超不定期更新コラム

セラーが故障した!!(後編)

とにかく、まずはワインを避難させることにしようと決意。

幸い、畳の張替え業者が作業を終えたので、和室のエアコンを18度に設定して、ここにワインを避難させることに決めた。

セラーのワインをすべて和室に移動するのは、「静養中」の身にはかなりこたえた。部屋から部屋への移動とはいえ、なにせ、合計100本近くである。
一度に両手に3〜4本抱えて持っていったので、全部移動するのに30回前後も往復したことになる。広い家ではないので、移動距離はなんでもないのだけど、レイアウト上、いちいちドアをよけるようにしなければならないのと、間違っても落としたり倒したりしてはいけないというプレッシャーとで、無茶苦茶ストレスの溜まる作業だった。
繰り返すが、本来なら、今日は私は、「家で安静に」してなけりゃならないところなのだ…。
まあ、これも子を思う親心のようなものだが。(違うって。)

ちなみに、セラー内のワインを改めて数えてみると、96本あった。
「収容能力100本」は、棚をすべてとりはらってボルドー積みにした場合の本数である。実際の使用時は、その7割が目安と言われているから、私のセラーはずいぶんと押し込んで、もとい、収容していたことになる。

さて、6時半を回り、ワインの移動がひと息ついた頃、ようやくサービスの担当者から電話があった。なんでも間違って、私の「自宅」の方に電話していたらしい。

「20時半過ぎになってしまいますが…」

とのことだったが、こちらは何時でも構わない。今日来てさえもらえれば、と返事をした。

とりあえず、ワインの安全を確保できて、こちらも考えるゆとりが出てきた。
セラーが治るにせよ、治らないにせよ、中のワインの半数は、明日寺田倉庫に持っていこう。
どのみち、98のボルドーだとか99のブルゴーニュなどは、当分飲む予定はないのだ。万一セラーが再び故障したりして、せっかく買い揃えたものを無駄にするのも馬鹿馬鹿しい。
セラーに残しておくのは、当面、近々飲もうと思っているものか、デイリークラスのものに留めることにしよう。

そんな思い巡らしている私のもとへ、環八の混雑にハマってしまったとくたびれた顔で、サービスの担当者がやってきたのは21時近くなってからだった。

後部を外して、症状をチェックした彼はひとこと

「温度センサーからの信号が来ていませんね。」

そうか、やっぱり電気系統の故障だったのか。

修理は、後部の該当部分をユニットごと交換。

しかし、ユニットを交換して、はい、終わり、というわけにはいかず、その後もいろいろと作動テストを繰り返せねばならなったようで、結局作業がすべて終わったのは22時半を回っていた。
週末のこんな時間に、 狭いセラースペースの隙間に入り込み、汗まみれになって作業していたサービスマンを思うと、ちょっと心が痛んだが、これもすべてはセラーの故障が発端である。

サービスマンは、
「念のため、明日まで様子を見てください。」
と言い残して帰っていった。
ちなみに代金は、ギリギリ保証期間内ということで、無料。
作業明細には、「サーモスタット不良。冷却ヒーター、加温ヒーター切替確認済、ヒート確認OK」 と書いてあった。交換部品は、「THERMOSTAT CONTROL ASSY」だった。

私自身も、本当にこれでセラーが治ったのか、一抹の不安があったので、 この日は実家に泊まることにした。もちろん寝室のワインたちはセラーには戻さず、一晩様子をみることにした。

普段和室で寝ている母には、申し訳ないが、居間で寝てもらい、私は自室で、 夜中に三度ほどセラーの設定温度を上げたり下げたりして、入念にチェック。
その結果、まずは無事作動していることを確認できたので、朝方、ストックの大半をセラーに戻し、自宅に帰るその足で、若いビンテージのブルゴーニュを中心に3ケースほどを別途寺田倉庫に預けた。

夜になって、再度実家に電話したところ、セラーは無事14度を保持している、とのこと。

とりあえず、こうして、セラーの故障騒動は一段落した。

繰り返しになるが、壊れたのがこの季節だったのは本当に不幸中の幸いだった。
これが夏場だったらと思うと、まさにぞっとする。
そして、ふだんは月に一度も行かない実家へ2週続けて行った、まさにその時にセラーが故障したというのも、偶然とはいえ幸いなことであった。
反面、今回の件は静養中?の私にとっては、一日ドタバタとさせられたという意味で、バッドラックではあったが。(これがこの後の回復に悪影響を及ぼさないことを祈りたい(^^;)

エレクトラックス・ジャパンの対応は、最初、蕎麦屋の出前のようで、ちょっとなあ、と思うところもあったが、終わってみれば、週末の店じまい間際にもかかわらず、よくやってくれたと思う。
特に、サービスの担当者は、黙々と、しかし的確によくやってくれたし、 日曜日には、休みにもかかわらず、 「その後どうですか。」
という電話までいただいた。
感謝である。


とはいえ、こういう経験をしてしまうと、「セラーに保存する」ということの意味をもう一度問い直してみたくなるのもまた事実だ。

クルマを運転するとき、「ブレーキが効かなくなったら…」とか、「ハンドルがきれなかったら…」などと心配しながら運転するドライバーはまずいないだろう。
ワイン好きにとってのワインセラーというのは、まさにそういうものだと思うのだが、 残念ながら、セラーの場合は、まだそこまで信頼してよいものとは言えなそうだ。

なにせ、私の狭いワイン仲間の周囲でも、セラーが壊れた、という事例を3件聞いている。メーカーはそれぞれ異なるが、それを差し引いても、 決して少ない数ではないだろう。

そう、 そして、次は、このコラムを読んでいる貴方の番かもしれないのだ。

とりあえず私は、当面保有ワインを3ヶ所に分けるという「リスク分散」で対処することにした。加えて、エアコンのない実家の部屋には、早晩、新たにエアコンを設置しなければならないだろう。

聞けば、エレクトラックス・ジャパンのサービスの担当者は二人しかいない、とのこと。
今回、とてもよくやってくれた彼等の余暇確保のためにも、世に出回っているサイレントカーヴの故障が頻繁に起きないことを祈りたい。

(02.3.10)