超不定期更新コラム

地震とワイン

穏やかでないタイトルで、特に阪神大震災を経験された関西の方にとっては思い出したくないようなことかもしれないが、最近三宅島の噴火に触発されてか、日本各地がグラグラと来ているのもまた事実だ。

三宅島では過去の噴火で一度も起こったことのなかった火砕流が発生し、ついに全島民島外避難となった。
島民の方々に対してはまことにもってご愁傷様としかいいようがないし、一日も早く島に戻れるようになって欲しいと願ってやまない。

それにに住む我々も決して人事とは思えない。

特に心配なのは、富士山の噴火とか、東海地震とか、といった大災害の前兆ではないか、ということだ。 新聞などによるとその心配はないらしいとのことだが、それでもやっぱり心配だ。

東海地震は日本で予知が可能な唯一の地震と言われている。 それは予測不能な直下型地震とは違って地震発生のメカニズムがある程度把握されている海溝型の地震であり、そのため駿河湾から遠州灘にかけて膨大な予算をつぎ込んだ観測態勢を敷いていてる からでもある。

御前崎周辺には300を超す観測計が設置されていて、日夜そのデータ が管理されている。 これらの中でもっともポイントになるのが、全部で16ヶ所設置 されている「体積ひずみ計」だ。このひずみ計のうち3ヶ所が異常値を 示すと、専門家たちが呼ばれて「判定会」が行われる。

判定会により、これは危ない!という結論が出れば、「警戒宣言」が出される。
現在では地震計の精度が非常に高くなっているので、3ヶ所 が異常値を示して、判定会が行われれば、結果はほぼ確実に「クロ」 つまり「警戒宣言」が出されることになるそうだ。

警戒宣言が発令されると、学校は休みになり、銀行の営業も停止 、鉄道や高速道路などもストップするなど、市民生活にはかなりの影響 が出る。
すなわち、警戒宣言が発令されるというのは、我々がかって経験 したことがない未曾有の事態になるわけだ。

ちなみに警戒宣言が出されてから、東海地震が発生するのは2〜48 時間後と予想されているが、こればっかりは相手が天変地異であるの で絶対とは言い切れない。

東海地震で想定される東京の震度は5位だといわれている。 最近は伊豆諸島の群発地震のせいで、震度5とか6という数字にも感覚が麻痺している感があるけれど、震度5が東京で起こったのは私が生まれてから一度だけ。震度6に至っては関東大震災以来経験 がない。

さて、そんな地震が来たら、私のワインはどうなるんだろうか?

…という前に自分のことを心配しろというご意見は全くもっともだ。

まあ、 家が壊れるような地震の場合はワインどころではなくなるので、ここでは壁にひびが入る程度の地震が来たときを想定しよう。

まず、寝室に置き去りになっているワインたち。
これはもう割れることは 覚悟しなければならないだろう。
我が家は二階なので、あんまり大量に割れて中のワインが漏れる と下の階に漏れてしまうのではないか、と細かい心配までしてしまう。飲むペースをあげて在庫を減らさねば…。?

次にセラーのワイン。
これは何とか死守したいところだが、何せ今は棚も取っ払ってしまってい る詰め込み状態。私にしては高額なワインも入れてあるので不安では あるが、逆に思いっきり詰め込んである分、意外に大丈夫かもしれない。

寺田倉庫に預けている分はどうか。
割れたりした場合は一本あたり一万円の補償金額がかかっているので、 まあ、それはそれであきらめがつく。私の場合、そんなにレアものを預けてるわけでもないしね。
問題は停電などで温度管理ができなくなってしまった場合だ。

このあたりの対応について、どうなっているのか、寺田倉庫に電話して聞いてみた。

私「あの〜、つまらないことを伺いますが、そちらは地震の時は大丈夫なんです か?」

寺田「弊社は耐震倉庫になっています。」

私「たいしん、…ということは、震度6ぐらいの地震なら大丈夫ってことですね。」

寺田「そうですね。」

私「 棚においてあるワインが落ちたりすることはないんですか?」

寺田「棚についても転倒防止の処置をしてあります。」

私「なるほど。もうひとつだけ教えてください。地震で電気が止まってしまった場合、 温度管理が出来なくなってしまいますよね?そんな場合は?」

寺田「専門家の方に相談しましたところ、空調が止まってしまった場合、ワインの温度が一度上がるのには24時間かかるとのことです。 したがって24時間あれば、自家発電で電気を起こして復旧することができます。」

私「えっ、温度が一度上がるのに24時間もかかるんですか?」

寺田「実際にワインの中の液体の温度が一度上がるには、ということです。」

私「はあ。よくわかりました。どうもどうも。」

さすが寺田倉庫。体制は万全(みたい)だ。
空調が止まってからワインの温度が上がるまで24時間もかかるというのが、なんとな く マユツバな気もするんだけど、まあふだんきっちり空調の聴いた部屋であればそうな んだろう。

家のスペースのせいで仕方なく分散している我が家のワインだが、これがかえってリスク回避になっている面もあると再認識。

それよか、我が家の場合、来客用にかなりの数購入してしまったリーデルの「金魚鉢」グラスやデキャンタが粉々にならないかを心配したほうがよいかもしれない。金銭的な打撃もさることながら、後片付けがえらく大変だからだ。

まあ私のストックなどせいぜい300本ぐらいだけど、数百本、数千本とお持ちの方もおられるようだし、額的にもひと財産になる方の心配は私どころではないんだろうなあ、と思う。

地震、起こってほしくないですよねえ。