超不定期更新コラム

デフレ時代のワイン選び〜1

不況風が身に染みる。世の中デフレだといっても、吉野家やマクドナルドの価格が下がるのを喜んでいる余裕があるうちはまだよかった。それがいつしかボーナスが減り、給料が下がり、周囲の企業がバタバタと倒産しはじめるにつれて、自分もある日突然リストラにあうのではないか、会社がどうにかなってしまうのではないかなどといった漠然とした不安を肌で感じるようになってきた。そうなってくると、自然と財布の紐も固くなり、無駄な出費はなるべく抑えようという気持ちが強くなる。

しかし、このようなご時世でも、ワインには金がかかる。本当に金がかかる趣味だと思う。なにせ、発泡酒が一缶100円台前半で買える時代に、2000円出しても、「安ワイン」といわれてしまう世界である。セールで、DRCやルロワやシャトー・マルゴーを安く買ったと喜んでいても、ふと我にかえればちょっとした背広や靴が買えてしまう価格であることに気づき、愕然としたことってありませんか。

…などとボヤいてみても、身も心も?どっぷりとワインに浸かってしまった私が、不況だからといって、いきなりワインを断つことなどできるはずもない。
それでは、こんなご時世に、なるべく出費を抑えながらも、グレードダウン感の少ないワインライフを送るにはどうしたらいいのか。そんなことをつらつらと考えている昨今。以下に私が実践しているデフレへの対抗策?を順不同に挙げてみる。

■ 年間のワイン予算を決めておく。
ワインで家計破綻しないためには、購入やワイン会への参加を計画的に行うことに尽きる。防衛費予算ではないが、「年収の○%」というように決めておいて、それを月ごとに配分するというのはどうだろうか?熱を浴びる心配のある6〜9月頃はあまりワインを買わずに、その分冬場に厚めに予算を配分する。そうすると、結構冬場には使えることに気づくはずだ。(とかなんとか理由をつけて、冬場のセールについ買い込んでしまうのであるが。)ちなみにこの方式の導入により今年の我が家のワイン予算は昨年よりかな〜り減少することとなったのだが。

■ セラーに入りきらない分は、「絶対」買わない。
買いすぎないためには予算だけでなく、他の「抑止力」が必要だ。私の場合、セラーのサイズがあまり大きくないことがうまく抑止力として働いてくれている。ネットのワインショップが広まった当初はついつい面白くて買い込みすぎてしまい、結果、多くのワインたちを押し入れで夏を越させるようなことになってしまったが、最近はうまくやりくりをして、セラーに入りきる分だけを細々と購入する習慣がついてきた。もっとも、時として「足りないから買い足す」のか「新しいワインを買いたいから消費する」のかわからなくなるときがあるが。なお、他に「家人の白い目」とか「代引き決済」なども抑止力の働きをするらしい。

■安ワインの購入時はその筋のサイトなどを参考に。
晩酌で年間100本前後開ける我が家の場合、日頃飲むワインの価格を1000円下げるだけで単純に年間10万円の節約になる。しかし、この「単価を1000円下げる」というのはまさに気合の踏み込みであって、例えば一般的な3000円台前半と2000円台前半のワインのクオリティの差は歴然としている(と私は思う)。もちろん1000円台、2000円台だって美味しいワインはたくさんある。あるが、同時にハズレワインをひく確率も飛躍的に高まる。加えて安価なワインの場合、配送や保管にコストをかけていない場合が多いので、コンディションの悪いものに出くわす確率も低くない。そう、コンスタントに美味しい安ワインに出会うということは、実はとっても難しいことなのだ。よって、私はこのクラスのワインをチョイスする場合はネットの評判、たとえばココとか、ココとかをじっくり参考にして選んだりしている。

