東京都中央区銀座4-14-19第2カタヤマビル03(3541)5486
                                                    
地 黄                                                 
男も女も 潤いプラス(2007年冬)    
  
  冬から春にかけて太平洋側は晴れて空気が乾く。 アトピー性皮膚炎の患者さんや高齢者の皮膚は保湿力が低く、この季節はカサついてかゆくなりやすい。かゆいからかく、かくから皮膚の表面が荒れて外からの刺激にいっそう敏感になり、もっとかゆくなる、かゆいから……という悪循環に陥る。そんなときに漢方治療では、温清飲(うんせいいん)、当帰飲子(とうきいんし)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)など、地黄を配合した漢方薬を使うことが多い。地黄には皮膚の状態を改善して潤いを増す働きがある、と考えられているためだ。  

  地黄は中国では道端などにも自生する雑草で、二千年以上前から薬用に用いた。日本には平安時代に渡来し、薬草としての栽培と利用が始まった。かつて生薬の大産地だった奈良県には、今も地黄が地名として残っている場所がある。子どもの顔に墨を塗りつける変わった祭りとしてテレビにもよく登場する「すみつけ祭り」の舞台、橿原(かしはら)市の地黄町だ。祭りと地黄は直接関係がないようだが、偶然とはいえ地黄らしいお祭りともいえる。なぜなら生薬として加工された地黄の根は墨のように真っ黒で、これを使った漢方薬も黒くなる。私は患者さんに出すとき「今度の薬は黒いけど驚かないで」と伝えることにしている。  

  江戸時代、地黄は川柳に盛んに登場した。「地黄はやりて天下泰平」「地黄丸女の好きな薬なり」「ああ腎が少ないかなと地黄丸」。安定した社会での庶民の欲望は、どうやら今の日本と変わるところがない。ここにい言う「地黄丸」は、地黄を主薬として配合した六味地黄丸(ろくみじおうがん)や八味地黄丸を指しており、これらは漢方で言う「腎虚」の薬の代表だ。川柳のように腎虚イコール男性機能の衰えと思い込む向きもあるが、腎虚は性機能だけでなく、男性に限らず、要するに老化、医者ことばで言えば、加齢性変化全体を指している。高齢化した日本はいわば腎虚社会というわけで、地黄丸は今の日本にうってつけの薬ともいえるだろう。  ただし地黄は胃痛や下痢など胃腸障害の副作用が比較的多いので、その点に注意して使う必要がある。



地黄(ジオウ)  ゴマノハグサ科 Rehmannia glutinosa var. purpurea(和名アカヤジオウ)またはRehmannia glutinosa.(和名カイケイジオウ)の肥大した根を生薬として用いる。そのまま乾燥したものを乾地黄、蒸すなどの処理をして干したものを熟地黄と呼び、性質や効果に違いがあるとされて漢方治療では使い分けている。 薬理学的には弱い血糖降下作用、血液凝固抑制作用、アレルギー反応抑制作用、抗腫瘍作用など多様な働きが研究されている。漢方治療の中では、婦人科疾患、皮膚疾患、老化に伴う諸疾患などに広く用いられる。

イラスト サイトウマサミツ                                  読み物index  
 記事・画像の無断転載・引用をお断りします/Copyright(C)1997-2009銀座内科診療所 All rights reserved