Q&A形式でまとめてみました。
順次項目を追加していきます。 
<ご注意> 
このコーナーは、私が99年にワインエキスパートの資格を取得した際の体験記です。今では情報の中身が古くなっていたり、現在の認定試験の内容にそぐわないものもあるかと思いますが、今後の改訂やアップデートの予定はありません。したがって、これから受験しようという方は、ここに書かれた内容があくまで99年当時のものであるということをご認識の上、必ず最新の情報を参照するようにしてください。

<受験のきっかけ>
「ワインエキスパート」資格をとろうと思い立ったきっかけは、かなりなりゆきに近いものがあります。年来のワイン好きが興じて、一度系統的にワインを「勉強」したいと思い立ったのが、98年の9月頃。そこで「ワインの学校、ワインの資格」という雑誌のような本を買ってきて、いろいろと調べ、会社から近いワインスクール何軒かに電話してみました。ところが当時はブームのピークだったこともあり、すべて満員。それで会社の帰りに行くことはあきらめて、週末に行けるところということで、家から比較的近い自由が丘にある某ワインスクールに電話したら、基礎講座が空いているとのこと。ということで、さっそく翌週からそのワインスクールに通うことにしたのでした。この時点では資格云々という気持ちは全くありませんでした。

ところが、いざ通い始めていると、講座は確かに基礎講座なんだけど、周囲には翌年の受験を目指しているらしき輩が少なからずいて、授業の中でも時折、「認定試験では云々」という下りが出てきたりして、それでいつのまにか私も興味を持つようになったのです。情けないことにあとで知ったのですが、そのワインスクールは資格試験対策の名門として有名なところであり、私はいわば中学受験する気もないのに四谷大塚に通 っていた小学生のようなものだったわけです。

とまあ、そんな環境下にいたので、年が明ける頃には私もいつのまにか周囲に感化されて認定試験を受験しようという気になっていました。ところが、当時は試験のことをよく知らなかったので、私でも「ソムリエ」の資格をとれるものとばかり思っていて、あとで受験資格の壁を知ってガックリきたのも事実です。(後述)
また、いざ勉強を始めていると、覚えなければならない項目のあまりの多さに目が回りそうになりましたし、受かってもどうせ「ソムリエ」の呼称を名乗れないのに、なんでこんな大変な勉強をしなければならないんだと、半ば自虐的な気持ちで勉強を続けた時期もありました。実際私の通っていたスクールは合格率90%以上を謳っていて、私の周りでも最後まで残っていた面々はほとんどみな受かったようですけど、反面夏頃を境にに来なくなってしまった人たちも結構いたような気がします。

まあ、そんなこんなで、周囲に吹聴してしまった手前、最後は半ば意地になって勉強を続けたようなもんですが、今では資格をとってよかったと思ってますし、ワインエキスパートの呼称がもっと一般的になってほしいとも願います。

<重要な覚え書き>

そういうわけで、私はたまたま資格を取得しましたが、巷のマニアの方々の中には私など及びもつかない知識や経験を持った方々がたくさんいます。また、経歴的にも以前からワインを飲んでこそいますが、本格的にワインに凝ったのは比較的最近なので、むしろこの世界では新参者に近い立場です。資格名どおりの「エキスパート」の域に達しているなどとはさらさら思っていませんし、これからも身の程をわきまえて謙虚にいきたいと思います。ちなみに私が「こんなワインを飲んだ」のコーナーで書いているコメントなども、決してプロの方々が雑誌や本に書いているようなレベルのものではありませんので、その辺はご了承ください。(^ ^;

◆「ワインエキスパート」とは?

