超不定期更新コラム

ボルドービンテージ考

最近ブルゴーニュの迷宮に迷いこんでいる私だけど、本来はあくまでボルドー党のつもりでいる。ただ最近あまり本格的にボルドーを飲む機会がなかっただけなのだ。そんなところに、GWの前後に一連のすばらしいボルドーを飲む機会に恵まれた。

ちょうど、エノテカの垂直試飲などを通じて自分なりに頭に描いている各ビンテージの印象をまとめたいと思っていたので、最近飲んだボルドーの感想と併せて、以下ににゅぶにゅぶと(?)私のボルドービンテージ感を書きつらねてみたい。
といっても、私はあくまで、かけだしの一愛好家。プロの方々やワイン歴の長い方々のようにたくさんの種類を飲んでいるわけではないので、ビンテージの評価はあくまで私的な感想の域を出てない。

いや、この年は自分の印象ではもっとこうだ、というのがあったら、ぜひ掲示板やメールにてご意見ください。そういったご意見をもとにいずれS'sWine版ビンテージチャートなぞ作れればいいなと思ってるので。

98年(★★★★?)は、難しい年、シリアスな構成、などといわれてきたので、94年みたいなイメージかと思っていたけど、実際に飲んでみると、意外や今すでも美味しい。グランヴァンはやや細身ながら、タンニンの緻密さや酸とのバランスが上質。特に世田谷太郎氏宅でいただいたムートンが実にすばらしいと思っていたら、先日のWA誌でも点数が大幅アップになっていた。ラトゥールはそれに比べると明らかに線が細く、繊細なイメージだった。
右岸はすばらしいらしいけど、まだ私は未体験。近いうちに飲んでみたい。

97年(★★☆)は個人的にはピンと来ない年。果実味豊かで若いうちから美味しく飲めてジューシーな印象だけど、逆にいうとストラクチャーがヤワで、ボルドーらしい骨太さに乏しい気がしている。こういうワインを10年20年と置くとどのように熟成するんだろうか?

96年(★★★★☆)は大きな年。各要素がしっかりしていて、凛とした酸がストラクチャーを支えているような感じ。1級やスーパーセカンドはまだまだ「待ち」だろう。Shinさん宅でいただいたラフィットはRP100点らしい堂々とした味わい。エノテカで飲んだマルゴーもすばらしかったけど、やっぱり今飲んでしまうのはもったいないと思った。デイリーに飲んで意外なほど美味しかったのがラグランジュ。中堅クラスのものは今飲んでも美味しいのかもしれない。
ちなみにこの年の右岸は左岸ほどよくないらしいが、考えてみれば私はこの年の右岸ってほとんど飲んだことない。

95年(★★★★)は、長熟型でしっかりした構成のワインなんだろうけど、今は機嫌の悪い時期にあるものが多いようだ。世田谷太郎氏宅のムートン、信濃屋で飲んだラトゥール、いずれも閉じ気味だった。再び開いてくるのはいつ頃なんだろう?早熟で知られるレゾルム・ド・ペズなどはおいしかったけど、中堅クラスは他にも結構美味しく飲めるようになってるものもあるだろう。

94年(★★☆)は個人的にもっともよく飲んでいるビンテージのひとつなんだけど、この年はとにかくタニック。粉っぽいタンニンが目立ってボルドーらしいといえばとてもボルドーらしいんだけど、はっきり言ってシブイ。右岸の方がバランスがいい。

93年(★★★)は世間で言われているよりはずっと楽しめると思う。今飲んで美味しいものが多いのでは?この年のもので、すごく印象に残っているのがムートンクリネレヴァンジルも悪くなかった。

92年(★)は率直に言ってダメな年。水っぽくて薄い。でもそんな中で、すばらしかったのがラトゥール。さすがオフビンテージに強いと言われているだけある。

91年(?)はそもそも市場であんまり見かけないし、ムートンのラベル目当てなどというのでなければ、あえて買う理由もないだろう。


90年(★★★★★)は、わりと酸度が低くて、ストラクチャーはがっしりしているというよりもしなやかで官能的、ちょっとデカダンス、というイメージ。マルゴーはまさにその典型だった。シュバルブランラフィットなどもしかり。ただ、正直な感想を言えば、90マルゴーについては、それこそ「世紀の大傑作」のように言われているのはちょっと誉めすぎではないかしらん。

89年(★★★★★)は果実味豊かで、ジューシー、ふくよかな味わいという印象。85年と似た系統だけどこちらの方がより濃縮感がある。世田谷太郎氏宅のムートンはRPの点数以上にすばらしかったし、個人的にもっとも注目している年なんだけど、残念ながらあんまり飲む機会がない。

88年(★★★☆)…あんまりよい印象がない。酸が強かったり、余韻が短かかったりと、どこかアンバランスなイメージがつきまとっている。この年ってちなみに、ブルゴーニュも良い年といわれるわりに、イマイチな印象のものが多いような気がする。

87年(★★☆)…84年と並んでバッドビンテージの印象が強いけど、それなりのグレードのワインは軽いなりに今心地よい熟成をしているものがあると思う。高い値段を出してまで買うほどのもんではないと思うけど。

86年(★★★☆)…タニック。木質的であんまり色気がなく、シリアスなイメージ。 世間の評価は高いが、美味しく飲むにはまだ時間が必要。以前シノワで飲んだオーブリオンは状態もよく、これぞボルドーという飲み口だった。ラフィット、マルゴーについては、これらの銘柄自身のイメージとビンテージとのキャラクターとにアンマッチが感があるけど、いずれも骨太で先が長そう。ムートンは例外的なほど巨大で、ちょっとボルドー離れした味わい。

85年(★★★★☆)…果実味豊かでたっぷりしており、心地よく熟成しているものが多い。86年とはまさに対照的で、今飲みごろじゃないかしらん。ムートンは翌86年と対照的な、優美で果実味豊かな飲み口。 Shinさん宅でいただいたル・パンも力強さよりしなやかさの先立つ魅惑的なワインだった。かもしださん宅でいただいたオーブリオンは蔵出しで状態が完璧だったため、まだ飲むのに早いぐらいだった。

84年(★★)…80年代でもっとも劣るとされるビンテージだけど、グランヴァンの状態のよいものはそれなりに美味しく飲めたりするので、捨てたもんじゃない。ラスカズ、ムートンなどが印象に残っている。

83年(★★★☆?)…よくわからない年。マルゴーなんかはよかったけど…
この年はブルゴーニュも良かったり悪かったりでよくわからない。

82年(★★★★★)…戦後最高クラスの年といわれているが、高価なので、なかなか飲む機会がない。物の本には何十年も持つように書かれているけど、飲んでみると中堅クラスのものはどれもかなり熟成は進んでいて、飲んでいい頃だと思う。まあ、このままの状態で長く飲めるということなのだろうけど…。ムートンは3度飲んで3回目の今回がもっとも開いていたが、本領発揮にはまだ早いかもしれない。

81年(★★★)…目立たない年だけど、値段も安めだし、悪くないと思う。ムートンはイマイチだったが、ラスカズラトゥールはかなり良かった。ちょうど熟成のピークでお買い得感あり。

80年(★)…私が飲んだことあるのはオーブリオンだけだが、これは率直に言って、1級の水準にあるとはいえないものだった。市場でもほとんど見かけないし、あえて探す価値もないだろう。

70年代およびそれ以前については、まだあまり本数を飲んでいないので、またいずれ。