超不定期更新コラム

2000年認定試験問題を検証

最近私の周囲で、「ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート呼称認定試 験」を受験するとか受験したとかという話をよく聞くようになった。
私も去年受けたばかりなので、結構興味がある。

それによると、今年の試験は例年にまして難しかったらしい。
「グルメジャーナル」 に試験問題が掲載されていたので、 私もひとつチャレンジしてみることにした。

さて、結果は???

合格ラインギリギリの74点でした。
いやいや、冷や汗ものだ。

まあ、受験後一年のブランクがあることや直前の追い込み勉強をしてないことを考えれば、ボーダーラインを越えただけでも上出来だともいえるが、 一方で、去年の本番では自己採点で94〜5点とれていたことを思うとと、貯えた知識が「着実に」忘却の彼方へと消えつつあるという実感もあり悲しい。

で、自分でやってみた感想だが、昨年までより極端に難解になったとは思わないものの、出題範囲が広範囲に及んでおり、 相変わらず重箱の隅をつつくような問題やひとひねりもふたひねりもした問題が多 いなあと思った。

受験者にとっては、合格のための近道というものはなく、やっぱり地道に勉強を重ね なければしんどいだろう。


以下にいくつかポイントを実際の問題とともに見ていきたい。
受験に関係ない方も、クイズ感覚でチャレンジしてみてね。


1.フランスの出題は「ふたひねり」ぐらいした出題もかなり多い。
フランスが出題ボリュームでは中核を占めることには変わりないし、もちろん、基本的な問題も多く出されているのだが、 一筋縄で行かないものもかなりある。

例1:次の1〜5の中から、ソーテルヌ(1855年)の格付けでDexiemes Cruに属し、 Barsacで生産されるワインを1つ選び、 その番号を解答用紙に記入してください。

1.Chateau Suduiraut
2.Chateau Climens
3.Chateau d'Arche
4.Chateau Coutet
5.Chateau Doisy-Vedrines
正解:5

※今まで、「1級か2級かを区別せよ」という問題はよく出ていたが、2級で産地ま で言及する問題はなかった。

 

例2:次の1〜5のCote d'Or県産の1級ワインの中から、畑がPommard村にあるもの を1つ選び、その番号を解答用紙に 記入してください。

1.Clos des Reas
2.Clos de L'Ecu
3.Abbaye de Morgeot
4.Clos de la Commarine
5.Bousse d'Or
正解:4

※ブルゴーニュの1級は毎年必ず主題されるんだけど、Pommardで出される畑といえば、ゼプノ、グ ランゼプノ、リュジアンぐらいが相場だったが…
(もっともこれを読まれているブル通の方々にとっては簡単な問題かもね。)



例3:Champagneの醸造に使用できる法定ブドウ品種は3つです。次の1〜5のぶど う品種の中からその別名に該当しない ものを1つ選び、その番号を解答用紙に記入してください。

1.Gros Noirien
2.Beaunois
3.Gris Meunier
4.Menu Pineau
5.Spatburgunder
正解:4

※シャンパーニュの3品種は基本だが、素直にそれが出題されないところがいやらし い。正解のムニュ・ピノーは「アルボワ」の別名。 私もすっかり忘れていた。


例4
:次の1〜5の飲みものの中から、白・ロゼ・赤が認められたAOCを1つ選び、 その番号を回答用紙に記入してください。

1.Pommeau de Normandie
2.Pineau des Charentes
3.Ratafia de Bourgogne
4.Floc de Gascogne
5.Macvin du Jura
正解:5

※AOCの色の問題はもっとも基本だけど、VDN,VDLは結構死角。他に「コ トー・シャンプノワ」なども出題されていた。


2.今年はイタリア、ドイツが多めに出題。一方アメリカ、ポート、シェリーなどは ほとんど出題されなかった。
(出題されなかった地域は2次試験の筆記問題で出されたのかもしれないが、未確認。)

例5:次のA項の土壌をもつドイツ生産地域をB項の中から選びますと、一致しないも のがB項に1つあります。その番号を 解答用紙に記入してください。

       A                     B
A粘板岩質土壌               1.Mittelrhein
B黄土層、粘板岩土壌           2.Rheingau
C黄土層、石灰岩、砂岩土壌       3.Sachsen
D粘土質、石灰岩土壌           4.Pfaltz
                         5.Franken
正解:3

 

例6:ロンバルディア州にあるD.O.C.Gのスプマンテの呼称とその熟成期間を解答用 紙に記入してください。

正解:フランチャコルタ、18ヶ月

※フランチャコルタは基本。熟成規定については、バローロやブルネロは基本だが、 フランチャコルタまでは覚えてなかった人が多いのでは。

 

