超不定期更新コラム

エノテカ「クラブ5フェア」

6/4の日曜日。
半袖のポロシャツでもじんわり汗がにじむような 好天の中、チコリータさんと合流して、エノテカの「クラブ5フェア」に行って きた。

クラブ5とは「カノン・ラ・ガフリエール」「ポンテ・カネ」「ブラネール・ デュクリュ」 「ガザン」「ラフォンロシェ」の各オーナーによる集まりで、昨年末にもたしかこれらの各マグナム ボトルを箱詰めした「2000年記念セット」(だっけ?)のような企画モノを出していた。
私の地元 の近所の商店同士で、共同でチラシを出したりセールをやったりする「四つ葉会」なる集 まり があったけど、まあそんなノリなんだろう。

いや、それにしても今日の試飲会の混んでいたこと。 私らは早々と並んでたので座れたけれど、遅れて来た 人たちはみな立ち飲みを強いられた。さすがに15杯の立ち飲みは辛いだろうに。
使えるグラスは3つまでなので、どれとどれを組み合わせて飲むかが結構悩ましい。

まずは白ワインから、ということで、スミス・オー・ラフィットの 白から飲もうと思ったら、あれっ?赤ワインが注がれた。 どうやら私が番号を間違えたみたいで、注がれたのはスミス・オー・ラフィット の82年。 仕方ないので、冒頭からいきなり82対決。

1.82年対決 Ch.ラフォンロシェvsCh.ポンテ・カネvsCh.スミス・ オー・ラフィット
ややオレンジがかった程度のラフォンロシェとポンテ・カネに対して、スミス・ オー・ラフィットはかなり熟成を感じさせる色合い。香りはラフォンロシェが甘 いリキュール香全開状態ですばらしい。 スミス・オー・ラフィットは甘い香りとドライフルーツのような香りが同居 状態。ポンテ・カネは半年くらい前に家で飲んだボトルもそうだったけど、 しっかりと閉じていて、あの時は我が家のボトルの状態が悪かったのかと疑ったものが、このワインはどうやらそういう時期のようだ。 味わいもまだしっかりとしていて固さが残り、この先まだ熟成しそう。 一方、ラフォンロシェはまさに今飲み頃で美味しい。スミス・オー・ラフィットはちょっと構成がヤワでこの先は下り坂かも。 う〜ん、正直言って82という世紀のビンテージにしてはどれも今一つという印象。 私の期待が大きすぎたのかな。 ちなみにチコリータさんがずいぶん経ってから飲まれていたポンテカネは 香りも開いてきていて、よりまろやかになっていた。

2.初体験2銘柄 Ch.スミス・オー・ラフィット(白)/ クロ・ド・ロラトワール
ここで軌道修正して、スミス・オー・ラフィットの白を。 みずみずしい洋ナシのような果 実味のあとに広がる蜂蜜のような上品な甘み。 うん、これは美味しいね。ふだんあんまりボルドーの白は飲まないんだけど、 こないだ飲んだランシュバージュといい、やっぱり上位ランクの白は素晴らしいと再認識。一本買って帰ろうと思ったら、残念ながらもう売り切れだった。

もう一杯は「クロ・ド・ロラトワール」。カノン・ラ・ガフリエールの所有者が 作る別銘柄だ。 樽の香りが強い。深煎りのロースト香。味わいは当世風のスタイルで、各要素が ぎっしりして いながら、丸く角が取れている。美味しいけど、あんまりこれというものもない ような気が…
でもこの銘柄、終わってからショップの方で5000円を切る価格で売られていたの を見てその価格ならいいんじゃない、かと自分の中での評価は上方修正。

3.カノン・ラ・ガフリエール・ミニ垂直 85/95
カノン・ラ・ガフリエールも飲むのはたぶん初めて。
この2ビンテージには85 年と95年という 10年の開きだけで説明できないような違いを感じる。 85ビンテージはきれいに熟成していて、繊細、というか正直ちょっと脆弱だが、これはこれで 私は結構好きだったりする。

一方95は打って変わって凝縮された印象。それで いて粗さが なく角がとれており、今でも美味しく飲めるいわば当世風の作り。でもちょっと 優等生的というか 最近よくあるタイプ、って感じだなあ。