Q:ワインエキスパートってあまり聞きませんがどのような資格ですか?
A:日本ソムリエ協会の認定するワインの資格で、1996年に認定試験が始まった 比較的新しい資格です。あまり知られていないようですが、今年(99年)川島なお美女史がこの資格を取得してメディアで喧伝されているようなので、少しは名が知られるようになると思います。(^ ^;

Q:ソムリエやワインアドバイザーとはどう違うのですか?
A:違いは職種と経験年数による違いです。
 ソムリエ
  飲食サービス業に5年以上の実務経験があり、現在も従事している者。
 ワインアドバイザー
  酒類業界、およい調理・専門学校講師として3年以上経験があり、現在も
  従事している者。
 ワインエキスパート
  ワインの品質判定に的確なる見識を持っている者。年齢、性別、職種は
  問わない。 ということのようです。

Q:これらの資格の試験には違いはあるのですか?
A:一次試験=全く同じ
  二次試験=口頭試問とテイスティングの形式は同じだが、試験問題と出る
       ワインが若干異なる。ソムリエは「パニエ抜栓」
       「デカンタージュ」の実技がある。
 合格基準は70%以上。
 ちなみに今年の二次試験では、テイスティングのワインはアドバイザーと
 エキスパートは共通でした。口頭試問では、エキスパート独自の問題として、
 「1872年生まれのフランスの有名な美食家のペンネーム」とか、
 「アルザス地方イルハウゼルンにある三ツ星レストランの名前」なんていう
 問題が出題されて、なんだかなあと思いましたが、ワインアドバイザーのほ
  うも 「パリのマドレーヌ広場にあるワインショップの名前」なんてのが出題
  されて ましたので、どっこいどっこいですね。

Q:ソムリエの方がネームバリューがあるので、ぜひソムリエの資格をとりたいのですが…
A:残念ながら、飲食サービス業に従事していなければ受験資格は得られません。職歴を詐称して応募した場合、バレると本人はおろか協力した店も会員資格を剥奪されるらしいですし、合格すると、機関誌「ソムリエ」に本人の名称のみならず、その所属まで掲載されるので、結構キツいです。「エキスパート」資格が出来てからは一段と応募資格のチェックが厳しくなったようです。私も当初はなんとかソムリエの資格をとれないかと画策したりもしましたが、まあそこまでリスクを背負うこともないかと思ってやめました。

Q:ワインエキスパート資格のバッジは、ソムリエやワインアドバイザーのようなブドウの形状のものではない、と聞きましたが?
A:99年認定分から、ワインアドバイザーと同様の銀色のブドウのバッジとなりました。その前のバッジは全く違った丸い形状のものだったのですが、評判が悪かったようですね。私はあれはあれで恰好良いと思ってたんですけど…。ちなみに夕刊フジの記事にもなっていましたが、当初送られてきたバッジが「Wine Expart」となっていたのには空いた口がふさがりませんでした。(見出しは「ソムリエ協会赤っ恥」。)

Q:ワインエキスパートはワインアドバイザーやソムリエのように仕事に直結していませんが、資格をとってなにか実利はあるのですか?
A:基本的には趣味の資格ですから、実利はあまりないと思います。自己満足の世界です。まあ業界に転職しようとした時に、あらかじめそれなりの知識があるという証明にはなるとは思いますが。
個人的には、実利よりむしろ弊害として、飲み会の時に、「このワインはなんだかあててみろ!」とブラインドテイスティングを迫られる機会が増えました。

Q:ワインエキスパートを取得したあと、転職してソムリエやワインアドバイザーの受験資格ができた場合、試験の免除とか優遇措置とかはあるのですか?
A:2000年から、一次試験が免除になりました。したがって、仮に私がレストランに転職して、所定の年数が経過した場合、ソムリエの資格をとるには二次試験を受けるだけでよいことになります。 」

◆試験はどんなもの?

Q:試験はいつ行われるのですか?
年に一回、8月から9月にかけて行われます。ちなみに99年は一次試験=8月25 日、二次試験は9月21日(ソムリエは9/29)に行われました。

Q:試験は難しいと聞きますが…
A:筆記試験は年々難しくなっていて、今年の試験などは以前のコンクールの筆記問題並みだったとさえ言われています。とにかく重箱の隅をつつくような細かい知識が要求されるので暗記がかなり大変です。

Q:具体的にはどのような問題が出題されるのですか?
A:問題は非常に網羅的で、たとえばスイスやオーストリアの地域名称とか、ギリシアのブドウ品種とか、地域名称やワイン法、ブドウの種類や赤白などに関してはまさに重箱の隅をつつくような問題が出題される一方、ワイン通の間でよく話題になる造り手やビンテージについては、ほとんど出題されません。ちなみに試験問題は日本ソムリエ協会のホームページに載っています。

