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サントリー登美の丘ワイナリー技師長が語る特別ワイナリーツアー〜その2

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つづいて貯蔵棟に移動。
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おや、写真がタテヨコ逆ですね。あとで直します。 樽からテイスティングさせてもらったのは、セニエによるカベルネのロゼ。VTはたしか04年だったと思います。やわらかく穏やかな酒質ですが、十分なコクもあり、樽塾によるほどよい熟成感も出ています。美味しいですね。この銘柄、市販されているのかの質問に対しては、近いものはあるようですが、「某タレントさんがまとめ買いしてくださるのですぐなくなってしまう。」とのことでした。(^^;
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土壌のサンプル。たしか火山性の砂質土壌だと言っていたような。違ってたらゴメンナサイ。
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これが世にも珍しい、カベルネフランから作られた「貴腐ノーブルドール」の赤。お値段は20万円超だとか。ここで作られる貴腐ワインについては、B○R10さんが激しく興味を抱いていました。(^^;
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後のテイスティングでも出された、87年のカベルネのボトル。澱がよく見えます。

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いよいよテイスティングの時間です。時間が押していて、かなり駆け足の試飲になりました。
■樽発酵甲州2005
自家農園による甲州ブドウをフレンチークで発酵。和系の柑橘類にバニラが絡む香り。酸がしっかりしていて、洗練された味わい。後半に苦味が少し出るあたりに甲州らしさを感じます。色もよく出ています。少しばかりオークが勝ちすぎているかな‥。

■登美の丘(白)
自家農園産のシャルドネを使用。パッションフルーツ、グレープフルーツ、シナモン、それに火打ち石的な香り。ややミッドに空虚さを感じます。冷やして飲んだほうがよいですね。

■登美(白)
収量制限により育てられたシャルドネを樽発酵、樽熟成。大川所長曰く、「これを飲んだあとでは、最初の甲州には戻れない。」オレンジの皮、トロピカルフルーツ、キンモクセイ、花の蜜、味わいはコクがある一方で、やや酸に緩さを感じますが、時間とともにボリュームが出てきました。丁寧に作られているなあと思わせるシャルドネです。
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■登美の丘2005(赤)
自家農園のCS43%、メルロ30%、フラン22%、プチヴェルド5%。カシス、ブルーベリー、ピーマン、枯葉、それにフローラルなニュアンスも。凝縮感はさしてありませんが、まだ若く、堅さが残ります。3000円を超えるプライスは微妙ですね。

■登美2004(赤)
カベルネ60%、メルロ40%。この年はメルロがよく熟して糖度が26%まで上がったそうで、結果、メルロの比率を上げ、フランは混醸しなかったそうです。黒系果実、土、血、それにビターチョコなど、メルロのキャラクターを強めに感じる香り。味わいはやわらかく熟した果実味を中心にヴェルヴェッティなタンニンと優しい酸とがうまく調和しています。液体の密度感とキメが登美の丘とは比較にならないくらい精緻に仕上げられており、美味しいです。

■特別瓶熟品カベルネソーヴィニヨン1987(非買品)
オレンジがかった色調。紹興酒や枯葉、腐葉土など、かなり熟成の入った香りです。熟成のピークを越え、やや下り坂に入ったところでしょうか。やや乾いたタッチで、しんみりとした味わいです。大川所長曰く、「当時と今とでは樽のかけ方も違う」とのこと。ボルドーのトップクラスと比べてはいけませんが、国産で20年経たワインがこれだけ熟成するかと思うと感慨深いものもあります。我が家でも子供の生まれ年のワインを買っておこうかなと思いました。 場所を移して懇親会。 ここでは、3種の銘柄が出ていました。

■萌黄台園2002
かなりファットなソーヴィニヨンブラン。もう少し酸がビビッドなほうが好みです。
■眺富台園2004
珍しいカベルネフラン100%のボトル。CFにありがちな青っぽさもなく、オレンジピールのような果実味が鮮やか。「登美」の赤の次に気に入った銘柄ですが、お値段も5000円超なんですねぇ。
■塩尻ワイナリー信州メルロ2004
会話に夢中になっていて、記憶にありません。 060837.jpg

懇親会の時に、ワイナリーの方と少しばかりお話しさせていただいたので、その内容をかいつまんでアップします。(一部ニュアンスが異なるところがあるかもしれません。)
Q:(テイスティングアイテムに関して)補糖は?
A: 甲州以外はしていない。メルロは糖度が26度に達した。   

Q:甲州種については、糖度など、品種的な限界があると考えている?
A:当ワイナリーは欧州品種を中心に栽培、醸造してきたが、最近は甲州のワインが評判になっていることもあり、いろいろ取り組んでいきたいと考えている。

Q:甲州種の垣根栽培には取り組んでいないのか?
A:甲州種は垣根栽培にすると樹勢が強くなりすぎる。棚栽培では1本の樹に実がつきすぎるというが、その分、垣根栽培でたくさん植えた場合と同等なまでに根が広がるので、結局は同じことになるだろうと考えている。

Q:シュールリー製法による甲州は出さないのか?
A:シュールリーと明記するためにいろいろな制約が課せられる。それよりもむしろテイスティングアイテムのように樽発酵させることで似たような効果を狙っている。

Q:全般に酸がやさしいものが多いように思うが、テロワールのなせる業か?  (この質問、昨年Busuka-sanさんもしてましたね。)
A:和食にあうような作りを念頭に置いている。そのため、あえてタニックなつくりにしていない、という面もある。

う〜ん、他にもいろいろ話したのですが、時間が経って忘れてしまいました。やはりもっと早くアップしないといけないですね。(^^;

今回、サントリー登美の丘のツアーに参加しようと思ったのは、甲州種のワインがブームになっているこの山梨において、早くから欧州品種を栽培してきた、ある意味反対勢力?的なワイナリーだということがあります。その辺の部分を聞きたかったんですよね。 具体的に言うと、甲州種やベリーA種に対しての(言い方は悪いですけど)ある種の「見限り」みたいな思いがあるのかないのか。もうひとつは、その欧州品種にしても、酸の出方を初めとして、仏産のものとは異なった仕上がりになる。その違いの原因は何なのか。 ‥といったところをもう少し掘り下げて聞きたかったのですが、いかんせん時間が押してしまい、懇親会であまりゆっくりお話しできなかったのが残念といえば残念でした。
また、往復のバスの送迎は楽チンなんですが、今回も往路が激しく混んでいたりして、予定が大いに押してしまいました。自腹でいいから往復は電車にしてもらったほうが楽かな。
現在募集している特別ツアーは、現地集合みたいですね。

そういえば、書くのが遅れましたが、私が参加したのは「ブロガー限定プレヴューイベント」で、募集中のツアーとは細部が異なります。応募される際は行程をご確認ください。

それにしても、今回のツアーで改めて感じたのは、この登美の丘ワイナリーの立地条件のすばらしさ。面積150ha、標高差600m、年間降雨量1000mm(東京は1600mm、ちなみにワイン栽培に適しているのは500-800mmといわれる)。こういう大手のワイナリーが日本の醸造技術の進歩に大きく貢献していることは疑いないところですし、今後も国産ワインの発展のために頑張ってほしいものです。

(08.6.18)