超不定期更新コラム

レストランでのサービス

あんまり書きたくなかったんだけど、このところ2回ほど立て続けに「なんだかなあ」という思いをしたことがあったので、ちょっと問題提起の意味もこめて。

一度めは、近所のワインレストランでのこと。
その店はワインリスト以外にもいろいろと面白いワインを置いていて、頼むと店の奥から出してきてくれる、というのがウリ。初めて行ったときは確かによかった。ソムリエ氏の応対もよかったし、グラスで「Ch.フィジャック76」とか「サシカイア94」とか出てきたし。ところが先日最訪問してみたら、若い女性店員(アルバイト?)が得意げに「好みを行ってくれれば持ってきます」とのたまうばかりで、いざチョイスを任せると彼女たちはきまってリストに載っている銘柄しか持ってこない。
ちなみにここのワインリスト自体は、赤白数種類ぐらいずつしか載っておらず、ほとんどそこいらのカジュアルレストラン並みのリストでしかない。すなわちワインマニアにとってみれば「リスト以外から出てくる」ということが生命線であるにもかかわらず、2度目の訪問では、それが全く反映されず、なんだか街の平凡なビストロで食事をしたというだけの結果に終わってしまったのだ。

それに「好みを言っていただければ…」と言われて、なんと答えればいいのだろうか?
「やや熟成が進んで、香りにも複雑さが出始め、味わいはそれほど力強くなくてもいいから、果実味と丸いタンニン、それにしなやかな酸のそれぞれの要素がバランスよく調和して、全体の印象は丸く突出したところがなくスルスルと飲めるようなボルドースタイルの赤ワインを御願いします。」とでも言えばいいんだろうか?

#ちなみにこの店、最初に行ったときにいた評判のよいソムリエさんが辞められたという事情はあるようなんだけど、まあそれはそれ。

2度目は、こちらもワインの品揃えが豊富なことで知られる某和食店でのこと。その担当者は、「こちらが候補に挙げた銘柄の中できょうの料理に合いそうなものはどれか?」と聞こうとした私を遮って、「コースでいろいろな料理が出てくるんだから合わせるなんていうのはどだい無理です。」と一席ぶって、唖然とする私たちに「今日のようなウエットな日にはアリゴテとプイイ・フュメ」を力強くすすめてきたのだった。

どちらも、不愉快だったのは、失礼ながら中途半端な知識しか持っていないと思われる担当者が得意になって、半ば上から見下ろすような態度で接してきたこと。
これって、スキーに例えると、ちょっと滑れるようになった輩が、初心者に教えたがって、やたらと急斜面に連れていくのになんか似たものを感じるのだ。


…と、ここまで書いてきて、だが待てよと思った。
見方を変えてみると、これって、単に私がイヤミな客だというだけなのかも、という気になったのだ。

私は他の人と一緒のときは、あんまりワイン通ぶりたくない、というのがあるので、店員やソムリエにからんだり知識を披露しようとしたりはしないようにしている。その一方で、ワインを頼むとき、いつもリストの中から2〜3候補を出して、そのチョイスについてソムリエに相談するという頼み方をしている。すなわち自分の好みを入れつつ、ある程度ソムリエの意見も尊重しようという選び方だ。やっぱり店のワインの状態を一番良く知っているのはその店のソムリエのはずだからね。

ということで、店員にしてみれば、相談された相手に対して、自分の持てる限りの知識を披露しようとしたのはある意味当然かもしれないし、少なくとも彼ら彼女らは、悪意を持って私に接したのではないのだし。

きっと客が私でなく、ワインに関してあんまりこだわらない客だったとしたら、その客は彼らの選んだワインに満足して帰り、店員のほうも、良いサービスが出来たという自信を深め、お互いめでたしめでたしで終わっているところだったはずだ。

結局のところ、私がひとりで店員に対して多くを期待しすぎて、そのとおりにならなくて一人で悶々としている、というだけのことかもしれない。

では、この局面で、私はどのように頼めばよかったのだろうか?
「ソムリエの人と直接話をしたいので、呼んで来てくれ。」
と言えばよかったのだろうか。
それはそれで、同伴者から「イヤミなやつ〜」と思われそうだよね。

それともやっぱり相談などせずに決め打ちで、「これを」と頼めば何の問題もなかったのだろうか。でもそれもまた寂しいよね。なんのためにその店にソムリエがいるのかということになるし。

でも現実には、ソムリエが他の客にかかりっきりだったりした場合は別の店員に頼まざるをえないし、何よりも「誰だって最初は初心者」なんだから、ある程度大目に見る懐の広さも必要なのかもしれない。

それでもやっぱりこちらとしては、大枚はたいてレストランに、それもワインの品揃えが自慢の店に行く以上、ある程度の品質管理をしてほしいというか、的確なサービスを受けたいという気持ちもある。

う〜ん、 これって意外と深い問題かもしれない。