Q:二次試験のテイスティングはどのように行われるのですか?
A:4種類のグラスが机の上に並べられるので、それについてのコメントを解答用紙に記入します。ちなみに99年からマークシート方式が導入されています。

Q:テイスティングに出されるワインはフランス産だけと聞きましたが。
A:確かに98年まではそうでしたが、私が受験した99年、ついに前例を破って、イタリアワインが出題されました。また同年はなんとオードヴィー(ブランデー)が出題されて、試験終了後、あちこちから怒りの声があがっていました。そういう訳でテイスティングについては今後はフランス以外のものも出題されると思った方がよいでしょう。

Q:テイスティングはどの程度正解しなければいけないのですか?
A:これはよくありがちな誤解なのですが、テイスティングはワインの状態を分析するために行うもので、銘柄あてクイズではありません。したがって、銘柄に関しては4種類すべて外しても受かる人は受かるし、全部あてても落ちる人もいるかもしれません。

Q:二次試験で不合格になると、翌年はまた一次試験を受けねばならないのでしょうか?
A:その翌年に限り、一次試験は免除となります。

Q:ワインスクールに通わないと受かるのは難しいという噂も聞きますが。
A:そんなことはないと思いますし、現にどこにも通わずに受かっている人たちもたくさんいます。まあワインスクールを受講しているといろいろな情報が入ってくるという点は大学受験における予備校などと一緒です。あと、二次試験のテイスティングについては、訓練による慣れの部分が大きいので、家で安ワインを何十本も開けるよりはスクールに行った方が効率的という見方もあるかもしれませんね。私の個人的な経験からすると、一次対策はあえて行かなくてもよかったかな、と思いますが、二次は行っておいてよかったと思ってます。

Q:合格率はどのくらいですか?
A:昨年の受験者と合格者は以下の通りです。
一次受験者 一次合格者 二次受験者 二次合格者
ソムリエ 1901 1166 917
アドバイザー 2360 1182 743
エキスパート 873 458 391

試験が難しいわりに意外に合格率は高いと思いませんか?合格率が高いのは、たぶん以下の理由によると思います。
1.試験はほとんど選択式であること。
2.毎年必ず出る出題分野がかなりあり、過去の問題から予想できること。
3.「基本技術講習会」である程度出題される問題や傾向が把握できること。


◆勉強の仕方

Q:受験勉強はいつごろから始めればよいのですか?
A:早ければ早いほど、後が楽になります。一年くらい前から始めるのが理想でしょうけど、なかなかそうはいかないかもしれませんね。ワインスクールの受験講座は4月から始まるので、大体その頃からスタートというのが標準でしょう。中には3ヶ月前から始めて受かる人もいますし、実際時間に余裕がある人なら短期間でも集中して勉強すれば大丈夫だと思います。
でも、ひとつ確実に言えることは、短期間で詰め込むと、その後忘れるのも早いということこです。試験に受かるためだけに覚えて、受かったらすべて忘れました、ではもったいないので、そういう意味でも早めのスタートをお奨めします。

Q:1ヶ月の勉強で合格した、というハナシも聞きますが?
A: これは、どれだけ予備知識をもっているかにもよりますね。業界の方やマニアの方とおつきあいしていると、資格を持っていなくても私より詳しいような人はざらにいるので、そういう方なら、1ヶ月の勉強で合格も可能でしょう。でも、一般論にあてはめたときには、そういう事例はあくまで例外であり、1ヶ月という数字を間に受けない方がいいでしょう。

Q:受験勉強はどのようなスケジュールでこなしたのですか?
A:私の場合は1月から勉強を始め、それ以降は下記のような感じですすめました。
1〜3月:とりあえず 田辺由美のワインブックを一通 りざっと覚える。
4〜6月:ワインスクールの対策講座が始まったので、それに併せてフランスを中心に覚える。
6〜7月:ドイツ、イタリア、スペインあたりを中心に他の国の勉強。
7〜8月:基本技術講習会に出席して出題傾向の把握と全般の復習。
9月  :テイスティングを集中的に。
すなわち、
1〜3月=一回目、4〜7月=2回目、7〜8月=3回目、という風に一通りの学習を三回繰り返しました。一回目はまだ全貌がつかめなかったのが、二回目、三回目となるにつれてだんだん判るようになってきます。ちょうど、霧に覆われた山の頂をめざして麓から歩いているうちにだんだん霧がはれて山の全貌が見えるようになるような感じです。

