超不定期更新コラム

7/6 ロオジェに行った。

先週末の昼に行った、銀座「ロオジェ」の料理は私にとって美味すぎた。 数日たった今も思い出すと陶然となってしまうくらいだ。

ご存知かもしれないが、ロオジェは現在東京でももっともすばらしいフラ ンス料理の店のひとつとしてグルメ雑誌等で高い評価をえている店であり、 タイユバン・ロブションなどと並んで都内でももっともハイグレードな、言い方を変えればもっとも高価なフランス料理店でもある。

シェフのジャック・ボリー氏は「1982年フランス国家最優秀料理人受賞」 の実力者で、シェフ・ソムリエの中本聡文氏は若手ソムリエの第一人者 として、ワイン誌などあちこちで活躍中。ソムリエコンクールの日本代表にもなっている。

ちなみに、お値段は、昼のコースが4800円と7500円、夜のコースに なると、14000円と25000円もする。 もちろんアラカルトもあるが、こちらはたとえば肉料理が単品で5600円からと、 ちょっとした店のフルコースなみのお値段。

ワインには結構金をかけるくせに、美食には案外とサイフの紐が固い 私が、なぜ今回このような高級な店に行ったのかというと、それはある企み に便乗したからだ。

その企画とは、つまりこうだ。

私は、ワインスクールに通っていた頃、中本ソムリエに、認定試験用の 講座で半年、その後のクラスで3ヶ月と約1年近く教わっていた。そうした 中本さんにお世話になったワインスクールの生徒とその関係者たちで、 本人に内緒のまま、すべてのテーブルを予約で「貸し切り」状態にしてしまおう という大胆不敵な計画。本人は当日になって店内が知り合いで埋め尽くされて のに初めて気づくとう寸法だ。

発起人は以前このHPにも登場した、三田のふぐ割烹「山田屋」の若女将の E子さんと、そのワインスクールの同級生のお二人。 ロオジェサイドと念のいったもろもろの調整を繰り返し、本人に気づかれぬま ま、 これほどの人数を集めてしまった、彼女たちのバイタリティには全く頭が下が る。

関係者ということで、最初は私ひとりで行こうと思ったのだけど、結局当日はカ ミサンを 連れて行った。 というのも、カミサンが行っている料理教室で、講師の先生がたまたま「今東京 で美味しいフランス 料理の店」として「ロオジェ」の名前を挙げていたそうで、その店に行くと聞い てはカミサン も黙っていようはずがなかったので。

当日は、みなでいっせいに行くとばれてしまうので、あらかじめ隣の喫茶店で集合 して、時間を小刻みにずらして入るという用意周到さ。

入り口は高級感があって、ちょっと足がすくんでしまう雰囲気。 扉をあけると、すぐに店員がうやうやしく応対にやってくる。 最近はさすがに落ち着いて数ヶ月待ちということはなくなったが、相変わらず 土日は3週間くらい先まで予約がいっぱいだそうだ。 おしゃれならせん階段を上がると、広すぎず、狭すぎず、ちょうどよい広さの フロアにでる。 収容人数は30人ちょっとというところで、他に6〜8人入れる個室があるそう だ。 店員は男性ばかりで、店の広さに対してその数の多さに驚く。 この店員(ギャルソンというべき?)たちの応対がすばらしく、タイムリー で無駄がない。おかげでこちらはまるで王侯貴族になったかのような気分。この日はとても暑かったため、ストッキングも履かずに来たカミサンは、この店内の雰囲気にかなりたじろいでいた。

当日頼んだのは7500円のコース。昼食の絶対値としてはとても高いが、 冒頭に述べたように、その味を考えれば充分納得の内容だ。
ちなみにコースの内容は以下のとおり。

アミューズ・ブーシュ
うなぎのテリーヌ 
アンチョビーと香草風味
新鮮な帆立貝のラヴィオリ包み キャヴィア添え トリュフの香り
ピレネー産仔羊肉のトリュフ入り野菜のクレピネット包み プティサラダ添え
デザート
プティフール
カフェ
(グラスワイン1杯つき)

どれも美味しかったけど、とくにうなぎのテリーヌは味わったことないようなす ばらしさ。 仔羊の料理も非常に手の込んだ作りで、その焼き具合はちょっと他では 味わえないような絶妙さだった。 (左写真)

さて、我々は先発隊だったため、当の中本さんはワインリストをもってきたとき には まだ我々のたくらみに気づいておらず、「きょうは自由が丘の生徒さんが重なっ てし まって…」と真顔でおっしゃるので、笑いをこらえるのが大変だった。 この店にはもうひとりソムリエで私たちの同期の白根くんというのがいる んだけど、彼もまた、何も知らされていなかったらしく、何が起こったんだとい うような 表情で忙しく立ち働いているのが微笑ましかった。

さすがにフロアが生徒とその関係者で埋まるころまでには、中本さんも気づいた ようで、ワインをおまかせで頼んだ我々に、アルマン・ルソーの シャンベルタン 83とCh.ローザンセグラ89のマグナムボトルをそれぞれグラスワイン風にふ るまって くれた。
シャンベルタンはもちろんすばらしかったが、カミサンはむしろローザンセグラ を気に入った ようだった。加えて私はその前にグラスで飲んだラモネのシャサーニュ・モン ラッシェ・ブード リオット96のすばらしさも忘れられない。 この白ワインは、7500円のコースについてくるグラスワインの分なんだけ ど、いわばおまけ のようなグラスワインでこんなすばらしいワインを飲めようとは思ってもいな かった。
食後にはChリューセック89まで出していただき、終わってみればまさに豪華なワイン会のごときラインアップ。
ちなみにカミサンはリューセック89については、 「私は、あの小田島(のワイン会)でいつも?出してもらうやつ、ええと、でぃ けむ、の方が おいしいと思う。」 なんて言っていた。ちょっと贅沢させすぎかもしれない。(笑)

そんなこんなで、いやはやすばらしい昼下がりだった。

あえて、悔やまれることを挙げると、 カミサンは、「ストッキングをはいていかなかったこと。おかげで、トイレに立 つたび に恥ずかしかった」ことだそうだ。 私のほうは、第一に、ほろ酔い気分で家に帰るや否や、会社からの呼び出しがか かって 出社せざるをえなかったこと。せっかくの美食の余韻が台無しだったけど、まあ これは 宮仕えの性だから仕方ないか。
第二に、ちょっと食べ過ぎたと思って飲んだ薬が、胃薬でなく、カミサンの婦人 科のホルモン剤 だったこと。外見が似ていたので間違えて飲んでしまった。翌日胸が大きくなっ たりしたら どうしようかと思ったが、とりあえず、今のところ大丈夫なようだ。

そんなこんなで、なんだか美食に目覚めてしまった私。
これを読んだ方で、「ここも美味しいよ!」っていうレストランがあったら、 (和洋中問わず)ぜひ メールください!