今、このあたりの原稿については、当時のデータと雑誌を元に思い出しながら書いているのだが、この頃は思えば楽だった。子供も生後10ヶ月を超え、そろそろつかまり立ちもできるようになり、食事も固めの離乳食で済むようになってきた。いたずらはだんだんエスカレートしてくるとはいえ、生命体?としての安定感は、生後6ヶ月未満のころとは比べ物にならないほどしっかりしてきた。
もう少し季節が冬に近づいてくると、今度は風邪対策などに頭を悩ます日々が始まるし、仕事も年末進行になって多忙になってくるのだが、そういう意味で、ちょうどこの時期は余裕のあった時期で、テイスティングの参加にも精が出たものだ。
さて、この日はルーミエとアルロー。
ブルゴーニュの作り手を相撲の番付風に並べていくと、ルーミエはどこらあたりに来るだろうか?人それぞれ好みがあるだろうが、私だったら、東西正横綱にはまあ順当にルロワとDRCを置くとして、東の張り出し横綱ぐらいにルーミエを持ってきたいところだ。(ちなみに他の張り出し横綱候補はヴォギュエ、両デュガあたり?)。
そしてまた、ルーミエといえば編集長の徳丸さんのひときわ思い入れの強い銘柄でもあるのは、1号の表紙の女性が抱えたボトルがルーミエのシャンボールミュジニーであることからもわかる。
しかし、ルーミエという作り手は、面白いことに、外国では日本国内で受けているほどの熱狂ではないようにも思える。マットクレイマー氏は絶賛しているが、WA誌やWS誌、IWC誌などでもそれほど飛びぬけた評価を得ているわけでもない。そんなルーミエを当誌で試飲するとどうなるのか?
結果は絶賛の嵐でございました。(^^;
ひとつには、2000年はシャンボールの出来が総じて良いということもあるのだろうが、とにかく下位銘柄からして、鮮やかな赤い果実味と伸びやかで綺麗な酸による立体感のある味わい、そして何よりも、口の中でパァッと広がる旨み感。上位銘柄になると、さらにコンセントレーションを増し、よりピントがピタリとあったような味わいになる。まあボンヌマールやリュシュットシャンベルタンは飲む前から良いのはわかっていたのだが、意外なほどよかったのは、シャンボールミュジニー・レ・クラ。それから、モレ・サンドニ・ビシェール。特にビシェールはルーミエのラインアップの中では生産量も多く、軽んじられがちな銘柄であるが、なんのなんの、CPや入手のしやすさなどを考え合わせると、ある意味この作り手を代表する銘柄のひとつといってもよいかもしれない。
ついでに後日実施した01ビンテージについても触れておくと、イマイチ冴えないワインの多かった01年においても、ルーミエの出来は別格的なすばらしさで、この作り手にはオフビンテージというものはないのかとさえ思ってしまった。というか、酸の美しさがある意味ポイントの作り手だし、あまりさえない年においても、果実の凝縮感を得ることが出来るようなので、酸っぱくなりがちな凡年はむしろ良さが際立つのかもしれない。
次に、なんとなく前座扱いになってしまったドメーヌ・アルローだが、こちらはどうだっただろうか?
この作り手の銘柄名にしばしば使われる「キュベ・ユニーク」の名前どおり、この作り手がユニークなのは、いわゆる「ノースバークレイ・セレクション」なる特別キュベが存在することだ。ノースバークレイ社というのはアメリカのインポータで、他にもジャン・ラフェなど、いくつかの作り手に働きかけて、このような自社仕様の特別キュベを作らせている。ノースバークレイ社仕様のキュベは新樽100%が用いられ、清澄や澱引きもされないとのこと。新樽を仕様するためには資金力が必要となるが、それらをインポーターで面倒みましょう、というのは、中小の作り手にとっては魅力的な提案に違いない。 そしてまた、アルローという生産者の馬鹿正直なところは、自分のワインについて、WA誌に対しても、ノースバークレイキュベの方がずっと上質だとゲロッているところだ。(^^;
個人的には、ジャン・ラフェなどを飲む限りは、ノースバークレイ仕様は、樽が勝ちすぎている印象があるので、そうでないノーマルキュベも捨てたモンじゃないと思うのだが、これだけはっきり言い切ってしまうということは、キュベの選定の時点で、そもそもよいものが優先的に使われたりしているのだろう。
そういうことで、アルローだが、これがまたヨカッタのだ。スモーキーでミルキーな樽の風味に負けない、力強い果実味もあり、早くから美味しく飲める外向的な味わい。モレ・サン・ドニ・レ・リュショV.Vキュヴェ・ユニークあたりは特にCPの高い銘柄だと思った。
実は、私自身も、この試飲のあと、ネットで探して上記のモレサンドニを購入して飲んだりした。
このアルロー、輸入元のテロワールのゴタゴタで、これからどうなるのだろうという不安があるが、できれば今後もノースバークレイセレクションの輸入を続けて欲しいものである。
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