とりあえず、大腸の内視鏡は無事終了した。ポリープは結局3つあったが、どれも数ミリの大きさだったので、内視鏡で問題なく切除できた。施術は、医療関連に人脈を持つ上司から「名医」を紹介していただいた甲斐あって、大きな苦痛もなく、予想していたよりずっと楽に済んだ。
当初、切除後は3日間自宅で安静にせよ、との医師の指示に従い、有給休暇を取得して、家で本でも読みながら、のんびりと過ごす予定だった。
ところが、コラムにも書いたとおり、この休暇中に、偶然にも実家のサイレントカーヴが故障しているのを発見。おかげでのんびりどころか、ふだんの週末よりも大忙しな休日になってしまった。
まあ、故障したのが3月のこの時期だったのは不幸中の幸いだったし、それを早めに見つけることができたのも幸いだった。
病気もセラーの不調も、早期発見に限る、ということですね。
さて、この日のテーマは99ボルドー白とシモン・ビーズ。
ポリープ切除後、1週間禁酒を申し渡されている私は、まだ飲酒はできない。きっちりと吐き出してテイスティングしたのだが、それでも、 火曜日ごろから粥&禁酒生活を続けていたせいか、テイスティングが進むにつれて、酔いが回ってしまった。
【ボルドー白】
ブラン・ド・ランシュ・バージュ(白) '99
シャトー・カルボニュー(白) '99
パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー (白) '99
シャトー・タルボ・カイユー・ブラン (白) '99
ボルドーの白は、いわばオマケのようなもので、テイスティングしたのも4銘柄のみ。
良くできたボルドー・ブランは、ソーヴィニヨンブランの爽やかさとセミヨンの厚みのあるボディが見事に調和してすばらしい味わいを見せてくれるんだけど、この日の銘柄はどれも今ひとつ。
どれも薄っぺらいのである。
銘柄を聞いてみると、パヴィヨンブラン・デュ・シャトーマルゴーとか、ブラン・ド・ランシュバージュなど、それなりの銘柄だったのでひょっとしたら、99年のボルドー白自体が、いまひとつだったのかもしれない。
次に、本日メインのシモン・ビーズ。
私は結構飲んでいるつもりでいたのだけど、「こんなワイン飲んだ」をおさらいしてみると、たった1回しか出てこないのに気づいた。不思議なものだ。
【シモン・ビーズ】
サヴィニー・レ・ボーヌ・レ・セルパンティエール '99
サヴィニー・レ・ボーヌ・オー・ゲット '99
アロース・コルトン・ル・シュショ '99
サヴィニー・レ・ボーヌ・オー・グラン・リアール '99
ラトリシエール・シャンベルタン '99
サヴィニー・レ・ボーヌ・レ・フルノー '99
サヴィニー・レ・ボーヌ・オー・ヴェルジュレス '99
サヴィニー・レ・ボーヌ・レ・ブルジョ '99
サヴィニー・レ・ボーヌ・レ・マルコネ '99
ちなみに、シモン・ビーズは、160年以上もサヴィニー・レ・ボーヌで酒造りをしている名家。 村の斜面の畑からは、7つのちがったサヴィニーを生産しているとか。ワインは昔ながらの伝統的な作りを重視した古典的なもので、
パーカーさんも、
「驚くほど、熟成能力のある、古典的なワインで品質と価格がうまく一致している ブルゴーニュでも珍しいブドウ園の一つである。」 (厳選評価世界のワイン)
と評価している。
ちなみに、奥さんが日本人だということでもよく話題にのぼるドメーヌだ。
近年、ラトリシエール=シャンベルタンとコルトン=シャルルマーニュの特級畑を購入したとのこと。今回の試飲は、グランクリュのラトリシーエル・シャンベルタンをまじえた赤ばかり9種類。
テイスティングしてみて思ったことは、まずどれも、酸が非常に伸びやかであること。しかし、この酸はかなり固く、加えてタンニンも乾いていてやや手ごわい。よく熟した凝縮感のある果実味がなければ、ただのバランスの悪いワインに終わってしまうところだ。
果実味は、 過熟とすら言いたくなるほどで、今はどちらかというと赤と黒の中間ぐらいのドライな香りが主体。お世辞にもチャーミングなどと言える代物でないが、数年待てば、乾いた果実がリキュール的な妖艶な香りへと変貌を遂げそうな期待も抱かせる。
一方で気になったのは、いわゆる「馬小屋臭」とでも言うべき臭いだ。 どの銘柄にもかすかに黒く野太い、言い方は悪いが糞便系に近いようなニュアンスを感じる。ただ、
この種の臭いには、作り手や品種に関係なく、ときたま出くわすことがある。今まで飲んだ中では、シャルル・ジョゲの97シノン、アラン・ブリュモンの96マディラン、ミシェル・グロの97クロ・デ・レア、96フランチャネッロなどにそれを顕著に感じた。しかし、たとえば、グロにしても、他の年では全く感じないので、生産者の特徴というわけでもないようだ。
ちなみに「馬小屋臭」 というのは、それをそれと勝手に私が思っているだけで、ソムリエ用語に出てくる、本当の馬小屋臭というのは、違う臭いをさすのかもしれない。いずれにしても、この種の臭いを全然気にしない方もいるが、私はどうにも苦手である。
まあ、以前飲んだジョゲのシノンなどのように強烈なものではないし、熟成とともに消えるものなのかもしれない。そもそも他のテイスターの中には特にそれと指摘していない方もおられたようなので、私がこの種の臭いに敏感なだけかもしれない。
注:なお、後日テイスティングした2000年についてはこのような臭いはなかった。また、同じ99年を別所で飲んだ友人に聞いてみても、このような臭いを感じることはなかったという。どういうことなんだろうか。う〜ん。
テイスティングした中では、サヴィニー・レ・ボーヌ・オー・ベルジュレスが一歩抜きん出ていた。私はてっきりこの銘柄をラトリシエール・シャンベルタンだろうと予想したぐらいだ。
一方、期待のラトリシエール・シャンベルタンは、味わいが力強さ志向でないこともあって、テイスティングの場ではあまり目立たなかった。ブルゴーニュに精通している方なら、違いはわかるだろうが、
その差は、少なくとも一連のサヴィニー・レ・ボーヌが3000円〜4000円台なのに対して、オーバー1万円に値するだけの品質の違いがあったかというと、ちょっと首をひねらざるをえない。
さて、シモン・ビーズを9種類並べてテイスティングするなんて、滅多にない貴重な機会だったが、その印象はというと、玄人好みの、一般受けはしにくいワインだなあ、というところだろうか。
もちろん、コストパフォーマンスの高さや古典的なで厳粛なワイン作りは理解できるのだけど、一方で 今流行りの、「濃縮された甘い果実」や「新樽からの心地よいロースト香」などのわかりやすい要素が皆無。
寝かせておけば美味しく熟成しそうなのはよくわかるが、我が家の事情に照らし合わせてみれば、この位の価格帯のワインに数年〜10年間もセラーを占拠するのはちょっとキビシイな、と思ってしまう。
まあ、それはそれでいいのかもしれない。
たとえば、ブルゴーニュに精通した方々が、準デイリー的に飲むような、そういうターゲットにはこれほどふさわしい作り手もないだろうし、おそらくドメーヌサイドもそのような狙いなのだろう。超メジャーにはならないかもしれないが、個人的に見守りたいドメーヌである。
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