不定期更新コラム

ヤフオク放出事情2
さて、ヤフオクでワインを売ってみて、困ったこととか面食らったことがないかといえば、実は結構あった。今までもプリムールを共同購入したりとか、親しい友人間で売買したりというのはあったのだけれども、赤の他人相手に、ネットというコミュニケーション手段だけで売買するのは、やはり面倒なことだなあと、改めてネットショップの大変さに思いを馳せることになった。

たとえば、私はボトルのコンディションについては神経質なほど気を配っているが、ラベルの状態については、日ごろほとんど気にしていない。なので、出品する際もラベルについてはよほど酷いものでない限り、その旨を記載しなかった。しかし、落札していただいたボトルを改めて検品してみると、その手のものを気にする人にとっては、クレームの対象になるかもしれないなあ、というような汚れやシミがあったりして、改めてその旨、落札者に確認したりとか。

あるいは、キャップシールの回る回らないや噴いた跡のあるなしについても、紹介文に記載したほうが親切だろうと、何の気なしに記載していたが、これって考えてみれば、仮に配送時に噴いてしまったりしたら、トラブルの元になるなあ、とか。

これらは、ネットでワインを購入する際にも同様のリスクなのだが、ヤフオクのキモいところは、落札後のキャンセルについてかなり厳格なペナルティを課せられることだ。具体的には、出品者都合でキャンセルした場合は、落札者とオークションマスターの両方から、自動的に「悪い出品者」という評価が下される。すなわち、キャンセルにより、2件の雨マークがついてしまうわけだ。
こうした出品者の評価は、ヤフオクにおいては信用の証であるから、雨マークがつくことは、それ以降においてかなりの痛手になる。
(しかしながら、この硬直化した仕組みはもう少しどうにかならないものかと思う。出品者が、落札品を梱包時に誤って落として割ってしまい、仕方なく取引をキャンセルとしたら、それだけで2ポイントの雨マークがついてしまうということだから。)

発送のための箱の手配も面倒だ。私は、配送時の破損など不測の事態を恐れて、ダンボール箱については(ハーフサイズなど一部の例外を除いて)クロネコヤマトが用意するものを使用することにした。
ところが、最初に近所の集荷所から届いた箱は、ボトルを固定する発泡スチロールの孔が小さすぎてブルゴーニュ・ボトルが入らないのだ!業者が指定するワイン用のダンボールが、ブルゴーニュタイプのボトルを収容できないなんて笑い話にもならない。
その後、調べてみると、この箱は旧タイプであることが判明。今は、ダンボールが二重底になっているひと回り大きなタイプが主流となっている。
しかし、この新しいタイプの箱にも悩ましい点がある。というのも、サイズが一番小さい60と80との間の実に微妙なラインなのだ。寸法はギリギリ収まったとしても、緩衝材でグルグル巻きにしたりしていると、重さでひっかかってしまうこともあり、集荷所の担当者の裁量次第で、最低サイズの料金になることもあれば、その上の料金にもなることもあった。実際の差額は100円程度なので、自分で送料を払う場合はさして問題ないのだが、送料を着払いにすると、こんなことでも落札者からクレームがつくかもしれないと神経を使う羽目になる。

クール便の配送も鬱陶しい。というのも、クール便は、コンビニでは受け取ってくれないので、集荷所まで持って行かねばならないからだ。電話して家に引き取りにきてもらってもよいのだが、そうすると、料金が100円余分にかかり、これまた上記のような着払い料金の問題が発生する。

とまあ、かようにいろいろ気を配らなければならない事柄があることを知らずに、仕事が忙しい時期に、一度に落札のタイミングが重なるような出品の仕方をしたおかげで、その後の落札者とのメールのやりとりやら、振込の確認やら、発送やらでまったくもって嫌になるほど忙殺されてしまった。

ちなみにこうした作業には、私自身、相当気をひきしめてあたったつもりだったのだけど、最後の最後になって、指定日に発送するのを忘れるという凡ミスを犯してしまった。
このときは週末の落札だったのだが、着指定が翌週の土曜日ということで、かなり間隔が空いていたことから、発送ギリギリまでセラーで保存しておこうと思ったのが仇になった。セラーに入れっぱなしにしたまま、他の落札品と混同して送るのを失念してしまったのだ。落札した方から、ブツが届かないとのメールをいただくまで、自分が発送し忘れたことに気づかなかったのだから、全くもって情けない。

一方で、落札者とのやりとりで困ったことはなかったかと言うと、ほとんどの方は、すぐにメールに返事をくれるし、振込も迅速にしてくれたが、中にはメールを送ってもなかなか返事をくれない人とか、振込むと言っておきながらなかなか振り込んでくれない人もいた。今でこそ、ネットバンキングを申し込んだので手元で振込確認ができるようになったが、取引を始めたころはネットバンキングできる環境でなかったので、毎日朝夕、UFJ銀行のATMまで行って確認しなければならず、これが相当な負担になった。正直、今回取引させていただいた落札者の方の中には、(ごく一部とはいえ)「晴れマーク」の評価とするのはいささか心外な方もいたのだけれども、あまりよくない評価をつけて、その腹いせに自分に対しても雨マークをつけられるのが怖くて、結局晴れマークを献上してしまう。この辺のヤフオクの仕組みももう少し練って欲しいものだなあ、と思う。


…そんなこんなで、だんだんヤフオクそのものが負担になってきたところに、5月になり、外気温も上がってきたので、いったん店じまいすることにした。前述の発送ミスが大きなきっかけになったことは言うまでもない。現時点では、秋になったらまた再開しようと考えているが、、今回のやりとりでいろいろとノウハウを仕入れたので次回はもう少しスマートに取引もできようかと思う反面、仕事や家庭が落ち着いている時期でないと、ある程度の本数を扱うのは、自分の首を締めることになりかねず、鬱陶しいなあ、とも思う。

最後に、ヤフオクの収支であるが、それなりに魅力ある銘柄を投入したこともあって、まあ思っていたよりは、良い価格で買ってもらえたな、というところ。しかし、購入後の保存コストまで勘定に入れると、間違いなく赤字だろう。もともと儲けるために始めたものではないので、その点については後悔していない。

加えて、あたりまえのことであるが、マニアックで愛好者のパイが小さそうな銘柄はなかなか買い手がつかないことも実証された。ブルゴーニュについてはかなり高価なものでも落札していただけた一方で、89グランジやマルセル・ダイス、タルデュ・ローラン、ビンテージポートなどは最後まで売れ残った。(もっともこれらは値段の設定が高めだったということもある。開始価格を下げれば買い手が着いたのだろうが、あまり安売りするぐらいなら、自分で飲んでしまおうという割り切りがあった。)したがって、今の自分のストックが、その気になればいつでも現金化できる、というような甘いものではないのは、肝に銘じなければならないな、と改めて思った次第。

そう、苦労して収集したワインだし、本来自分で楽しむのが一番なのだ。

ちなみに今回のワインの売上は、予定通り、下の子の2003ボルドープリムールの購入代金と、新型VAIOノートの購入資金と相成った。


(2005.5.25)