土曜日は、育児との兼ね合いで、テイスティングへの参加は相当はばかられる雰囲気が我が家にはある。しかし、アルマン・ルソーの水平イッキ試飲というのは、私が前々から挑んでみたかったテーマのひとつだし、もう一人の方も、個人的に好感を持っているジャック・カシューということなので、前回のユベール・リニエから連荘で、カミサンの顰蹙を買うのを承知で、参加させてもらった。
なお、今回は、それぞれの作り手をごちゃまぜにテイスティングすることはせずに、最初にジャック・カシュー、次にアルマン・ルソーという順番で試飲した。個人的にはこちらのやり方の方が無用の混乱がなくてよいと思う。
まずはジャック・カシュー。
知名度こそ高くないが、上質なワインを生むヴォーヌ・ロマネの造り手のひとり。父ジャック氏はすでに引退しており、40代半ばの息子パトリック氏がドメーヌを切り盛りしている。畑は計4.5ヘクタール程だが、特級のエシェゾー(0.7ha)、一級クロワ・ラモー(0.2ha)とレ・シュショ(0.4ha)、それにヴォーヌ(1.7ha)とニュイ(0.8ha)の村名畑など、なかなか魅惑的なラインアップ。中でもエシュゾーとヴォーヌロマネ・クロワ・ラモーがこのドメーヌの白眉だといわれている。そのわりに価格が穏当なのも魅力のドメーヌだ。
私も何度か飲んだことはあったが、こうしてまとめて飲んでみると、今流行りの濃縮感のある果実味が前面に出たタイプの作り手で、クロードデュガ並みというのは誉めすぎにしても、その路線にある現代的な味わいだ。
残念だったのは、いきなりエシュゾーがブショネだったこと。
1本目のクロワ・ラモーが評判どおりのすばらしさだっただけにこれは残念。他のヴォーヌロマネ3本が(値段を考えると特に)すばらしい出来だったので、状態さえ万全ならば、さぞすばらしい味わいを提供してくれることだろう。
次にアルマン・ルソー。ところがここでまた失敗をやらかしてしまった。
ブルゴーニュの生産者の場合、一部の例外はあるにせよ、同じ作り手でみれば、ACブルクラス→村名→1級→特級 となるにつれて品質は向上してゆく。ブラインド・テイスティングにおいても、多くの場合、色調を見て、香りを嗅いだだけで、グランクリュとか、反対にACブルなどは識別できてしまうのだけど、中には村名からグランクリュまで、濃さに差がない作り手とか、一見すると違いが見つけにくい作り手もいたりする。
今回のルソーがまさにそれで、私はもっとも色が薄かったリュシュットシャンベルタンを、色調から、「これは村名ジュブレイシャンベルタン」だとはなから決め付けて採点してしまった。銘柄を聞いた後で、再度試飲してみると、たしかに淡い色合いから想像できないような口中での粘性と広がりはただならぬものがある。早合点はいけないと猛省。
それでもやっぱり、村名とグランクリュで村名の方が色が濃い、というのは、ちょっと反則ですよ。(苦笑)
さて、上位の三本については、新ダルの使用比率からして違うし、酒質の差は歴然。 3本の中ではシャンベルタンが一番人気だったが、ブラインドでは、私はクロ・サンジャックがもっとも今バランスがとれていて飲みやすいと思った。クロ・ド・ベーズは、まだ各要素がやや暴れているような印象。それに比べるとシャンベルタンは今でも美味しく飲めてしまう。これって通常言われているルソーのシャンベルタンとクロ・ド・ベーズの特性とは逆だけど。いずれにしても、3本とも今はまだ樽のフレーバーが強く残り、複雑さは出ていないので、セラーで寝かせるのが正解だろう。
他の特級銘柄については、もちろんどれも1流といえる出来栄えながら、さすがにこの3本と比べてしまうとちょっと物足りなさも残る。 値段も1万円前後するので、私ならば、少し予算を足してでもクロサンジャックを買いたいと思ってしまう。早めに飲もうと思うのであれば、これらを購入するというのもまた、アリだとは思うが。
また、水平試飲ということで、畑の個性が明確になるかと期待したけど、やはり市場に出回っているボトルだと、畑の個性云々の前に、ボトルのコンディションの方が変動要素として強く出てしまっていたような気がする。
大まかなAOCの比較ならともかく、畑レベルの微細な違いを探ろうとするような試飲においては、インポーターやショップなどが同一ルートのもの(というか同一ロットのもの)を仕入れるのがよいだろう。
なにはともあれ、ルソーの水平は、実に貴重な機会だった。 加えて、みながこぞって上位3本を探す理由が改めて納得できた今回のテイスティングだったとも言える。
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