超不定期更新コラム |
クルマのこと、ワインのこと。 |
正月だけど、新年に全然関係のない話題。 昨年はワイン会やパーティなどで、ワイン好きの方々といろいろと話をする機会があった。ワイン会といっても、一から十までワインの話をしているわけではなくて、いろいろな話題になるのだけど、不思議なことにクルマの話題になることはほとんどない。音楽だの本だのテレビだのあるいは旅行だのという話題は結構出るのに。 ひるがえって私はといえば、ポンコツのBMW318ti(←BMWで一番安いヤツ)をかれこれ5年乗っていて、当分代えるつもりもなく、余分な金をつぎこむ意思も毛頭なく、あと5年は今のまま乗ろうと思っている。というか、このクルマ、今はすっかりカミサンの足と化している。 そもそも、ワインに金をつぎこみすぎているおかげで、ボロボロになったワイシャツを新調する余裕すらない私であるが、マックとワインに凝る前は長いことクルマに夢中だったのだ。 好きなメーカーは今も昔もBMW。一時期「六本木のカローラ」などと揶揄され、ナンパグルマの代名詞みたいに言われたが、これはまったくもってお門違いな批判であって、このメーカーほど、五感に訴える官能性と機能性を両立したセダンをリリースしているところはない、と私は思う。(たぶんに贔屓目なところはある) アクセルを踏み込むと、まさに絹が擦れるような「シャーッ」というすばらしい音とともにタコメーターがスムーズに、それでいて重々しく重厚に上昇する。国産のよく出来たエンジンは、回ることはよく回るんだけれども、回り方がまるでモーターのような軽さがあるのに対して、BMWのエンジンはまるでパイプオルガンの演奏を目の当たりにしているがごとき質感。ピストンやシリンダーなどの各部品がそれぞれにきっちりと仕事をしている、というのが実感できるような回り方なのだ。 とまあ、なんでこんな話をしてきたかというと、クルマの世界における日本車VSドイツ車という図式がワインの世界でいうフランスVSカリフォルニアとなんだか似ているなあ、と思うからだ。 日本の自動車メーカーは長いことドイツ車を目標にしてきた。具体的にはメルセデス・ベンツであり、VWであり、ポルシェであり、とったところだ。 そして、日本車ははたしてドイツ車に追いついたのか否かという議論は自動車ジャーナリズムの間では常に論ぜられてきたテーマだった。 ところが、日本の自動車評論家たちはなかなかそれを認めようとはしない。ハードの性能、たとえば、加速性能やコーナーリング性能、静粛性など個別のポイントでは上回っていても、欧州車が持っている数値に現れない「テイスト」を持ち合わせていない、というのが彼らの反論の主旨だった。 この議論は多分に日本人の「欧州コンプレックス」も影響していたらしく、むしろ第三者たるアメリカのジャーナリズムの方が、たとえばメルセデスCクラスとホンダ・アコードを比較して、「総合的にはメルセデスの方が上回るが、2倍という価格差を考えれば、アコードの方が買い得だ。」などとあっけらかんと書いていたものだ。 その後円高の影響で、アメリカ国内でも日本車の価格的な優位は薄らぎ、全般に日本車のほうがアメリカ車より高いなんていうことにもなったが、この頃になると日本車は価格の安さよりも、品質の高さでドイツ車とはまた別の、確固たる地位を築いていた。 今、私は自動車業界を離れ、クルマのことにも疎くなってしまったので、日本車VSドイツ車論がその後どうなっているのかは知る由もない。 話をワインに戻そう。 私自身の経験でいえば、カリフォルニアのトップクラスのピノはあんまり飲んだことがないのでなんともいえないけれども、キスラーとか、カレラとかセインツベリーの単一畑とか、ブルゴーニュのトップクラスに比肩しうるすばらしいものに出会っているのは事実だし、まだ飲んだことはないが、フラワーズとか、ウイリアムセリアム、マーカッサンなどもすばらしいと聞いている。 |