超不定期更新コラム

ラフィット垂直
久しぶりのエノテカの垂直試飲。最近垂直とか水平が楽しくて仕方ない(←変?)ので、こういうイベントは大歓迎だ。

それに、今回はいつも以上に期待していたわけがあって、それというのも、メドック1級筆頭にもかかわらず、今までどうも「こりゃ美味しい!」ラフィットに出会ったことがなかったのだ。
権威に弱い私としては、自分の舌よりも世間の評判を信頼して(^^;、きっと飲み頃を外したんだろうとか、ボトルのコンディションがよくなかったのではとか、勝手に思いこんでいたんだけれども、さすがにこれだけ並べて飲む機会となれば、白黒はっきりするというもんだ。

ちなみに、世間の評判はすごく高いのに自分はあんまり美味しいと思ったことがないという銘柄ってありませんか?私の場合、その双璧がペトリュスとラフィットだ。

さて、いつもは昼の早い時間の部に行く私だが、今回は前日がShinさんの大カルトワイン会だったので、きっと朝は辛かろうと午後2時からの部を予約しておいた。ちなみに金曜日は結局3時すぎまで飲んでしまい、翌日も午前中いっぱいは頭がガンガンしていたので、この「読み」は見事的中したわけだ。(苦笑)

試飲はラフィット以外にも、同じ経営になるデュアールミロン、レヴァンジル、リューセックなども供されたが、酒量の多くない私としてはこれらのワインで酔っ払って肝心なラフィットの時に酩酊していては大変と、すべて吐き出しながらの試飲だった。ああ、もったいない。

ちなみにこの中ではレヴァンジルが意外なほど良かった。93というあまり恵まれないビンテージだったが、柔らかくバランスがとれて染み入るような味わい。デュアールミロンは周囲では試飲すらしなかった方も結構いたようだけど、なかなか悪くないじゃん!と思った。96という偉大なビンテージにおいても、力強さや凝縮感とは対極にある、繊細なバランスとシルキーな喉越し。
リューセックは凝縮感はあるんだけど、正直鈍重な印象が拭い切れなかった。コッテリしすぎているというか…。もう少し酸のキレが欲しいところ。

ということで、肝心のラフィットについてはどうだったか?

いきなり結論から言ってしまうが、ラフィットって、いいワインだと思ったんだけど、 少なくともシュバルブランやムートンで感じたようなとっつきやすさはなくて 、ちょっと 「気難し屋」なのかなあ、と思った。
最近は若いうちから飲みやすいスタイルに変わりつつあるようだけど、 今回主に飲んだ70年、80年代 はとてもクラシックなボルドーという印象。
ストラクチャーがしっかりしているんだけど、全般的には細身でスリムなスタイル。凛とした酸があって、背筋を伸ばしたようなイメージがある分、果実味が開いているかどうかで印象がかなり変わってくる。その果実味についてもポイヤックでよく見られるブラックベリーのような黒い果実よりはむしろ赤系、あるいは赤と黒の中間ぐらいの果実味という感じ。それから良い意味でも悪い意味でもハーブっぽいフレーバーとウッディな香りが特徴的で、なんというか(ロワールなどとはまた違って意味で)植物的な印象のあるワインだと思った。
中でも よく言われる「杉の木の香り」というのは、ああ、まさにこれが杉の木なんだなあ、とわかるほど特徴的。特に86年などでは杉の香りがよく感じられた。

86年と言えば、これがちょっと意外というか心外。ご存知パーカー氏の 100点ワインだが、正直、あれっ?という印象だったのだ。 木質的なフレーバーに支配されていて、果実味がなんというかぎごちない。もちろん構成の緻密さは出色なんだけど、個人的には偉大な82はもちろんより甘く官能的な90にもかなり水をあけられていると思った。
そんなわけで、前日86を購入予約していた86を90に変更すらしてしまった私だが、翌日掲示板などで他に行かれた方々の評判を読んでみると、86をベストに挙げておられた人もいたようで、やっぱり感じ方は人それぞれなんだなあ、と思った次第。

ちなみに、WAとWSの点数を改めて紐解いてみると…
    WA     WS
82  100     97
86  100     96
90   92+     97

とまあ、どれも高レベルであるとはいえ、86と90の評価が正反対。こうしたトップ・ジャーナリズムですらそうなのだから、我々シロウト(一部周囲にはプロの方もおいでだったけど)の間で評価が食い違うのも無理無いか。

70年代以前の3本(78、75、64)については、当日私の周囲でも評価が割れた。 個人的には78年ってすばらしいとまではいわないものの、悪くはないと思ったんだけど、酷評 している方もおられたし、逆に64年を良いという方が多か った反面、私の飲んだグラスはかなりマディラ香が出ていた。

この時期のラフィットはボトル差が大きいということをパーカー氏も指摘しているので、そんなこともあるのかもしれない。それに78と75はマグナムだったので、ボトルの上部、下部などでも印象が違った可能性がある。

先ほども書いたように、90年代に入って、造り方が変わって若くても美味しく飲める力強い味わいになったと聞いているが、今回唯一飲んだ94は今ひとつ未熟な印象。セカンドのカリュアド・ラフィット94と並べて飲んだんだけど、香りのボリューム感や緻密さは圧倒的な差があった反面、味わいについては、むしろこじんまりと熟成がすすんだカリュアドラフィットの方が飲みやすかった。本家ラフィットの方はバランスが整ってない感じだったけど、熟成のポテンシャルはあると期待を込めて判断したい。なにせ一本持ってるんで…。

そういえば、もうひとつのPP100点ワインである96については、今回テイスティングアイテムになかった上、セールで買おうと思ったら早々に売りきれて買い損ねてしまった。すばらしいワインだとそこかしこで聞くので、ぜひ一本手に入れたいところ。

まあ、そんなこんなで評価が結構難しいなあと思ったラフィ ットだが、ひとつ言えることがある。

それは、こんな風に「語りたく なる」ワインだな〜ということ。

と、強引にまとめて、おしまい。