超不定期更新コラム |
86ビンテージ水平試飲 |
先日、やまやの30周年セールとやらの企画で、ペトリュス、オーブリオン、 ラミッションオーブリオン、シュバルブラン、コスデストゥールネル、ピションララ
ンドという錚々たる銘柄を1万円ポッキリで試飲できる機会があった。
相変わらずグラスは分厚く、底が浅めのもので、試飲用としては、ギリギリの レベル。そして当然のように立ち飲み。商品が陳列されているテーブルの隙間で飲むペトリュスってのもなんだかなあ、と思いつつ、6銘柄で 1万円じゃ、文句はいえない。 もうひとつ今回テイスティングにあたってシンドかったことがある。 それにしても、そんな環境下で、1時間半も突っ立って飲んでいた私って、と我ながら 感心してしまうが、なにせ今回の試飲は抜栓当初閉じていたものが多かった ので、開くのを待っているうちに時間がたってしまったのだ。 ここで、86年という年について、おさらいをしておこう。 もっと具体的に見ていくと… ・この年は9月初めまでは酷暑が続き、水不足の状態にあった。 ちなみにボルドー好きは86と聞くと心が弾んでしまうが、ブルゴーニュではあんまり良い年ではないので、ご注意のほどを。 さて、そんなことまではおさらいせずに試飲に臨んだ私であったが、それでも飲んでみてまず感じたのが、 コスとピションラランドというメドック2銘柄の手強さ。パーカーさんの点数はコス95点、ラランドが94点とど ちらも高いのだけど、今の時点ではどちらも内向的でタンニンの目立つ味わい。今飲むのなら、ある程度早めに抜栓するか、デキャンティングが必要だろう。コスの86は以前エノテカで飲んだ時に92点をつけていたのをあとで自分のHPを見返して知ったのだけど、その時は、蔵出し& ウルトラデキャンタ使用だった。 一方で、今回飲みやすかったのは、ラミッションオーブリオンとシュバルブラン。 オーブリオンについては、ちょっとわからない。1年半ほど前にシノワで飲んだ物は力強くてまだ開けるには早すぎたと思わせるものだったが、今回のボトルは、最初、厩臭のようなちょっと不快な香りすら感じたし、味わいもなんというか疲れたようなひなびたような感じで、コンディションが悪かったのではないかな、と思わせるものがあった。 そして、ペトリュスである。 今回の86はどうだったか。 味わいはどうか。これも香りと似たような印象で、とにかくスムーズでなめらか。シルキーという言葉がこれほどふさわしいワインもない。ただ、そのスムーズさの裏返しか、口の中での広がりがあまり感じられず、スーッと喉元を通りすぎてしまうのだ。アフターには長い余韻を残し、これはただ者でないな、という感じなのだけど、いかんせん中間の広がりに不満が残る。決して脆弱ではないのだけれども、繊細で、スタティック。飲む側が集中力を必要とされそうなワインなのだ。 まあ、ペトリュスも先日のラフィットと同様、ドカンとインパクトを感じる類のワインでないのかもしれない。そうだとしたら、小さいグラス一杯の試飲ではなかなかはかりきれないものがあるのだろう。 あるいは、81にしても83にしても86にしても、パーカーさんなぞはあまり評価していないビンテージなので、点数の高いビンテージになるとまた違うのかもしれない。 熟成して真価を発揮するまで時間のかかるワインだとも聞いているので、まだ早かったのかもしれない。 いずれにしても、ペトリュスと知ったうえで飲めば、やはりこのワインには底知れぬポテンシャルがあると思ってしまう。一緒に飲んだシュバルブランやラミッションの密度感がやや大味に感じられてしまうほどに。 でも、ここでもし私が「芸能人格付けチェック」みたいに、このペトリュスと、たとえばクナワラのカベルネとか、リベラ・デル・デュエロの良い造り手のものとかを並べて出されたら、正解できるだろうか? 片方はペトリュスだと、あらかじめ言われていればわかるかもしれない。でもそうと言われてなければ、はっきり言って当てる自信がない。 そういうワインなんだろうか、ペトリュスって? |