超不定期更新コラム

3/18 ミクロクリマ?

「テロワール」とか「ミクロクリマ」という言葉を聞いたことがありますか。
おさらいしますと、「テロワール」というのは、「ブドウ畑をとりまく自然環境要因」のことで、「特定の地方や畑からつくられたワインは特定のニュアンスを持つ」というコンセプトはフランスの原産地統制呼称法の基礎となっているものだそうです。(掘賢一氏著「ワインの自由」より)「ミクロクリマ」というのもほぼ同様の意味で、これらはよく、ブルゴーニュの畑が道一つへだてただけで全然違うワインを生み出すことに対する説明として使われたり、勢力を広げている新世界のバラエタルワインに対するフランスワインの優位性を説くために使われたりしています。
しかし、最近ではこの言葉は濫用されがちだと指摘され、たとえば「ロマネコンティ」とその隣の「ラ・グランド・リュ」の違いについては、テロワールの違いよりもむしろ醸造者の違いの要素のほうがずっと大きいと懐疑派は主張します。

まあ、テロワール論争はさておき、なんでこんな用語を持ち出したかというと…

我が家のベランダは一応南を向いているんだけど、隣のマンションとの位置関係で午後には日があたらなくなってしまいます。
それで天気のよい午前中は、つかの間の陽射しを最大限活用しようと、カミサンは洗濯物や布団を干すのに大忙しです。一方、私はといえば、その日当たりのよくないベランダでほそぼそとガーデニングなぞをやっていまして、今年の夏は朝顔が毎日のように咲いてベランダを賑わせてくれたりしたんですが、 冬になってちょっとさびしくなったなあと思っていたら、先日取引先から結構な数のチューリップの球根をもらいました。(しかし、朝顔だのチューリップだのと、まるで小学生の理科の授業のようですね。)

空いている鉢に植えてみたところ、1週間ぐらいしてニョキニョキと芽が出てきました。ところが面白いことに、ちょっと観察してみると、芽の発育が鉢によって、あるいは植えている位置によって全然違うのです。

手前左側の鉢は、夏場に朝顔を育てていた鉢ですが、いまいち芽の発育が遅い。朝顔に養分をとられて土壌がやせてしまったのでしょうか?
一方手前右側の鉢は、勢いよく芽が育っています。実はこの鉢だけが、他の鉢とは違った泥土なんですが、それが球根と相性がよかったのかもしれません。

奥のプランターはかなり土が疲れていて心配だったのですが、肥料を大目にやったこともあって、無事に育ってくれてます。しかし、こちらも位置によって、芽の発育が全然違います。球根の個体差もあるでしょうけど、大きな要因は日当たりなんでしょう。あたりまえですけど、奥のほうの午後になって日影になる時間の少ないところがより育ちがいいということなんでしょうね。

まあ、こんな些細な我が家のベランダのチューリップを見ただけでも、土壌や日照条件によって発育がこれだけ違ってくるのですから、ブドウの出来がもろもろの条件によって違って来るというのは容易に想像できます。もちろん醸造者の力量や醸造方法がもっと大きなファクターであることに異論をはさむつもりはありませんが、今度機会があったら、同じ作り手による同じビンテージの畑違いの銘柄を試してみようという気になりました。