超不定期更新コラム

フランスワイン事情

旅行の印象とか感想って、帰ってきたその週は周囲に喋って回りたくて仕方ないのに、1週間たつとボルテージがグンと下がって、もう一週もするとすっかり過去の話になってしまうようなところがある。

今回の旅行の場合もご多分にもれず、会社に復帰して一回週末を過ごしたら、なんだかもう昔の話みたいに思えるから不思議だ。
ということで、記憶が完全に過去のものになる前に、気づいたことなどを 徒然に書いてみたい。

第一弾は主にワインとレストラン関連。

 

■現地のワインは美味しいか?

よく、海外に行かれた方から、「地元で飲んだワインは同じ銘柄でも日本で飲むよ りずっと 美味しかった。」という話を聞く。 その理由として、「赤道を越えてくるから劣化するのだ。」とか「輸出用にSO2を多めに添加しているのでは?」とかいったことがまことしやかに語られている。 某パソコン通信のフォーラムでも一時この話題で紛糾していたことがあったので、 私も今回その辺に注意して飲んでみた。

結論から言うと、今回の旅行では、とりたてて状態な敏感なワインやとんでもなく古いワインを飲んだりしなかったこともあって、違いは思ったほど感じられなかった。

もちろん、シャトーで出してもらった試飲用のワインは、蔵出し直後という考えられる 最上の状態な訳だから例外。
コルディアンバージュで飲んだ64年のクリュ・ブルジョ ワに ついても、おそらくはボルドーを一度も出ることなく静かに熟成されたものであると見えて、状態は すばらしいものだった。

ただ、それ以外のレストランやビストロで飲んだものについては、たとえばテラスのあるカジュアルビストロで飲んだCh. スタール85などは日本のレベルとそれほど変わらないような気もしたし、こちらで飲む機会の多いCh.カルボニューについても、ワインそのもののポテンシャルには感心したけれど、決して「日本で飲むのと段違いの味わい」ではなかった。

まあ、これが状態に敏感なブルゴーニュであればまた違ったのかもしれないし(実際パリで飲んだダニエルリオンのコンディションは素晴らしかった)、 ロワールで飲んだような比較的安価なワインたちは、輸送や保管がズサンだったりして、その結果、状態が今ひとつのものを我々が口にしているという可能性は否定できない。少なくとも、細心の注意を払って輸入保管されたものについては、現地で飲むものに比べて決定的に味わいが劣るとは思えないというのが今回の旅行で得た暫定的結論だ。
逆に言えば、現地で飲む場合は、日本でワインを買うときほど、ショップやインポーターを気にしなくてもよいというのは大きなメリットかもしれないが。

■現地のワインは安いか?

これについては、事前にいろいろな方から「フランスはワインは安くないよ。」と 伺って いたけれど、内心「そんな訳ないでしょ。だってまさに産地なんだから。」と思っていた 部分があった。
でも、実際に店を回ってみると、たしかにあんまり安くない。 1FFが15円前後という歴史的なフラン安の時にいったにも関わらず、だ。

たとえば1万円前後のワインであれば大抵は日本で買うより1000円〜2000円ぐらいは安いんだけど、ハンドキャリーで持って帰る辛さを考えると、「日本で1000円余 計に払ったほうがいいや。」となってしまう。(^^;

もちろん中には日本で買うよりぐっと割安感のあるものもあって、そういう銘柄は たしかに 買って帰る価値があると思うし、ボルドー市内のショップは全般に(もちろんボル ドーものに関して)パリで買うより安い。

それとフランスの酒屋って、日本以上に、店によって全然価格が異なる。マドレー ヌ広場沿いの 「ニコラ」とそのそばの「フォーション」、あるいはボルドーの「ヴィノテーク」 と通りを隔てた「ランタンダン」など で全然価格が違うのは面白かった。買う際は何軒か回ったほうがいいだろう。

まあ、値段についてはフランス国内では19%(だったけ?)の消費税がついてし まうことが大きいんだろうけど、産地で安く買えないというのはちょっとがっかり。

#そうすると、我々がもっともワインを安く買えるのはどこなんだろう? 一説には、ヒースロー空港の免税店だという噂も聞いたことがあるけど。

 

■現地のワインの品揃えは?

これについても、思ったほどでないというのが正直な印象。もっと日本で手に入ら ないような レアものやオールドビンテージがバンバンあるかと思っていたが、あまり時間がなかったこと もあるのだろうけれど、現実にはなかなかめぼしい物を見つけられなかった。

考えてみれば、ブルゴーニュのスタードメーヌやオールドビンテージについては、 日本でもほとんどが通販やセール初日で消えていくわけだから、そんなものなのかもしれな い。
コート・デュ・ローヌやその他の地域の品揃えについても探せばいろいろあったの だろうけど、 時間がなくてそこまで手が回らなかった。
ただそんな中、パリで行った「ルグラン」は狭いながらフランス各地のワインがそ ろっていて なかなか個性的だと思った。

 

■現地のレストランのワインリストは?

まあ一流レストランのワインリストが充実しているのは当然のこととして、町のビストロレベルではどうなのだろうか?
何軒か行ったが、大したことないビストロのワインの品揃えはやっぱり大したこと ない。 これってあたりまえのように聞こえるけど、私にとってはやや意外だった。
フランス人は食事の際、必ずと言ってよいほどワインを注文すると聞いていたの で、 安い店などでもそれなりにワインの品揃えは多いものと勝手に思ってたのだ。
たとえば、ロワールのビストロでは、いろんな作り手の「トゥーレーヌ」や「シノ ン」が飲める と思ってたけど、現実にはそんなことはなくて、そもそも作り手さえリストに載っ ていないこともあった。

そういえば、最近フランスの若者の間では、ワインは人気がないとなにかで読んだけれど、 飲み物のリストを見ても、なんとなくそれを裏付けているような感があった。
あと、グラスについても、私が行った中では、コルディアンバージュを除けば、 パリのワインレストラン「マセオ」がギリギリ水準レベルで、あとの店はすべて厚 手で 底の浅いプアなものだった。

#って、行った店がカジュアルすぎたとの話も…

 

■レストランでのワインの価格はどうか?

店によって差はあるが、全般に安めだといっていいだろう。
私は大体レストランで のワインの価格 が日本でのショップの小売り価格に近いぐらいだという印象を持ったが、フランスでの店頭価格と比べると 3割増しぐらいだろうか。あるいはもっと高いかもしれない。
まあ高級な店には行ってないのでわからないけれど、私が行った カジュアルなレストランではそんなものだったと思う。
おかげで、全般に外食代が高めに感じるパリにおいても、ワイン込みの食事代にな ると「日本に比べて 安いなあ」と感じるから面白い。

 

ということで、次回はもう少し雑多な話題を。