう状態が漢方治療で改善することは、よくあります。体質が変わったなんて言わなくても、元気になったといえば済むような・・。

 がん体質、肌荒れ体質、肥満体質、冷え体質、凝り性体質・・などなどなど、皆さん実にいろんなことを「体質」と結びつけ、ひっくるめて「体質改善できますか?」とお尋ねになることが多いのです。一概に漢方薬で体質改善できますなんて、私にはとても言えません。

 患者さんが「体質が変わったみたいです」という言葉で漢方の効果を表現されることは、よくあります。体が温かく感じられるようになったとか、風邪をひきにくくなったとか、甘いものが欲しくなくなったとか、なんとなく元気みたいだとか、寝込まなくなったとか、そんな内容を「体質が変わった」と表現しておられるようです。漢方薬の効果は、現代西洋医学の薬のように、血管を広げて血圧を下げる、とか、アラキドン酸カスケードのこの部分を抑制して痛みを止めるとかいった、単一の強い効果とは違います。個々には弱い効果しか持たない薬草を多数組み合わせて、体全体のあちこちに少しずつ効く、という感じです。ですから、漢方薬が自分に合った時には、主訴(一番治したいと考えた症状)の改善以外に、体全体が何となく良い方向に変化したように感じられるのだと思います。それを「体質改善」と呼ぶとするなら、漢方薬の効果はみんな体質改善と言えないことは無いのかもしれません。

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A16
Q16)自分がどんな体質や証なのか教えてもらえますか?
 最近はこういう質問をする患者さんが時々いらっしゃいます。開院のころには、無かったことです。一般にも漢方に関する関心や情報が広がったせいでしょう、それは喜ばしいことなのですが、ちょっと緊張する質問でもあります。

 漢方の本を読むと、虚と実とか、陰と陽とか、お血とか水滞とか、いわゆる「体質」のタイプ分けが書いてあり、それによって、漢方薬を選ぶ、と書いてあります。

 もちろん、私たちはそういう尺度をいろいろ使って、漢方薬を選定しているのですが、こういうものは、決して固定的なものでも、絶対的なものでもありません。実際には、判断に迷うことが少なくありませんし、漢方に詳しい医師同士でも、判断が分かれることが珍しくありません。時期によって変化するものでもあります。自分はこうだ、という風に固定的には考えないで欲しいのです。今の状態を良くするには、こう考えてみたら良いかもしれない、という程度の、便宜的な仮説ととらえて欲しいのです。

 以上のような前提の上でならば、ご希望があれば、診察の時にどのような「見立て」をしたか、お話しすることはできます。実は、お話しなくてもその時処方した薬の名前を見、その説明をお読みになれば、「見立て」はわかってしまうのですがね。薬の内容を患者さんに教えない、という医療機関もあるようですが、当院は全部オープン、何をどれだけ処方したか、全部わかるようにしております。

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A17
Q17)生活上注意することはありますか?
 誰でも勧める、きっとご自分でも承知されている、ごく当たり前のことだけです。

 食事内容は、野菜を多く摂るよう心がけ、油脂や砂糖、菓子や加工食品は少なく摂るよう心がけましょう。過食や不規則な食事はできるだけ避け、ゆっくり食べましょう。

 お酒は、ほどほどに。翌朝の体調が万全で無かったり、肝機能検査に異常が出たり、自分で適量と思うよりもつい量が多くなってしまうのは、危険な飲み過ぎのサインです。

 喫煙はぜひ止めましょう。

 定期的に体を動かしましょう。休日には、平日に動かしていな部分を動かしましょう。ふだん指と目と前頭葉ばかり使っていませんか。休日にはそれらを休め、腕、脚、腰を使いましょう。腕や脚の筋肉ばかり使っている肉体労働者であれば、休日には筋肉を休め、耳や口や心を使いましょう。

 これまで書いたこと全部、わかっちゃいるけど全然してない、という方がいます。それで漢方で「体質改善を」は、虫が良すぎます。体質改善の前に生活改善でしょう。そう申し上げると「そうですよねえ」と苦笑して納得される方がほとんどです。

 その反対に、全部きちんと心がけているのに体調が悪く、何が悪いのか?と苦しんでいる方もいます。病気や不調は、生活習慣だけで決まるわけではありません。自分を責めるのは止めて、気楽にやりましょう。淡々と、そして喜び楽しみをもって。

 以上、九鬼が自分で心がけていることだけを書きました。

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A18
Q18)漢方について勉強してみたいのですが、お勧めの本はありますか?
 漢方にはいくつかの流儀があり、言葉の使い方や考え方、使う薬にも少しずつ違いがあります。どれがいい、ということでは無いのですが、せっかくお読みいただくならば、当院の治療の考えに近いものの方が、何かと都合が良いと思います。

 その意味で、九鬼の師匠、寺澤捷年先生(元富山大医学部教授、現千葉大医学部教授)が執筆され、九鬼自身もお手伝い役として関わらせていただいた「絵で見る和漢診療学」(医学書院)は、お勧めです。当院の待合室にも置いていますので、待ち時間に目を通していただくのも良いと思います。この本は、看護師さん向けシリーズの一冊ですので、大きな書店の看護のコーナーで買うことができます。
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A19
Q19)遠くて通院できないのですが、薬を送ってもらえますか?
 そういうことは、しておりません。

 保険医療には「療養担当規則」という決まりがあり、そこには、診察せずに薬を処方してはいけない、と明記されています。規則に書いてなくても、私は、お会いしていない患者さんに漢方薬を処方することは、怖くてできません。

 遠方にお住いの方は、定期的に通院できる範囲にある医療機関で治療をお受けになるようお勧めします。漢方診療を受けられる医療機関については、当院サイトのリンクページでもいくつかリストアップしていますので参考にしてください。富山大学和漢診療学教室のサイトには和漢診療を受けることができる全国の病院・医院のリストが掲載されています。また、日本東洋医学会のサイトでは全国の
漢方専門医検索ができます。
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A20
Q20)診察を受ける時に用意するものはありますか?
 用意していただく「もの」は保険証、そして場合によって難病治療のために医療券など付随する書類一式。受診理由に関連した検査結果も、最近のものがあればお持ちください。服用中の薬があれば、その内容、分量などがわかるように、現物か、お薬手帳、薬局でもらうお薬情報などをお持ちください。

 「もの」ではないのですが、特に病歴が長い方は、ご自分である程度経過を整理し、あいまいなところはあらかじめ可能な限り確認してきてくださると助かります。初診の時間は約30分ですので、話を聞くのに時間がかかり過ぎると、診察や説明の時間が十分取れなくなってしまうからです。いわば、こころと頭の準備です。

 あとは、体の支度です。

 漢方の診察では、どんな病気を診る場合も、脈、舌、お腹の診察を重視します。おなかの触診が簡単にできる服装でおこしください。特に女性はガードル、一体型の下着、和服などを着用していらっしゃると、おなかの診察が困難ですので、お控えください。また顔色や匂いも大事な診察上の情報ですので、お化粧はできるだけ控えめにし、香水などもご遠慮いただくようお願いします。

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