3.製法、概論などは年々難しくなっている。きっちり勉強しておいたほうがいいだ ろう。

例6:次の1〜5の中から、貴腐現象によるものでなく、Passerillageという方法を 用いて生産される甘口ワインを1つ選び、 その番号を解答用紙に記入してください。

1.Coteaux du Layon-Chaume
2.Alsace Selection de Grains nobles
3.Juranson
4.Quarts de Chaume
正解:3

※これは良問だと思う。まあ、ロワールの貴腐とアルザスのSGNを消去法で消していけばよいのでそんなに難しくなかったかな。


4.食前、食後酒は手を抜かないほうがいい。
つい本題のワインばかりに目が行きがちだけど、これらは毎年結構出題される。今年 も4問ぐらい出題されていたし、点数の配分そのものよりも、 知らない名前が並んでいたりすると一瞬パニックになる。(^^;

例7:次の1〜5の中からアルコール度が最も高いフランス産リキュールを1つ選 び、その番号を解答用紙に記入してください。

1.Cointreau
2.Izarra vert
3.Chartreuse vert
4.Benedictine D.O.M
5.Grand Marnier rouge
正解:3

※シャルトリューズはヴェーヌとジョーヌでアルコール度が異なるのがミソ。

例8:次の1〜5の中から、Martinque vieuxとラベルに表示されるRhumの木樽での 熟成期間を1つ選び、その番号を解答用紙に記入してください。

1.3年
2.4年
3.5年
4.6年
5.7年以上
正解:1

※これは全然わからなかった。事前講習会で触れられたのだろうか?

 

5.原価率の計算、シャンパーニュのボトルサイズなど定番の問題は今年も出題された。
確実に点を稼げるので、きちんと覚えておくとよい。公衆衛生も同様。ただし、公衆衛生は事前講習会でポイントが絞られるので、勉強はその後で十分。
ちなみに私は今回公衆衛生で2問も間違えてしまった。


6.日本の法律については結構細かい問題が出題される。手を抜きがちな分野だけど、きちんと勉強しておいたほ うがいいだろう。


7.これはキツイ…という問題。

例8:次の1〜5のワイン産地の中からDVAを1つ選び、その番号を解答用紙に記入 してください。

1.Lake Erie
2.Finger Lakes
3.Lake Erie North Shore
4.Hudson River Region
5.Martha's Vineyard
正解:3

※カナダの産地の問題だ。そもそも私なぞまだカナダのワインを飲んだことすらないのに。基本講習会である程度リークされてたのかもしれない。


例9
:次の1〜5のチリワイン生産地域の中からもっとも小さい単位のものを1つ選 び、その番号を解答用紙に記入してください。

1.Colchagua Valley
2.Molina
3.Curico Valley
4.Lontue Valley
5.Central Valley
正解:2

※これも突飛な問題。基本講習会で挙げられていたのかも。


8.こんなのも出題されました。

例10:次の1〜5の中から、フランスのラングドック・ルーション地方の正しい原 語の綴りを 1つ選び、その番号を解答用紙に記入してください。

1.Languedoc-Russilon
2.Languedoc-Roussillon
3.Lungedoc-Rossilon
4.Langedoc-Rusilon
5.Lunguedoc-Rusillon
正解:2


※とりあえず 一昨年出題された、「IGTの正式名称を原語で書け」というのに比べればずっとまとも だけど。


とまあ、難問奇問ばかり並べてきたけど、もちろんこれ意外に基本に近い問題も出題 されている ので、これから受験される方はこれだけを見てびびらないでね。
それから、たぶんこれらのうちのいくつかは「基本技術講習会」で事前にそれとなく(あるいははっきり) 出題を匂わされているものだと 思う。でなければ、こんなのわかるわけないじゃん、という問題も結構ありましたねえ。

ちなみに、私が受験したときは10月から勉強を始めて、4月の時点で前の年の問題をやってみた ら、69点ぐらいでギリギリという ところだった。それが本番で90点オーバーまで持っていけたのは、そのあとの追い込 みとやっぱり基本技術講習会 でポイントが絞られたのが大きい。あと、問題はほとんどが選択式なので、「こりゃ あダメだ」と思っても、意外にまぐれ当たりしてるものも多かったりして、自分の手応えよりは高得点を採れているものだ。

とまあそんなこんなで、来年受験される方、がんばってね。
いずれにせよ、 早目から勉強しておくことにこしたこ とはないと思います。


※注:原語で、英語のアルファベットで表せない文字記号(アクサンテギュなど) は省いています。
※※日本ソムリエ協会2000年度呼称資格認定試験問題より引用