<第46回テイスティング>2002年7月20日
テーマ:レシュノーとフーリエ

【フィリップ・エ・ヴァンサン・レシュノー】
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ダモード '99
シャンボル・ミュジニー '99
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・プリュリエール '99
ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ  '99 
ブルゴーニュ  '99
シャンボル・ミュジニー・プルミエ・クリュ '99
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・カイユ  '99
ジュヴレ・シャンベルタン  '99
ヴォーヌ・ロマネ  '99
ニュイ・サン・ジョルジュ  '99

【フーリエ 】
ジュヴレ・シャンベルタン・クロ・サン・ジャック・V.V. '99
モレ・サン・ドニ・クロ・ソロン・V.V. '99
シャンボル・ミュジニー・V.V.  '99
グリヨット・シャンベルタン・V.V. '99
ジュヴレ・シャンベルタン・シャンポー・V.V.  '99

【レシュノー】
NSGのドメーヌ。1986年に父フェルナン氏の死後、フィリップとヴァンサン兄弟が引継いで、次々と村々に畑を買い足し、今では15種類のワインを作り出す。91年からは100%元詰めで、ロバート・パーカーも5つ星をつける生産者。年間生産量450本のクロ・ド・ラ・ロシュはブルゴーニュ愛好家にとっては幻のアイテムのひとつ。私が個人的に気に入っている作り手のひとりでもある。
【フーリエ】
ジュブレ・シャンベルタンを拠点とするドメーヌで、現在の醸造責任者ジャン=マリは、アンリ・ジャイエ、ドルーアンなどで研修をして、95年よりワイン作りを一手に引き受けている。アンリ・ジャイエを師と仰ぎ、現代的な濃く凝縮されたワインでなく、クラシックなタイプを志向しているとか。私自身飲むのは初めてだ。
 
私の頭の中では、最近のブルゴーニュの潮流って、大きく3つに分けられている。
1.濃縮された果実味を前面に押し出すタイプ。
   クロード・デュガ、ジャック・カシューなど
2.各要素のなめらかな均衡によって現代的な洗練性を示すタイプ
   グロフィエ、ユベール・リニエなど
3.伝統的、クラシックなタイプ
   アルマン・ルソー など

この区割りで行くと、レシュノーは2番のタイプ、フーリエは3番のタイプだといえる。
ただ、今回のテイスティングで悲劇だったのは、この両者をごちゃまぜにしてブラインド・テイスティングしたことだろう。
というのも、濃くて現代的なつくりのレシュノーが多数を占める中に、薄くてクラシックなタイプのフーリエが入ると、ともすれば、色を見た時点で、レシュノーの下位銘柄(ブルゴーニュ・ルージュやオー・コート・ド・ニュイ)ではないかとの先入観が働いてしまうからだ。実際はこの両者はほとんど対極ともいえるような作りなのだが、この日のフーリエはどれも香りが閉じ気味だった(状態が悪かったという説もある)ことに加えて、まぎらわしいことに、レシュノーの中でもブルゴーニュ・ルージュやオー・コート・ド・ニュイの2本だけが、ボトルの色が違っていたというのも、我々の判断を狂わせる結果になったと思う。
本来、このような先入観をもってブラインドに臨むのはご法度なのだが、我々も人間、こうしたほんのわずかな情報によって判断を大きく狂わされてしまう場合があるのは、何度も経験してきたとおりだ。
複数の作り手を一度にテイスティングするときは、個人的には前回のルソーの会のように作り手ごとにきっちり分けて欲しいと思うのだが。

というようなわけで、フーリエに対しては全般に点数が辛めという、酷な結果となってしまったが、当日私が持ち帰った「ジュブレイ・シャンベルタン・レ・シャンポー」なぞは、次の日までクリアで古典的な味わいを維持しており、むしろ翌日の方が好印象だった。
味わいの印象としては、繰り返しになるけれども、赤系の果実、小梅やスミレ、紅茶などを思わせるクリーンで古典的なブルゴーニュ。色はグランクリュのグリオットシャンベルタンであっても決して濃くはなく、樽のフレーバーもほとんど感じない。 値段も安くはないが、そう高くもない。ルソーの廉価版と言っては失礼だが、ぜひ自分のセラーにも揃えたいと思わせる作り手だ。

注:なお、後日のディスカッションの結果、やはり今回のフーリエは状態に問題があって実力を出し切っていなかったのではないか、ということになり、2号の紙面でもその旨を記載した。

一方のレシュノーについては、今回残念ながらクロ・ド・ラ・ロッシュはなし。(入手できなかったとか。)しかし、その情報を聞かずにテイスティングに臨んだとしても、グランクリュクラスに限りなく接近しているといえるものが2〜3銘柄はあった。
NSG・レ・カイユ、レ・プリュリエ、そして(なぜか)シャンボールミュジニー・プルミエクリュが驚くほど濃厚なすばらしい味わい。
NSGの作り手は、シュヴィヨンやダニエル・リオンもそうだけど、グランクリュがないため、どうしても地味な印象を受けてしまうが、この作り手は実に洗練されたすばらしいワイン作りをしている。ことに新樽の使い方が実に精妙で、でしゃばりすぎず、それでいて味わいにメリハリを与えているところがいい。
こういう作り手の1級クラスをリリース直後に入手して、自分のセラーで数年寝かせられるのも、賢いワインライフだと思うが、セラーの空き容量の関係でこのクラスまで手が回らない自分が辛い。