<第53回テイスティング>
テーマ:ボルドー左岸
シャトー・ランゴア・バルトン '99
レゼルヴ・ド・ラ・コンテス '99
シャトー・レ・カルム・オー・ブリオン '99
シャトー・ラフォン・ロシェ  '99 
シャトー・ラトゥール '99
シャトー・フェリエール '99
シャトー・オー・バタイイ  '99
シャトー・レオヴィル・ポワフェレ '99
レ・パゴド・ド・コス  '99
シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ  '99
シャトー・グラン・ピュイ・デュカス  '99
シャトー・ポタンサック  '99
シャトー・カントナック・ブラウン  '99
シャトー・ドゥザック  '99
シャトー・パプ・クレマン  '99

89点症候群。
それが、このころ私を含めたテイスター諸氏が陥っていた状態だ。
テイスティングの回数を重ねるにつれて、ブラインドの難しさを痛感している私たちであるが、もっとも屈辱的なのは、ブルゴーニュなどで村名レベルやACブルをグランクリュよりも高い点をつけてしまうとか、ボルドーでいえば、1級シャトーより、ブルジョワクラスとかセカンドラベルに高い点をつけてしまう、というようなケースだ。
今にして思えば、このようなことはテイスティングしたボトルのコンディション一つで、十分起こり得る事態だし、また実際、同一生産者で比べてみても、グランクリュの名にふさわしくないグランクリュだって存在するのだが、当時はひとえに自身のテイスティング能力不足によるものと、かなり落ち込んだものである。

こうなると、自然と評点も無難なものになりがちになる。
たとえば、よくわからない銘柄の場合は、つい89-90点ぐらいをつけたくなる。
このぐらいの点数であれば 、銘柄をオープンにした時、どちらに転んでもなんとなく言い訳がつくからだ。
もちろん意識的にそうしていたわけではないのだけど、そんなわけで、気がつくとやたら89点ばかりが並ぶということになっていた。
つまるところ、我々は萎縮していたのである。

これでは、創刊号で指摘された、点数の幅の狭さは改善されないどころか、さらに悪い方向に行ってしまう。
ということで、徳丸さんより、「もっと配点にメリハリをつけて、大胆に評価するように。」という指示が出た。
自分の感性に素直に、よいと思ったものには良い点を、よくないと思ったものにはそれなりの点をつけなさい、ということだ。

たしかに失敗を恐れて萎縮していては、自分のテイスティング能力も向上しない。
ということで、より大胆な評価をしようと誓いつつ、99ボルドーの最終回に臨んだこの日。

蓋を開けてみると、私がもっとも高評価をしたのは、レオヴィル・ラスカズ。次がやや意外な線だが、パプ・クレマン。レオヴィル・ポワフィレもよいと思ったが、肝心な横綱、ラトゥールについては、例によってまた、「89点症候群」が出てしまった。
もっとも、ラトゥールについては、他のテイスターの方々は順当に高評価していたので、私の点数は除外されることになったが。(^^;
それと、パプ・クラマンについては、残ったボトルを家に持ち帰って飲んだが、やはり美味いと思った。他のテイスター諸氏はそれほど特筆すべき点をつけていなかったし、WA誌を紐解いても、パーカーさんもあまり際立った点をつけていない。これなどは、私の「ツボ」にはまったということなのだろう。