超不定期更新コラム

5/6 甘いタンニン?

最近、わからなくなっていることがある。
それはワインの「甘み」についてだ。
甘みといっても、いわゆる甘口ワインについてではない。
ソーテルヌのワインやドイツワイン、それにポートやマディラなどの酒精強化ワインについての製法やウンチクについてはワインの教則本の類に載っているので、ここでは触れない。

それよりも、いわゆるふつうの赤ワインで感じられる「甘み」についてのことなのだ。
赤ワインを飲んで「甘み」を感じること、ありますよね?
たとえば以下のような場合。
1. 新世界の濃縮されたカベルネなどを飲んだときの分厚い濃縮感と
   とも に感じる甘み。
2.良くできたブルゴーニュのワインを飲んだときの酸とのバランス
   のと れた甘み。
3.オールドビンテージのワインを飲んだときのリキュールのような、
  あ るいはドライフルーツのような甘み。

これらの甘みって、どこから来ているんだろう?

私は当初、これらは「果実味」がとても熟しているために甘く感じるのだろうと思っていた。生のフルーツでも熟せば甘くなるわけだし、なんとなく感覚的に理解できるよね。

もうひとつ、 甘みを感じる成分としては、アルコールやグリセリン があるので、凝縮感のある赤ワインに感じる甘みはむしろこちらの要素なのかもしれない、なんて漠然と思っていた。まあ、新世界のワインなんかだと、酸味が足りなくて相対的に甘みが目立つなんてこともあるかな。

でも最近、著名ソムリエの方々のコメントなどを読んでいると、「甘いタンニン」という言葉を目にすることがあって、それでわからなくなっちゃったのだ。
タンニンって、そもそも渋みの成分じゃなかったっけ?おさらいすると、渋みとは味覚でなくて、触覚の一種であり、タンニンを感じるのはたとえば歯茎とか頬の内側の粘膜がシュワシュワとなる感覚だと私は習っていた。 当然タンニンにも「多い/少ない」「きめ細かい/粗い」「丸い/攻撃的な」といった要素はあるのだけど、甘いという感覚がどうもわからない。


早速、岡本麻理恵氏の「ワインテイスティングを楽しく」(白水社)をひもといてみたところ、ここにもその旨の記述がある。183ページ。以下に引用する。
「(前略)つまり、タンニンもブドウと同じでちゃんと熟すのである。完熟したタンニンはまろやかで甘いのだ。よく出来た赤ワインにしばしば甘みを感じることがあるが、それはこの善玉 タンニンも貢献していたのである。」
ふ〜む、タンニンも甘く感じられることがあるのか。

そうすると、結局のところ、上の1〜3のような場合の甘みっていうのはどこから来ているのだろうか。
それに、「タンニンの甘み」っていったいどういう味なんだろう?よくアフターに感じるココアパウダーのようなモカのようなフレーバーがあるけど、あのことなのだろうか?私はてっきりそれは樽からの要素だとばかり思っていたんだけど。

どうもよくわからない。
どなたかおわかりの方、ご教示いただけないでしょうか?