4.メドック2種  Ch.ラフォンロシェ95vsCh.ポンテカネ94
どちらも身近な銘柄で、特にラフォ ンロシェ 95は昨年の正月にハーフを何本か買い置きしてよく飲んだものだが、今回のボ トルは結構 印象が違う。家で飲んでいたものは、もっと鉛筆の芯やブラックベリー香が強 く、硬質な印象 だったが、今回のはそれよりよく開いていてまろやか。たぶん1年半という時間 の経過に加えて、 デキャンタしてそれなりに時間が経っていたこと、テイスティンググラスで飲ん だこと(家では リーデルのボルドーグラス)が大きいのだと思う。
ポンテカネ94もよく出来たワイン。ラフォンロシェと比べるとこちらはやや粗 さを感じるが、よく いえば力強さがある。どちらも今でも飲めるが、もう少し置いたほうが良い感 じ。

5.ラ・モンドット96
今までの銘柄はどれも飲み込まずに吐き出していたのだけど、これだけはじっくり飲んでみた。 焼き栗、エスプレッソ、トースト、焼いたプラムの菓子など強烈な樽香。回すと 生肉とかレバー のような香りもまざる。かすかにユーカリっぽい香りも。
ところで、テイスティングの時、大きなグラスだと感じないのに、なぜかテイスティンググラスだと、生肉やレバーのような香りを感じることがあるのは私だけだろうか?

味わいはフルボディで濃い。それでいてやわらかくしなやか。いかにも 当世風のよくできたワインだ。カノン・ラ・ガフリエール95やクロ・ド・ロラ トワール95とは明らかに 親戚筋というか同系統の香り、味わい。
3銘柄の中ではさすがにモンドットはそ の構成の緻密さや密度感、それでいて重くボッテリとならないバランスや品格のよさという面 で 抜きんでている。 しかし、その差は5万円を超える価格に現れるようなものではないような気がした。

気がつけば、時間は残り40分ほど。
チコリータさんはもう飲み終わって、手持ち無沙汰にしてる。 いかんいかん、ちょっとのんびりしすぎたかな。ということでここから先は駆け 足で…

6.地味めの89対決  Ch.ブラネールデュクリュvsCh.ガザン
ブラネールデュクリュとガザンという、ちょっと地味な銘柄同士。 ブラネールはメルロの比率が高いのだろうか、バラの香水のようなちょっと独特 の香りがある。 ガザンはややドライな印象。ドライフルーツ、麦わらなど、少しひなびた香 り。 味わいはブラネールがしなやかな酸を中心にバランスがとれているのに対し、ガ ザンの酸は大人しく 果実の豊かさと木目細かなタンニンの存在感を感じる。 どちらもタンニンはまだしっかりしており、まだ熟成途上。私はどちらかという とこの位の熟成具合 が一番安心して飲める。

7.95年3銘柄 Ch.スミス・オー・ラフィットvsCh.ブラネール・デュクリュvsCh.ガザン
95年を最後に回したのは、その方がより香りが開いてきて、まろやかになって いるのではないかと思って。ところがその思惑はみごとにハズレ。
なぜかどの銘柄もちょっと閉じ気味で元気がない。というか、私の鼻が駆け足の 試飲で麻痺してきたのかもしれない。 そんな中、スミス・オー・ラフィットはかなり個性的だ。はっきりと判る青っぽ いハーブ香。味わいにもやや 青さが残るものの、各要素はしっかりとしていて、力強い。これは時間を必要とするワインだ。 ガザンはしなやかでバランスがよく、ポムロールらしさがよ く出ている。 ブラネールデュクリュは香りも閉じていたし、正直言って、よくわからない。

いや、いろいろ試させていただいたが、今回は「憧れのワイン」的なものでなく、手の届く範囲のワインだということが いい。
さすがに前回のシュバルブランのような「陶酔の極み」とでもいうべき銘柄は見あたらなかったものの、それぞれに個性があり、比較を楽しめた。
 ちなみに、相変わらず喉の調子がすぐれないので、今回はモンドット以外はすべて飲まずに吐き出した。いつかのコラムに書いたように、私は吐き出してテイスティングするのは苦手なので、感想がピントはずれなようであれば、そのためかもということでご勘弁を…(^ ^;