■ セール品、バーゲン品に安易に飛びつかない
 セール品は上手く利用すると、本当に安く買えてお得な場合もあるけれども、逆にイカれたワインを掴まされることもあるので注意が必要だ。特に、このご時世だと経営状態の悪くなった店やインポーターから流れてくるバッタ品のようなものがこれからも増えてくると思われる。そうしたものは大抵十分な保管やケアがされていないだろうから、痛んだワインをつかまされる可能性が大きい。「安かろう悪かろう」には要注意である。(…と、自分自身への戒めの意味を込めて…(^^;。)


■ 高額なワインを買うときは、飲むときのTPOを考えて。
1万、2万のワインを日常的に家で飲む人ならいざ知らず、我が家などでは、2万円もするワインをひとりで飲むことはない。たぶん絶対ない。あるとすれば、ワイン会に持っていくか、客人をもてなすときか、ぐらいのもの。では、そんな持ち寄りワイン会が年に何回あるか。客がが来てワインを開けることが何回あるか。その辺を逆算してゆくと、年間にこの手のワインを購入すべき本数が見えてくる。また、前にも書いたけれども、持ち寄りワイン会でのニーズがない高額ワイン(例えば私の場合、1万円以上のボルドーとか、イタリアとか)は、いくらセールで安く買っても、「嫁ぎ先がない」状態となって、セラーを圧迫するばかりになってしまう。要は「飲まないワインは買わない」ということだ。

■ 発泡酒、ビールなどとうまく飲みわける。
 こういう時代になると、改めて光るのがビールや発泡酒のコストパフォーマンスのよさである。それほどアルコールに強くない私の場合、350mlなら2缶も飲めば気持ちよく酔える。価格にして400円ほど。この値段で私を満足させてくれるワインはなかなかない。
以前は、「限りある人生の晩餐の伴に、ワイン以外のアルコールを飲んでいるヒマはない」なんて思ってた時期もあったが、うまく他の安価な酒とローテーションを組むことで、ワインを飲む頻度を減らし、結果として、ワイン1本あたりの単価を高めにキープできるのなら、その方がよいかも、と思う今日この頃である。

■ メジャーブランドの格落ちよりは、知られていない作り手。
 ボルドーの格付けシャトーのセカンドとか、著名ドメーヌのACブルゴーニュとか、ニューワールドのメジャーな作り手の普及品とか、安価に買えるワインもあるけれども、そうしたものよりは、全般に、無名の産地や二流の産地の頑張っている作り手のものの方がレベルが高いように思う。まあ、こればかりは嗜好の問題なので人それぞれだけれども、そうしたお買い得な作り手を探すのもワイン選びの醍醐味のひとつだということで。

■ 2日〜数日に亘って飲めるワインを探す。
ワインの不経済な点は、1本何千、何万円もするわりに、日持ちがしないことだ。真っ当な味、香りを保っているのは抜栓後せいぜい数日ぐらいで、年代モノやコンディションのややよくないものなどは、抜栓当日限りということもよくある。デイリーで消費するためには、なるべく日持ちのするもの、すなわち若くて状態のよいものを探したいところである。目先を変えて、「甘口ワイン」なども、冷蔵庫に入れておけば1ヶ月ぐらい持つので、無難なチョイスだったりする。 

■ 身の丈にあった「自給自足」を目指す。
 大抵の人は、ワインセラーのスペースに制約があるため、セラーには高額なワインを優先的に入れたがる。しかし、高価なワインというのは、熟成期間も長く、飲み頃になるまで時間がかかる。自分のセラーで飲みごろになるのを待つというのはワインの醍醐味ではあるけれども、限りあるセラーを有効活用した方が幸せなワインライフを送れる場合もある。たとえば、2000〜3000円程度で購入できる99ボルドーの中堅どころやブルゴーニュの村名クラス、スペシャルキュベでないフツーのローヌなどを何本か買ってセラーで寝かせておく。このクラスなら数年の辛抱で飲み頃になるし、単価も安く上がり、適度に熟成したワインを楽しめる。まさに自給自足の世界。私が最近目指しているスタイルはまさにコレなのだ。