2003年9月、個展@早良美術館るうゑ。るうゑ通信の原稿全文。
4、5才頃母に問うたらしい、「なぜ生まれてきたか生きているのか」。ぼんやり憶えている。風呂に浸かり壁のタイルをじっと見ていると時折それは暗く迫って来て、見えているこの世界が嘘っぽく思えて怖くなり、いつかはボクも死ぬ、とひとり泣いていた。
ここ数年の映画に夢あるいは仮想空間と現実の世界の交錯をモチーフにしたものがいくつかあって興味深く観た。現実と思って暮らす人生は実は途中から夢にすり替わっている話や仮想現実のプログラムの中に生かされていて波打つ鏡の向こう側にある現実へ覚醒する話。あの風呂の壁の不安とおんなじだ、と妙に納得したりした。 最近、視覚と記憶の危うさについて考えている。それは事実をも歪曲する。以前より忘れっぽくなったせいもあるけれど。思考と記憶がふっと現れては消える。ツギハギでアヤシイ、でもその隙間が空いていて成り立っている感じが結構楽しいのだと思っている。 |
2003.9 仲 真市
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