Q:受験勉強は一日にどれくらいすればよいのですか?
A:「田辺由美のワインブック」の著者の田辺さんはご自身のスクールの開講時(4月)に「これからは毎日2時間勉強せよ」「ワイン以外の飲み物は飲むな」と言っているそうです。私の場合、仕事の関係で一日二時間はまずとれませんでしたから、往復の電車の中が貴重な勉強時間になりました。

 

Q:教材はどのようなものを使えばいいのですか?
A:私の場合はまず 「田辺由美のワインブック」と「田辺由美のワインノート」(飛鳥出版)を使ってひととおりざっと覚え、その後はワインスクールの教材のテキストでもう一度ひととおり復習し、仕上げはソムリエ協会の「ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本」を使いました。「ワインブック」は各国各地方の地図がとてもよく書かれているので必須です。この本は誤植が結構多いのが難点ですが、最近改訂版が出たのでその辺は解決されていると思われます。 ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本」は年々分厚くなっていますが、フランスの地方別 の地図が全く載っていないなど、過不足がずいぶんとあります。教科書としてというよりも、辞書的な使い方をすべきでしょう。ただ、この教本にしか載っていないようなこともかなり出題されますので、やはり受験には必須だと思います。

Q:「基本技術講習会」とはどのようなものですか?
A:試験に先立って、「ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本」の内容に沿って行われる講義で、7月〜8月にかけて全国いくつかの会場で行われます。朝9時半から夕方6時まで二日間びっしり講義というスケジュールです。

Q:「基本技術講習会」へ参加しないと試験を受けられないのですか?
A:基本技術講習会は出席MUSTではありませんので、参加しなくても受験することはできます。ただ、出席すると、その年の出題傾向がかなり把握できるので、出席することをおすすめします。

Q:「基本技術講習会」では、出題されるところを教えてくれるというのは本当ですか。
A:昨年は一部教えてくれる教官もいましたが、期待したほどはリークされませんでした。でも、なんとなく強調していたというレベルも含めれば、出題傾向はかなり把握できると思います。

Q:「基本技術講習会」は何回か行われますが、講師によって内容の違いはあるのでしょうか?
A:スケジュールの都合がつくのならば、ソムリエ協会の重鎮たちが自ら講義を行う初回に出席することをおすすめします。試験問題を作るのは彼らなので、出題内容がリークされる可能性が大きいからです。

Q:過去の問題から出題傾向がかなりつかめると聞きますが?
A:以下の方法でかなり体感的にポイントがつかめるのでお奨めします。
1.過去5年間ぐらいの問題をすべてコピーする。
2.設問ごとにバラバラにはさみで切る。
3.それを地域、国などの分類ごとに集める。
4.一冊のノートに貼り付けて集約する。
5.さらにそれをコピーして小冊子にして、何度か反復練習する。
少々面倒くさいですが、これをやると、必ず毎年出る問題や出題傾向の変遷などが見えてきます。

Q:その他になにか工夫したことはありますか?
A:私の場合、前述のように仕事の関係で勉強時間があまりとれなかったので、
電車の中を最大限活用しました。具体的には、B4サイズでかさばるワインスクールのテキストを縮小コピーして(ってほんとはこんなことしたら著作権に抵触するのだろうけど…)、電車の中で読み、次の段階では、ポケットサイズの小さなノートを作って要点をまとめたり、お決まりですがカードを作って暗記したりしました。
カードをやっていると回りの人たちから好奇の目を向けられて、恥ずかしいものがありますが、切羽詰まってくるとそんなことも気にする余裕がなくなってきます。
電車の中にこだわったのは、家に帰ってくるとつい晩酌をしてしまうからです。ひとたびアルコールが入ってしまうと、暗記ものは全くダメです。
「飲んだら乗るな」というのはこのことかと思い知らされます。(^ ^;


※備忘録